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メカな彼女とノーマルな僕  作者: 日陰 四隅
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ボーイ・ミーツ・ガール?

―――視界いっぱいに広がる蒼い空。


 銀色に輝く太陽。なびく白い雲。


 見下ろせば視界に広がるだだっ広い大地。


 それをぶった切るように流れる長い河。


 一面を埋める濃い緑と淡い緑のコントラスト。


 街と呼ぶには些か狭い、こじんまりとした僕の故郷。ついでに、方角だけで表現される僕の住んでいる島のような地域。


 そして、迫る白いミサイルと灰色の無人軍用機の群れ。さながら、空を泳ぐ魚のような機械達は一心不乱に僕達を追い立てる。


 そう、僕達なんだ。


 振り返る。


 目の前には恥も外聞もなくスカートをはためかせている少女が一人。中は黒いタイツで少し残念。いや、これはこれでうれしいんだけど。


 どういう原理か知らないけれど彼女は空を飛んでいた。羽はおろかロケットエンジンのようなものもつけていない。博士いわくハチソン効果の再現に成功したとかで、そのおかげでとんでいるんだとか。とんでいるというか、重力を無効にしているらしい。


 それは飛ぶというより跳んでいる。


 彼女は空を蹴り、宇宙へ駆ける。


 まともな人間が空を飛べるはずもなく、まともじゃないから彼女はそんなことが出来る。でも、僕はまともだからそんな彼女に振り回されている。喩えじゃなくて本当に。


 そんなまともじゃない彼女の正体はロボットだった。それも現代に作られた。


 白いテレビのような頭をした奴でもなく、黄色い身体をした円柱状の身体に腕と頭をつけた奴でもなく、電池で動いて世界中旅している青い小さい奴でもない。


 かといって2029年からやってきた奴でもなく、21世紀から来たわけでもなく、第二次世界大戦辺りに謎の軍団に改造されたロボットでもない。あ、最後のはサイボーグか。


 空の海を飛ぶ白い魚が僕たちを追い抜いていく。彼女が空を飛べても出せる速度の限界は人間が耐えられるまでだ。何せ僕が死ぬ。


 それよりも100倍以上も速い魚は白い尾を引いて一瞬で追い抜いていく。直後、空で膨らむ巨大な炎の風船。


 猛烈な熱と身体を潰しかねないほどの衝撃波が空気を伝って迫ってくる。


 それを物ともせずに彼女は突き進む。ついでに僕も巻き込まれる。


 一秒も満たない時間。次の瞬間には僕は彼女の手の中で肉とも炭ともとれない何かに変わり果てるだろう。そうして三秒後、何事もなかったかの用に僕らはさらに上へと駆け上がる。


 状況からして狙われている。そして、定石からいえば狙われているのは僕だ。


彼女は僕を守るために作られたロボット。故にこうして守られている……。


そういう状態に見えなくもない現状。しかし、現実は彼女が狙われている。何せ僕は狙われるほど特技を持った人間ではない。未来に革命軍のリーダーになる予定はないし。


だが、無関係の僕はこうして彼女と一緒に行動し彼女と一緒に狙われている。なぜか。


僕は彼女を守ると彼女に誓ったからだ。誓ったけれど現在の僕の立場は彼女の手荷物だ。世間一般ではこういうのを邪魔者とか役立たずとか使えないとかいうのだろう。自分でもそう思う。けれども、そんな僕でもいいから彼女はいてほしいといってくれた。だからこうして一緒にいる。あ、いや。荷物になっている。


 蒼い空を泳ぐ灰色のトビウオは、僕らの周りを旋回をして通り過ぎていく。過ぎ去り際に打ち付ける嵐のように50口径の弾丸を残して。


 けれども、そんなものは彼女にとって何の意味もなさない。何せ彼女は史上最強のロボット。完全無敵の超人なのだから。いや、この場合は超ロボットだろうか。


 茹だるような灼熱の夏の日。いつもどおり僕らは変わらず傍迷惑な連中の襲撃を受けていた。


 変わり者の博士によって作られた彼女と。


 至って普通の家庭で育ってきた僕と。


 それを取り巻く愉快な仲間たちと不愉快な連中との日々の話。


 これはそんな物語。


 僕から見た、僕と彼女の馴れ初めと、その後も続いた僕たちの物語である。




 それじゃあまずは、順序良く僕たちが出会った頃の話からはじめよう。

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