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メカな彼女とノーマルな僕  作者: 日陰 四隅
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カノジョは変わり“モノ”?(8)

 グラウンドを立ち去り、僕らは次に体育館を目指した。中ではバレー部やバスケ部が練習していた。


 そこでも彩月さんは立ったままで正確無比にバスケットゴールにボールを入れたり、涼しい顔してバレーボールが落ちる位置に先に動いて立っていたりした。


 そうして30分くらい体育館で部活動を見学した後、僕らは校舎に戻った。


 校舎では文科系の部活がもっぱら活動しているのだが、唯一柔道場だけが校舎内にあり、そこでは柔道部が練習をしていた。が、流石に制服なので参加はせず見ているだけだった。


 柔道部を立ち去った後、合唱部、吹奏楽部、郷土芸能部を見てまわった。因みに、郷土芸能部とは地元の祭りで演奏している囃子を、これまた学校で演奏している部活だ。


運動系同様文科系にも参加する彩月さん。彼女の歌については授業で触れているので割愛。まさか、楽器全てをこなすとは思わなかったけれども。


 そうして日も傾いて、太陽の沈んでいく空が紫色に夜を運んでくる頃、僕らは最後に美術部にいた。美術部では基礎ということで石膏像の木炭デッサンを行っていた。


 それに混じって僕らもカンバスに木炭を走らせる。


 僕の出来といえばまぁ遠めに見たら見えなくもないかなぁ、といった具合の出来。


 一方で彩月さんといえばまるで白黒カメラで撮った写真のような出来栄えの絵が完成していた。しかも、ほんの10分足らずで。


 美術部員は驚きながら彼女を絵を見ていたが、唯一美術の先生だけが首を傾げていた。


「前々から思っていたんですけれど、先生から見て彩月さんの絵って何かおかしいんですか?」


「いや、別に。うん。おそらく私が描くよりもうまいよ、彼女。確かに、写真のように絵を描く奴は結構いるけどね」


 結構いるんだ。


「山田君もそういうのが得意なんだと思うんだけれど、なんていうかうますぎるというか、絵の上手下手じゃなくて、まねるがうまいというか……」


 そういいつつ反対方向に首を傾げる先生。


「まるで写真ではなく、写真そのもののような気もしないでもない……」


 煮え切らない様子の先生。


「もしかして山田君、ロボット?」


「……先生、それ本気で言ってます?」


「冗談だよ。冗談。SFじゃないんだから」


 子どもみたいなことを言った先生は肩を竦めた。と。


「あ、これは意外」


 再び彩月さんの絵を見て先生は意外そうな表情を浮かべた。


 僕も釣られて絵を見る。


「……これは、わざとじゃないよね」


 僕もおもわずビックリした。


 彼女の目の前にあるカンバス、そこに描かれたモノクロ写真のような絵に真っ黒い直線が右上がりに1本走っていた。


「意図的に……描いたわけじゃないよね?」


「…………」


 黙りこくっている彩月さん。いつも黙り込んでいる気がしないでもないけど、彼女は無言でカンバスを見ている。いや、若干睨んでいるように見えなくもない。よくよく見れば持っている木炭が真っ二つに折れている。


 まぁ、何より驚きなのは。


「彩月さんでも失敗することあるんだね」


 今までそんな素振りを見せたことなかった彩月さんだったけれど、成程、彼女も人間だったという訳だ。


 しかし、それはそれで何が原因で失敗したのか。絵を見たところで何処も悪いようなところはないように見えるけど。


 と、そこでチャイムが鳴る。見れば時計は17時50分を示していた。


「さて、そろそろ下校時間だ。みんな片付けだ」


 先生が部員に声を掛ける。部員たちはそれぞれ片づけを始めた。


「行きましょう、越智君」


 同時に彩月さんが僕の手を掴んだ。


「え、あ、うん。でもその前に片づけを……」


 しかし、彼女は聞くみみ持たず僕の事を強引に引っ張っていく。表情には出していないけれど、一刻も早く美術室から離れたいといわんばかりに。


 そして、僕らはそのまま美術室を後にした。

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