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SPIRITS  作者: Akk
Ⅰ 精霊を喰らいし者
3/26

 1

 まだ陽の昇らない朝、森の中は霧で浸されていて、視界は全てが白で埋め尽くされてしまっていた。

 その中に、黒い影が一つ。まだ十代だと思われる少年で、濡れ羽色の髪に、同じ色の瞳。そして、口元を布で隠し、足下まで届くほどの長い茶色のコートには美しい紋様が刺繍されていた。

 少年――――クロハは立ち止まり、辺りをぐるりと見渡すが、三メートル先も見渡せないほどであった。

「……無理、かな…。霧が深すぎる」

 諦めたように息を着き、側にある木に器用によじ登ると、太い枝に座り込んで口元の布を少し上にあげる。

「昨日からずっと歩きっぱなしだったから、少し寝るか」

 幹のほうに背をもたれ、小さく寝息を立てながら寝てしまった。


 クロハは、一年半ほど前に村を出て浮浪者ルンペンとなった。ルンペンとは、村から出た者のことを指し、その対応は村によってさまざまである。『尊敬』であったり、『畏怖』であったり、『穢れ』であったり……。その村の信仰する精霊が対応の差の元だ。村にはそれぞれ信仰や封印している精霊が違っていて、その精霊を象った紋章がある。ルンペンにしろ、ちょっとした出村にしろ、それを描かれてある物を村から出た際に必ず一つは持ち、身分証明書とし、自らの誇りとして肌身離さず持ち続ける。これを『いん』というのだが、持ち続ける理由として、旅が無事に終わることを祈る、いわば『お守り』なのだった。


「………………ん…」

 太陽の光が重なり合った葉や枝の隙間から差し込み、クロハの顔やコート、髪の毛を転々と照らしている。ゆっくりとクロハは瞼を上に持ち上げるが、あたりの明るさにしばらくは眉間にしわを寄せつつぼやけた視界が広がる。

 視界がはっきりし始めた頃、クロハは身軽に枝から飛び降り、空を仰ぐ。

 太陽の高さや明るさ、気温からして、朝と昼の大体間くらいのころだと推測できた。

「さて、まずは道を探そうか」

 クロハはとりあえず。寝る前に目指していた方へと足を運んでいった。

 目指しているのは、以前立ち寄った村から仕入れた村に関する情報。『商業の村』らしい。


 それからしばらくのことである。

「―――――――あ…」

 周りの風景は大して変わらないものの、地面を見下ろしてみれば、しっかりとこの先に村があることの証拠が残っている。

 地面に生えている草が踏みつぶされていたり、踏み倒されている。そればかりか、馬の蹄や糞、人の足跡が残されている。こういった跡は、ルンペンたちにとってはこの先に村があるということを啓示する証であるため、道に迷った場合、まずはこのような痕跡を探す、というのが常識であった。

「この先、か」

 クロハは再び布を上に少しあげ、それらの痕跡を辿り、歩き出した。


        ∞∞∞∞∞∞∞


 太陽が大体一番高いところから少し傾き始めた頃、クロハは目の前に築かれている高い高い木の柵を見上げていた。柵の上の方に、上の方が欠けた月のようなものに二つ下に車輪がついていて、車のようなモノが出来ている。そして、そのかけた部分に少し間隔をとりながら逆三角形が一つ乗っているマークが彫られている。これこそが、この村の『印』である。

「車の上に荷物が乗っている印…。ここが、商業の村、だな」

 クロハは辿ってきた道が正解だということに内心ほっとする。表情は微塵も変わることはないが。

 すると、柵の上から声が降ってきた。

「何者だ!」

 声色や高さから考えて、恐らく女性であろう声の主は、力強くクロハへむけて問いかける。

「ルンペンです。入村の許可を頂きたい!」

「名と出身の村の名を申せ!」

「クロハ、です。破壊の村からやってきました」

 その言葉をきき、女性の声は止まってしまった。

 クロハの出身は破壊の村と言うのだが、破壊の精霊が奉られており、封印されている。精霊のなかでも特に凶兆とされていて、嫌っている者が多い。それ故に、クロハは入村の許可を貰えない経験をしているため、一応、入村の前には拒まれる覚悟もしていた。

 しばらく待っていると、ようやく声が戻ってきた。だが、その声は野太く、雄々しい印象の男の声だった。

「入村を許可する!開門!」

 その声を合図に、クロハの目の前にそびえ立つ柵の門が徐々に開いてゆく。

 そして、クロハの瞳は、村の内部の様子と、入り口のど真ん中に仁王立ちする一人の人間を捉えた。その顔は鬼の面で見えることはないが、

「ようこそ、商業の村へ」

という女性の声で、先程クロハの名と出身の村の名を聞いていた門番の女性であることが分かった。そして、女性はゆっくりと鬼の面を取り外す。そこには茶の短髪に橙の少しだけツリ目の、まだ幼さを感じさせる顔立ちがあった。

「あたしはキリエラ。皆からキリって呼ばれてるから、そう呼んで。尚且つ、アナタの案内役だ。」

 クロハは村の中へと入り、キリエラと相対する。

「僕はクロハ。どうぞよろしく」

「ああ。よろしく」

 キリエラはすっとさり気なく右手をクロハの前へと差し出した。クロハはそれを少し黙ってみた後、コートから右手を出してかたく握った。

文ばっかでダルいですね。

もっと会話入れたいんですけど、なにぶん主人公がクロハという無表情、無口キャラでして、何をどうしても文脈ばかりのものになってしまうのです。(ハイ。只の言い訳です。)

でも、遂にキリエラちゃんがでたので、これから会話も増えていくはずですきっと…!!


次の更新は何時になるか分かりませんが(今後も全く告知せず、急に投稿とかし始めるつもりです)、今はまだ遅くはならないと思うので、待っていてくださると嬉しいです。

では、またの機会に。

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