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左手を②  作者: 尾長成央
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2章

2章 覚醒


あの救助から5日が経った。幸い発見が早く池田さんの適切な応急処置のおかげであの子供、深木智也は、一命を取り留めた。深木智也の無くなった左腕には、伸二が必死に走った報酬と言わんばかりの氷水で保存されていた深木智也のと思われる左腕が移植された。しかしあの左腕は正確には深木智也物ではない。左腕の細胞と深木智也の細胞を照合した結果、約75%と100%深木智也の細胞を持った左腕では無かった。

しかし深木智也が拒絶反応を起こすことは無かった。深木智也の主治医は約15%も他の細胞が入っているのに拒絶反応を起こさないのは奇跡だ。と言っていた。

じゃあなぜ、拒絶反応を起こさないと知らないのに深木智也に左腕を移植したんだ?それは深木智也の親が移植してくれと、頼んだからだ。深木智也には両腕がないと死んでいるの同じらしい。


(ここは、どこだろう、僕は何してたんだろう、確か…)

「先生!智也君が目を覚ましました‼︎」

(声が聴こえる…女の人?なんかぼんやりする)

「智也君、私は君を治したお医者さんの稲塚栄吉です」

「稲塚?お医者さん?」

智也は目の前にいるふっくらとし、白い服の人を見た。優しそうな顔をしている。

「そう、起きた所で眠いと思うけどちょっとテストしてもいいかな?」

「いいけどですけど、ここは何処ですか?」

「ここは日国病院だよ」

「そうなんだ。教えてくれてありがとうございます」

「じゃあテストしても大丈夫?」

「いいよ」

それから私は智也君には3つほどのテストをした。

1つめは、人差し指を立て何本に見える?と視覚の異常がないかのテスト。

2つめは、右腕と左腕を同じ方向に動かしたりする左腕がちゃんと智也君の左腕として機能しているかどうかのテスト。

3つめは、智也君が病院に来る前どこに居た?と言う記憶が欠如していないか、確認するテスト。

私がこの3つのテストをして思った事は、おかしいと思うことだった。しかし智也君には何の異常も無かった。私がおかしいと思うことは、むしろ智也君に何の異常も無かったことだった。小学4年生の小柄な体の智也君に腕が切断などの潜在的なトラウマがあると、記憶やら視覚やら聴覚のどこかしら異常はあるはずだ。これは奇跡なのか?後遺症もなく目覚めるなど、私には神の仕業にしか思えない。しかし今は智也君の経過をただ見守りたいと思う。もし神が智也君を守ったとしたなら、科学では解明出来ない何かがなるのなら、今は、智也くんが一秒でも早く退院し、智也くんの人生を生きて欲しいと思う。


今はまだ誰も、4年後に起きる惨劇を知らない。いや、知れる物などいない。

だって怪物は深く、深くに眠っているのだから。


続く

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