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中盤、なんかエロいです。
いや、直接的でも間接的でもないですが、描写がなんとなく…。
やだなーと思った方はスクロールをぴょぴょっとやればすぐ飛んじゃうので。
一応注意喚起でした。
「これで、もう大丈夫です」
クロハは先ほどまで自らが寝ていた布団へとキヨラを寝かせた。脇で鶴が表情を暗くしながら突っ立っていた。
「申し訳ございませんでした……」
「…別に、あなたが謝ることではないでしょう。そんなことよりも、犯人の顔を見ていないんですか?」
「暗くて全く見れておりませぬ…。私がもっと気にかけていればこんなことにはならなかったでしょう。後悔先に立たずとは、よく言ったものですね…」
クロハは立ち上がると、鶴の肩を少し叩いて、それから溜息をついた。
「肩の力を抜いて下さい。誰もあなたのことをせめてなんかいないじゃないですか。キヨラだって、あなたのことを責めませんよ」
鶴が何かを言いたそうに口を開きかけたが、静かに目を伏せて口を閉じた。
「……お鶴?それに、クロハ殿まで。キヨラ殿は如何なさったのだ」
ひょっこりと廊下の脇から二吉が顔を見せた。
クロハと鶴は彼を見て、一瞬固まった。そして鶴が素早く二吉の腹をぶん殴る。謎の奇声をあげて二吉は体をふらりとさせて壁に倒れ込んでしまった。
その光景に、クロハはそっと視線を横にずらした。
∞∞∞∞∞
「まったく!一体何処へ行ってらしたんです!?クロハ様を放っておいたりなんかして!もう夜も近いのですよ!」
「どこに行っていたかは言えぬがすまなかったって…」
「やましいことでござらぬならばおっしゃってくたさぃませ!」
「少し厄介ごとがあっての…。そ、それにもう日がおちるて」
「誰のせいだとお思いですか!もう結構です!今夜は夕餉などありませぬ!」
「「えっ…!」」
ぷいと鶴は顔を背けてとっとと部屋を出て行ってしまった。二吉はあわててその後を追おうとして、一旦立ち止まり、クロハに顔を向けて言う。
「そこの奥のふすまの中に布団がもう一式入っておる。好きなように使ってくれ。小生のせいで厄介なことにしてしまったようだ…。すまぬ」
そう言って二吉は鶴のあとを追っていった。後に残されたクロハは少し困ったように首を傾げ、立ち上がり、二吉に示されたように布団を襖から引っ張り出して来た。慣れぬ手つきでキヨラの布団を見比べながら汚くなりつつ無事に隣の部屋に引き終えた。だが、その頃にはもう日などないようなもので、手探りで布団の中に潜ると目を瞑った。
それから、どれほどの時がたったのだろうか。
日はどっぷりと浸かり、目を開けても閉じているかのような錯覚に襲われる。光の無い世界が目を覚ますクロハを襲った。音は何もせず、自分がどのような体勢にあるのか、周りに誰がいるのか、自分は確かにここに存在するのか、不可思議な疑問や違和感が胸に残り、クロハはたまらなく恐怖して掛け布団を捲った。
以前にも、こんなことがあった気がする。まさに、今のような、光も何もない、そんな記憶。それは古すぎて、断片的に心に蘇る。あの時、自分に何があったか…。今となっては、どうでも良いことなのかもしれない。しかし、それはクロハにとっては掛け替えのない(そう表現すると少し違うような気もするが)、何にせよあれは他に選択する道のない選択をするがごとく、一方的に運命というものを突きつけられたある種の現実であったのかもしれない。
立つことは不慣れであったため、クロハは地に手を付きゆっくりと前へ進んでいく。障害物を確認するため、一歩一歩踏み出す度に手を前に突き出して進む。そしてしばらくたって、手の指先に少し堅い、冷たい何かが当たった。それが何かはすぐに見当がついた。キヨラが寝ているはずの布団であった。
一瞬伸ばした手を引っ込めたが、何かを求めるように、それでいて躊躇するかのように手を震えさせながら再び伸ばしていく。優しく触れ、存在をいちいち認識していくように。そしてふと、暖かなものに当たった。それは小さく、そして緩やかに上下して、命の優しさを感じさせる。そこで、彼は何かを見つけた喜びか、安堵か、手の震えは消え、命の愛おしさに喜びを噛みしめるかのように手をキヨラの顔に沿って滑らせる。髪の毛に指先が当たってしまい動いて下に垂れる。それは目にさえ見えはしないが、キヨラの普段の美しい髪を思い返せば、今の流れを想像することは難くはなかった。
クロハがふと、微笑みをむけかけたその瞬間、
「…クロハさん?」
今まで触れていた手が素早く持ち主の方へ戻っていく。
「そこにいますよね?」
クロハは何も答えない。ただ、沈黙が走る。
「ねぇ、クロハさん?」
念を押すかのようにキヨラが二度目のクロハの名を呼んだ。そこでようやくクロハが返事をする。
「起こしてしまいましたね。申し訳ないです」
「ふふっ。やっぱりそうですか…。少し、くすぐったかったです。でも…」
「…」
「なんだか、ちょっと嬉しかったんです」
「……どうやら僕は寝過ぎてしまったようで、先程から寝付けていません。もしよろしければ、僕の夜の話に付き合って頂けたりしないでしょうか」
「寂しいんですか?」
笑いを含みながらキヨラは問いかける。クロハの反応を期待した訳ではないが、少しからかいを含んだ問であった。だが、
「…そうなんです」
キヨラは驚いたように目を見開いたが、相変わらず闇が邪魔をしてクロハの顔を見ることは出来ない。
「分かりました。一緒に夜が明けるまで話をしましょう!そうだ。昼間に調べてきたことをお話ししましょうか?」
「いえ。それは今は結構です。そんなことよりも、もっと楽しみのあるものを」
「いいんですか?聞かなくて」
「ええ。今僕が聞きたいのは、そういった業務的なものではありませんからね」
キヨラはクロハにバレないよう、こっそり笑いながら掛け布団を引っ張り口元まで持ってくる。
「では、どんな話を?」
「そうですね…。好きな料理はありますか?」
予想をいい意味で裏切る質問にキヨラは小さく吹き出した。
「ぷっ……。私はミートパイが好きです。嫌いなものはありませんよ。クロハさんはどうですか?」
「僕はシチューですね。特にビーフシチュー。過去に母親がつくってくれましたが、幾多の村を渡り歩いてもその味を越えるものはありませんでした。じゃあ別の質問を……」
この何でもないような質疑応答は朝まで続た。一見時間の無駄のように感じられるこれも、結果的にお互いをまだ深く知らずに旅をしてきた二人の溝を埋めるものとなっていた。
そして、二人が話をすることは慣れぬ地を安心して過ごせる方法でもあった。
∞∞∞∞∞
キヨラは布団から這い出て大きく伸びをすると体に異常がないことを確認してからクロハに笑いかけた。
「もう大丈夫みたいです」
「それは良かった。本当に朝まで付き合わせてしまいましたね」
「いえ、いいんですよ。どうせ夜中に目が覚めてしまったでしょうから。それに、クロハさんの意外な一面を見れましたしね」
口に手を当てながらキヨラは笑った。クロハはそっぽを向いて廊下へでた。
「二吉さんたちを呼びましょう。さすがに起きていると思いますから」
「はい!」
廊下からでて、屋敷の中を歩いてみると、この建物が存外大きいことがわかった。部屋はいくつもあるし、廊下は長い。庭もあるものだから、相当だろう。こんな場所にたった二人しか住んでいないのかと思うと不思議でしょうが無かった。それもあるのかは分からないが、一向に二人のいる部屋を見つけだすことが出来なかった。
「もしかしたら入れ違いになったのかも」
「その可能性は否定できませんね。一度戻ってみましょうか」
そうして、また先程通った道をさかのぼるようにあるいていると、玄関側からなにやら大きな話し声が聞こえてくる。
クロハとキヨラはお互いの顔を見合わせ、こっそりとそちら側へ歩み寄っていく。声はだんだんと大きくなり、はっきりと聞こえなかった話の内容が分かりやすくなった。
「何をなさいます!」
「ええい黙れ!西の者が!」
「全てはお前のせいであろうが!」
「そんな……!」
「落ち着くのだ平蔵、伊之助、忠明…。鶴は何もしてはおらぬ」
「落ち着いてなどおれるものか」
「全てはこの女がこちら側に来たせいではないか」
「お前の目が焼けたのも、この女を拾ってすぐだ。関係していることなど明らかではないか」
「それは…そうであるが……」
「この女はきっと西側から差し向けられた刺客なのであろう。もしやくノ一やもしれぬ」
「我々を殺し、そして村を全て乗っ取るつもりなのだ!」
「お主等…それは深読みのし過ぎではないか?そのような証拠、どこにもないではないか」
「二吉、証拠云々の問題では最早あらぬ。そして、これはお前を救うための決断でもあるのだ」
「二吉様……」
「お前を誑かそうとしているだけだ。良き人を演じる、それがくの一の手法だ。騙されておるだけだ。いい加減に目を覚ますのだ!」
「違……」
「あっ、ちょっと…お離し下さいませ!私はやってなどおりませぬ!二吉様っ、二吉様っ!」
「鶴……!小生は、どちらを信ずるべきなのだ……」
男たちの声と鶴の叫び声がどんどんと遠ざかっていく。クロハたちは状況を飲み込めず、ただ鶴が連れて行かれる様子を声だけで認識していた。
『ぜぇーんぶ計画通り!あとはもっとその闇を心に育てて頂戴。そうすれば、私は自由になれるのだから』
中盤読み返すとけっこー恥ずかしかったです。
眠かったのかな……。
なんにせよあんな文小学生の頃だったら恥ずかしすぎて書けないし…。書いたとしても燃やすし……。
なんか、この章所々エロい…。なんでだ。
にきっちゃんの存在自体歩く18禁だと思ってます。
まずいよぉー。ただでさえグロでR15つけてんのにエロでもつけたら誰がよむんだよこの小説…。
お願いです見捨てないでください最後まで読んで頂きたいです。
このノリはこの章だけで終わることに(私の中で)なっているのでこの章を読んでUターンしようと考えてるかたいらっしゃっても頑張って私のために読んであげて下さい……。