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青い空

作者: 立川綾乃

今日の空は、やけに青い。

目に染みるほど青い。


「今日の空、すっごく綺麗だね」


いつもだったら、お前が隣でこんなことを言うのに。

でも、お前が俺の隣に来ることはもう無い。


お前は、今日この空の一部になった。

ついこの前まで、隣にいたのに。


ケンカした時は、必ずお前から謝ってきたよな。

俺が悪いときでも、お前が謝ってきた。


「ごめんね…。ねえ、何か美味しいもの食べに行こう!」


泣きはらした目を擦りながら、笑ってお前はいつもこう言ってくれた。

素直になれない子供の俺を、大人のお前がちゃんと分かってくれていた。


そういえば、真夏に北海道に旅行したこと覚えてる?

お前は真っ白なワンピースを着て、向日葵畑の真ん中に立ってたよな。


「こんな沢山の向日葵、初めて見た!太陽がいっぱいあるみたい」


俺にとって、お前が太陽だよ。

そんなクサイ台詞を思いついたけど、恥ずかしくて言えなかった。


こんなことになるなら、言ってやれば良かった。

他にも沢山言いたいことはあった。


「愛してる」


たった一言でさえ、言ってやれなかった。

馬鹿だな、俺。


口にしなくても、相手に伝わってる。

なんて思って、一度も言わなかった。


「アタシ、あんたのこと大好きだよ!」


お前はこうやって、冗談めかしてだけど、俺に想いをぶつけてくれた。

でも、俺はやっぱり恥ずかしくて言えなかった。


白い大きな建物から、空に向かって煙が流れていく。

お前も、あの煙と一緒に空に流れていったかな。


俺は、もう一度青い空を見上げた。

不意に、一筋の涙が流れた。


「愛してる」


やっとこの一言が言えた。

ちゃんとお前に、聞こえてるといいな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして立川綾乃さん。 彼女が死んでからの彼の思いがよく表現されていてよいと思いました。全体的にシンプルで読みやすい作品でした。ですが、シンプルすぎで寂しい気もします。彼と彼女の思い出の話…
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