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SPIRITS  作者: Akk
Ⅲ 闇と共に生きし者
25/26

 9

▼クロハ の たんていモード はつどう

 朝食を食べ終わった後、クロハは聞いてもよいものかとおずおずと二吉に尋ねてみた。二吉は乾いた笑いをしながらその問いに答えてくれた。

「クロハ殿……。鶴が連れて行かれてしもうた…。此度の人斬り事件が鶴のせいだと皆思っておるようだ。全てはこの村の歴史のしがらみよの」

「そうです!クロハさん、調べてきたので是非聞いてください。二吉さんは……」

「小生は、すまぬが少々席を外させていただく候、二人で話してもらえんか」

 二吉は頭を小さく下げて部屋から出て行ってしまった。

 キヨラ悲しそうな表情で俯き、声を絞り出すように呟いた。

「鶴さん、一体どうして連れて行かれてしまったんでしょうか……。絶対に連れて行かれてしまう理由なんてないのに……」

「それは…どうでしょうね」

 クロハの一言にキヨラは不思議そうな顔をあげた。

「まぁ、これは僕らではどうしようも出来ないことですよ。なんにせよ、この問題とこの村の歴史が深く関係していることは明らかと言っていいでしょう」

 つまりは、クロハは遠回しにこの問題もどうにか解決出来たらするからさっさと調べたことをはなせ、と言っているようだった。

 キヨラは嬉しそうに顔を明るくさせて調べてきたことを話し始めた。


∞∞∞∞∞


 闇の村。

 ここは闇の精霊を封印した村である。

 精霊の影響により、夜を迎えれば、家の灯りも、提灯のともしびも、月の光も、星のきらめきも、全てが闇に飲まれる。

 村人たちは何よりも、暗闇を嫌った。だが、その暗闇は何も視覚的に認知できる物に留まらず、心の闇すらも次第に支配していくこととなる。

 その最初の発端は、村が大きな家を中心とした派閥によって二つに二分されたことから始まる。

 それはもうご存じの通り、“白家はっけ”を中心とした西派、“黒家こっけ”を中心とした東派である。一人の人間に村全体が服従する独裁体制がとられ、その人間の出身である一族がこの中で上位を獲得できる。あくまでも、村人にしろ、土地にしろ、作物にしろ全てがその人間の所有物であるため、勝手な行動は許されない。この人間がもはや村長という王になるわけであった。

 話はもどり、その二派の争いが徐々にエスカレートしていき、気がつけば村は東西で二分化されてしまったのだ。村長はそれぞれの派閥がそれぞれで村長を持ち、立てている上にお互い主張を変えることも聞き入れることもせずに何十年という月日が経過してしまったのだ。そればかりか、この村がこの村であるための証である精霊を封印した塔は、正直腫れ物のようなもので、これに関してはお互いが譲り合って擦り付けているのが現状だ。そんなわけで巫女などもうとっくに居なくなってしまい、荒れ果てた塔のみが村の中心にそびえ立っているだけである。


∞∞∞∞∞


 ここにまでの話を静かに聞いていたクロハが、最初に口にしたのは意外な一言だった。

「…もしかしたら、人斬り事件もこの村の問題も、直ぐに解決できるかもしれませんね」

「ほ、本当ですかっ!」

「ええ。先程も言いましたが、これはやはり繋がっていると思います。さて、行きましょう」

 立ち上がったクロハに、動揺を隠せないキヨラが服の裾を掴んだ。

「ど、どこへ行くんですか!?」

「決まってるでしょう」

 クロハはキヨラの方へ顔を動かして見て、さも当然のような口振りで言い放った。

「精霊を封印した塔へ、です」


∞∞∞∞∞


 そこへは人力車という、人が二輪の車にのり、それを屈強な男が引いていく乗り物で向かった。着いたときには既に昼を回っていた。

 村の境目に着くと分かるのだが、塔を境に柵が立てられて物理的にも分けられてしまっているのだった。

「どこかで腹ごしらえでもしますか?それとも先に見に行ってみますか?」

 腹の音を響かせながら聞くクロハに、キヨラは一択しかないような気分になりながらため息をついて言う。

「……腹ごしらえしたいんでしょう?」

「そうですか、あなたが言うならそうしましょうか」

 キヨラは本当は言わせてるくせになにを言っているんだか、と小さく悪態をつきながらクロハの後を追った。

 赤い布が掛けてある長椅子のお店の暖簾のれんをくぐり抜けると、人の良さそうな女性が「らっしゃい!」と声をかけてきた。

「蕎麦を二つと団子を一つお願いします」

「あいよっ!」

 クロハはそのまま店の中の椅子に腰掛け、キヨラに向かい側に座るよう促した。

「クロハさん、そろそろ教えてください。人斬り事件とこの村の歴史がどう関係してるというんですか」

「まだ確証はありません。ただ、おそらく闇の精霊が関係しているのではないか、とは思っています」

 キヨラは怪訝そうに首を傾げる。

「え?」

「闇の精霊は何も視覚的な光を奪うことだけが本来の力ではありません。人間の心の闇を見抜き、増幅させ、支配する。これが本来の力です。だからこそ、封印されていたんです。これから見に行くのは、封印されていたはず精霊が出て来てしまっているかどうかを確認しにいくためであり、それが風化による物か、内側からの力によってか、はたまた外側から人為的な力によってかも見に行くためでもあります」

「外側からってことは、誰かが封印を解いたっていうことですか!?一体誰が…」

「判断するのはまだ早いです。それに、何もここ数年単位の最近の話ではありません。もっともっと昔の話になってしまいますから、例えそれが人為による物だったとしても個人的特定は不可能に近いでしょうね」

「なんだいあんたら、塔に行くつもりかい?」

 偶然蕎麦を届けにきた女将が二人の会話の内容を聞きつけて口を挟んだ。クロハは女性から蕎麦を受け取り自分の前とキヨラの前に置くと、再び女性の顔を横目で見て問いかけた。

「行ったことはございますか?」

「やだねぇ。あんなとこさ行く奴なんてそうそうおらんよ。物好きな奴もいたもんさ」

「蓼食う虫も好き好き、ですよ」

「それもそうだ」

 女性は頬をぷっくり膨らませて笑った。そして、机に団子を置いて、ごゆっくり、と一言掛けて去っていってしまった。

「とても美味しそうですね。冷めないうちに頂きましょう」

「はいっ」


∞∞∞∞∞


 塔の入り口は赤錆がけた鎖がぐるぐると巻き付けられ、拳ほどもある南京錠が封鎖していた。それをクロハは左手で掴んで引っ張った。もちろん、鎖はガチャンという音を立てるだけである。

「やっぱりか…」

「鍵ってどこにあるんでしょうね?」

「いや、鍵は要りません」

「へっ?」

 クロハの南京錠を持つ左手から小さな衝撃波が飛び、微かな風が生まれ、それと同時に南京錠の破片が一斉に辺りに飛び散った。

「……はい?」

「さて、これで通れます。行きましょう」

 重い扉を音を立てながらクロハが動かす横でキヨラが焦りながら南京錠の破片を拾い集める。

「ちょ、ちょっとクロハさん!何やってるんですか!」

 キヨラの言葉もクロハは無視して塔の中へと入っていってしまい、キヨラは呆れたようにため息をつきながらクロハの後ろへとついて行った。

 中は本当に人が立ち入った形跡はなさそうで、辺りは石畳であるにも関わらず草が生い茂っていたり、苔がびっしりと付着している場所もあった。

「ほ、埃っぽいですね……」

「上か」

 奥の螺旋状に延びた階段にクロハは目を付けて登りだす。途中途中の階段の側壁からは小さな穴があいていて、そこから外を覗くことが出来た。日は既に傾き掛けていた。

「……これ」

 階段に付いていた苔に気がついて、二人は立ち止まる。

「どうしたんですか?」

「見てください。この苔、一部だけが潰れてます。大きさ的にいえば、人の足跡、といったところでしょうかね」

「つまり…、人がここにやってきた、っていうことですよね」

「ええ。ただし、ここ数ヶ月に絞られますが。時間が経ってしまえばこんなもの、所詮は自然ですからなくなってしまいますよ。これの一番の問題は、僕らが入った扉から誰かが入ることはほぼ不可能です。あれは錆び付きすぎて、今鍵を入れても決して開くことはありません」

「なら、その人はどうやってここに入ったんでしょうか?」

「さあ。……とにかく、急ぎましょう」

 石階段を登り終わり、着いたのは広々とした空間で、周りは大きく横に穴が開けられていてとても開放的になっている。その中心には、同じく石でできた祠が置いてあるのだが、戸は開けられていて、封印用の札は無惨にも綺麗に二つに裂かれてしまっている。

 キヨラは真っ先に祠へと行き、クロハは周りの壁を見始めた。

「中は何も入ってませんね…」

「まぁ、そうでしょうね。……キヨラ、少しいいですか」

「何です?」

 キヨラがクロハの側に近寄ると、呼んだ理由はすぐに見当がついた。

 石の塀のような所に二つ線を引っ張ったような跡が残っていたのだ。

「ここに来た誰かは、正面の入り口からではなく、ここに何か金具を引っ掛けて壁をよじ登ってきたとでも?」

「そうとしか考えられないでしょう。まぁ、確かにあんな鍵で施錠されていれば別の侵入方法を考えるしかないわけですから当然といえば当然なんですけどね」

 立て膝をついていたクロハはすくっと立ち上がり、ようやく祠の方へ歩き出した。

「話がそろそろ見えてきましたね」

「………私には、さっぱりなんですけど」

 祠の中を弄っていたクロハがキヨラの方に顔を向けてさて、と切り出した。

「説明した方がいいですか?」

「是非お願いします」

「分かりました。まず、この村が西派と東派に分裂した事件。恐らくはあのころから、ここの祠の封印はうっすら解かれ始めていたのでしょう」

「と、いうことは…人為的な力で開けられた訳では無いんですね?」

「そもそも封印を解くとはどういうことか。この札を剥がせばそれで完了、なんて簡単にはいかないわけですよ。きっかけは封印の札の交換ミス…。札の有効期間に限界が来てしまった、という辺りが考えられます」

 戸に貼られた札を指でなぞりながらクロハは続ける。

「闇の精霊の力がこれによって外に流れ出てしまい、各々の家系が心の奥底に持っていた欲望を引き出し、闇に染めてしまった。そこで、この村は二つに二分されてしまったのです」

「そんなことで………」

「そして、決定的なことが起こってしまった」

 クロハの言葉の先を予測してキヨラが続けた。

「封印が、完全に解かれてしまった……」

 その言葉にクロハは深く頷いた。

「それによって始まったのが、問題の人斬り事件です。精霊に支配された人間が、夜な夜な誰かを斬殺する…恐らくはこれがこの事件の真相です」

「クロハさんの理論が正しかったとして、鶴さんは無実にならないでしょうか?」

 クロハは首を振り、それを否定する。そして、辺りを見回して言った。

「先ほどの後が残っていた部分、これは村の西側…。つまり、西側の人間の仕業」

 キヨラは言葉を失って戦慄した。


「あながち、無関係とは言い難いかもしれません」

 んんーーー。みなさん着いてきていますか?

 良くわかんねぇよ!っていう方。感想の方に質問書いていただければ個別に説明いたします…(笑)

 それにしても、これは月一に入りますか先生!バナナもおやつに入りますか先生!

 はい、入りませんよ一ノ瀬さん。風邪で寝込んでいたから、勉強していたから、そんなものは理由になりませんよ?

 く、くそー(;´Д`)


 許してつかぁさい…。

 とりあえずこの章を終わらせるまでは……!

 そしたら受験休みを頂きます。頑張ります!

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