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「紅……?」
クロハは聞いたこともない単語を口に出して首を傾げた。その横でキヨラが恐怖の色を顔に見せながら腕を抱きながら震えていた。それに気付いたクロハがキヨラの肩に軽く手を置く。
「キヨラ?」
「だ、大丈夫、です…。ちょっと、思い出す所が、あるだけです…」
「紅は、所謂赤でございます。その赤の目をもつ人切りが紅の人切りなのですわ」
「わ、私その赤い目を見たんです…。ちょっとだけなんですけど。丁度、あの洞窟から出ようとしたときに…」
そして、二吉が深く頷いた。
「赤目を持つと言うことしか分からなかったあの人切りを初めて見たとあって、村の皆は歓喜しておったのだ。だが、あやつを発見、処分する決定打にはならぬであろうな」
キヨラは少し俯いた。その表情からは悔しさを感じ取れ、クロハはその顔を何も言わずに一瞥した。
「いくつか、質問を宜しいでしょうか」
「勿論」
「まず、一つ目。この村に以前…かなり昔の話ですが、ある女性が同じようにこの村を訪れたはずですが、その情報は本物でしょうか?」
「………はて」
二吉は腕を組んで首を傾げた。座り方も先程と違って崩していて、日焼けしてない病的な白い足がちらりと見えていた。
「そんな話は聞いたことがないな。のう、鶴」
鶴と呼ばれた少女は二吉のそばに丁寧に足を折って座りながら同意した。
「私も存じ上げませぬ」
収穫はないか。とクロハは心の中で呟く。
「そうですか…。じゃあ二つ目です。あなたの目、どうなさったんですか?」
その質問に、二吉はなんの感情も表さずに黙ってしまった。その姿を見た鶴は少し慌てたようにクロハへ向けて代弁し始めた。
「く、クロハ様。申し訳ないので御座いますが、出来ればそのご質問は控えて頂きたく存じ上げます…」
「分かりました。じゃあこの質問はなかったと…」
「…すまぬな」
「じゃあ見えてるんですか?」
キヨラが突然質問をしだしたのでクロハは若干きょとんとした顔でキヨラの方を見た。その視線に気づいたキヨラが騒ぎ立てながら首を振った。
「あーあーあー!!すいません私が質問する訳じゃないですよね!勝手にしゃしゃり出てきて何言ってんだって感じですよね!」
「いや、別にそういうつもりじゃ。それに、僕も同じことを聞きたかったので」
「…全く、見えておらぬよ。それどころか、目を開こうとすれば眼球が焼けるように痛む。目を閉じても、夏の陽にてらされるが如く暑い」
「それにしてはまるで見えてるみたいに話せますし、歩けますよね」
二吉と鶴は顔を見合うようにして小さく笑った。
「見えずとも視える。そこに、命が、熱が、光がある。それを肌で感じれば自ずと人を知る、自然を知る、命を知れるのだ」
「見なくてもわかるなんてすごいですね!!」
キヨラが興奮しながら声をあげた。
「三つ目の質問です」
クロハは鶴の顔を見ながら言う。
「お二人は兄妹か何かでしょうか」
鶴はくすくすと笑い、二吉は少し照れくさそうに頭を掻いた。
「ふふ、違いますわ。私たちは夫婦、契りを交わした夫婦ですわ」
「…………えっ」
キヨラだけでなくクロハさえも声を上げて驚嘆する。
「ここいらじゃあちと有名さ。小生が盲目であることも含めて、な…」
「私は、かつて幼き頃、二吉様に拾っていただきまして、それ以来、二吉様はお側に末永くお仕えすることを誓い申し上げました」
「拾われた、とは?村の中で、ということでしょうか」
「そうでございます。私は元々西側の者でございましたが、父母に捨てられ、途方に暮れていたところを二吉様に救っていただいたのです」
「あの頃は苦労したものさ。西側の者とあって、村連中共がいちいち大きく騒ぎ立て、しまいには鶴を殺さんと襲って参ったこともしばしば。全て小生が返り討ちにしたがな」
「その見えない目で、ですか?」
二吉はしまった、とでも言うように口をつぐんだ。
「見えないのにも関わらず、襲ってくる相手を返り討ちに出来るものなんですか?少なくとも、僕には出来ませんが」
「あ、えっと……それは……」
鶴がちらちらと二吉の方をみながら言葉を選ぶ。二吉はしばらく黙った後、鶴の方を見ずに口を開いた。
「すまなかった。協力してくれると言ってくれたお主たちにそもそも隠し事などすべきではなかったのだな」
「二吉様…?」
「我が目は産まれたときからこうだった訳ではなく、後天的なものでな。数年前ある呪いをうけてこうなってしまったのだ」
二吉は鶴に戸を閉めるよう促した。そして、戸が閉められ薄暗くなった部屋の中、二吉は目に巻いた布をとった。
「ぁ……」
キヨラが少しつらそうな声をあげた。その布の下にあったものは、両目を取り囲むかのような大きく広がる火傷の後だった。皮膚が焼けて爛れており、白い肌と相対して赤く染まっていた。
「薄暗い部屋ですまぬ。あまり日に当たるとこの様に肌が焼けてしまうのでな…。小生のこの目は日の光を受け付けぬ。その上強き光に当てられると肌が爛れるという呪いだ。こうしていても少し痛む……」
二吉は解いた布をまた目に当てて縛りなおした。
「この村の名は知っておろう?」
「ええ。闇の村、と聞いています」
「闇の村なのにも関わらず、随分明るかろ。たがな、それは日が天に残るときのみで、夜になると闇が全ての明かりを喰らい尽くすのだ」
後ろで鶴がまた戸を開け始める。明るい日射しを背中に受けながら二吉はしゃべり続ける。
「部屋の灯台の光であっても、行灯の光であっても、提灯の光であっても、炎の光であってもさ。夜になれば光を奪われてしまい、闇が全てを支配するのだ…。それが、闇の精霊の支配するこの村の背負いし運命だ」
くすり、と二吉は笑う。
「話がそれてしまったな…。まぁ、そういうことで小生が盲目なのは数年前の呪いが原因なのさ。その呪いを与えたもうた存在が、この村の精霊だ」
その刹那、クロハがかすかににやりと笑った、そんな気がした。
「…運がいい」
この段階で、6だと……(゜゜;)
このままだととんでもなく長くなりそうです、うぎゃあ(*_*)
随分と遅れました、すみません汗
Twitter見てくれてる方は知ってることですが、新たに小説書いててこっちあんまり進められてないです。
その小説はかなり本気でやってるので、もしかしたら毎月更新出来ないかもしれません。そこはご了承ください<m(__)m>




