黒羽
今日、センチの葬儀が行われた。
The シリーズの死は、1つの国の出来事ではなく、世界の出来事だ。何故なら、The シリーズの影響力がすごいからだ。その影響力は国境を超える。
どのThe シリーズがいても、それは畏怖の象徴であるからだ。
そんな存在が一人、消えた。
ただ事ではない。それはセンチが死んだことではなく、“The シリーズではない何者かが"殺したことにある。
ついに越えたのだ。The シリーズを。
「……。」
目の前で見た、あの分厚い氷。それを1秒とかからない間にいくつも作る。 そんな化け物を殺したやつが今敵にいるんだ。
「……勝てねえな。」
気仁が発したその言葉に反論しようとした。
だけど、なんて返したらいいか分からない。The シリーズのまとめ役って感じだった。
クソ……。
皆に連絡するか。The シリーズ全員の問題だ。
ロシアはあの同盟に加盟してなかったはずだ。
なのに殺された。奴らの手は世界全体に行き届いている。
「…よぉ、The darkness。聞いたか?」
「明日…いや、今から来い。集まる場は前と同じでいい。戦争だ。
………家族を、たった8人しかいない家族の一人を殺されたんだ!!ぶっ殺してやる!!」
「…ああ。ごもっともだ。」
ブチッ と携帯さえも怒ってるのかと思うほど、力強く切れた。
そうだ、相手が強かろうが俺達は負けない。
俺達家族の力…どこの誰だか知らねえがぶっ殺す。
「気仁。俺達は負けねえ。俺達と、自分を信じろ。」
「…カッコいいこと言うな。若いやつに任せきりはダメだな。」
「The シリーズと殺しあいをしたいと思ってたけど、まさかThe シリーズより強いヤツとヤれるとは。
人生、良いことがあるもんだ。」
ジンもやる気のようだ。ちょっとネジが外れてるが。
各、顔が引き締まっている。勝つんだよ。
明日────
戦争が始まる。
……………………………………
……………………………………
「来たか。もう、みんな集まってるぜ。
ま、集合の一時間前だけどよ。」
イギリスの最高ランクホテル、Tiramis。
次いくときはゆったりしたいと思っていたが、この世界、ゆったりする暇はねえようだ。
皆緊張の面持ちだな。殺されるという緊張感を味わっているのか。The darkness …話し方はゆっくりだが密かな、それでいて重く、まとわりつくような殺気を感じる。
「さて、ゴミクズのクソッタレ野郎共は今、ロシアの占拠にあたっている。」
国を…潰すのかよ。
「次は…ドイツだ。The Saint 。俺達はこれから同じ国に居る。だから、安心しろよ。」
「はっ!安心だあ?笑わせんなよ。
むしろ俺のとこに来て正解だろ。八つ裂きにしてやる。」
「1人じゃ、無理だよ。」
…!The thunder が言ったのか…?今。
「おい、どういうこったよそれは。ああ?」
額の血管が浮き出てピクピクし始めてるな。こりゃあ荒れるか。
「The absolute zero。センチが死んだんだ。この中の全員が死ぬ可能性があるんだよ。」
「だからどうした。センチが死んだことと俺が負けることは関係ねえなぁ!」
「これ以上家族が死ぬのはこりごりなんだよ!!!」
……。そうか、分かった。揺らぐタイプなのか。
「………。急に大きい声出すなよ…。」
「…これから俺達は離れることはねえよ。それに…」
なんだ?秘策でもあるのか?少しだけ余裕がみられるぞ。
「俺とSaint は対をなす。それゆえ共闘すれば無敵だ。まあ、共闘すればの話だが。」
「…する必要がねえ。なんと言われようがな。…Thunder。」
「…なに?」
「 …いや、何でもねえ。今日は疲れてる。寝させろ。」
そういってSaint はバカ広い部屋から静かに出ていった。何がいいたかったんだろな…。Saint にもやっぱり思うところがあるんだろうな。
俺も、精神的にしんどいし、今日はもうねるか。
日本の時間ではもう夜中だ。寝ないとな。
「…じゃ、俺も寝るわ。皆、お休み。」
それぞれの返事を聞いて、俺も自分の寝室へと向かった。ばかでかい通路。高そうな絨毯に高そうな装飾品。
その通路の真ん中に居た。
刀をもった何かが。マントみたいなものを羽織っていて、見た目は死神まんまだ。顔はよく見えない。
「The breaker 。対象。死。」
何かが死。と言った時にはもう俺は蹴られていた。
まあ蹴られたのは良い。追撃で向かってきている刀の刃がヤバい。
当然、切られると普通に死ぬので刀を破壊する。
「は?…うっおぉ!」
「…。」
なんだ?…なんだ!?破壊出来ないだと!?
「死。」
こいつはなんだ。…あれは、なんだ。刀が薄い何かを纏っている。能力か?
なぜ破壊出来ないんだ?
「お前、なにもんだよ。」
「…黒羽。革命軍幹部。The シリーズ皆殺し。」
「黒…羽?革命だと?お前らのやってることはただの人殺しじゃねえかよ!」
刀を破壊出来ないなら体を破壊するまでだ!
床を蹴り、右ストレート。避けられる。
その右手で頭をつかみ顔面に膝蹴り。
鼻っ柱が折れる感触。
そのまま足払い。倒れたところを…な…
「なんだ、これ。」
マントの隙間からのぞく、異様な光景。
こいつのからだ全体に、あのおぞましいぐじゅくじゅ動くコードが。
「みら、れた。殺すしかない。」
素早く起き上がり、刀を振るう。
素人じゃない。しかも、早い。横に回るか。
刀を避けつつ隙を探した。少しだけ重心が右寄りだ。
左から回って後頭部に肘打ちでもするか。
スゥ、と左側に体をそらしてそのまま側面へ行こうとした。だが、それを読んでいたのか俺の首を刀がとらえた。
間一髪ギリギリ避けた。いや、薄皮持っていかれた。
刀はそのまま壁を切り裂いた。壁をだ。
高級ホテルの鉄筋コンクリート式の建物が。
いや…なんだこの切断面。もはや切断してもない。
“通ったところが無くなっている。”
…マジかよ。
「お前らどこまでいくんだよ。お前に、何人合成したんだ?」
「ざっと1万人…ブイ。」
自慢げに。さぞ自分はすごいかのように、ブイサインを俺に向けてくる。
1万人だと…?
「どこまで腐ってんだ!お前らぁ!」
顔を殴る。ただ、がむしゃらに。こいつのなかに、罪のない人々がただ欲のためだけに亡くなった。
許せるかよ!
「もう、君の価値は無くなったんだ。ただ1人、破壊という最強の能力を持った人物。
誰もが恐れ、誰もが憧れた。でも、もう1人じゃない。これからは皆が持てるんだ。
そう!これからは皆が認められる!唯夏も!聡も!秋斗も!僕も!!」
刀を切りつけてくる。それを破力の壁で隔てるが、やはり普通の刀のように消えてくれない。
特殊な刀なんだろう。破力を纏える刀。
それに、こいつの力。知人も含まれていたのか?
いろんな人の思いが伝わってくる…。
皆こいつを…恨んでない…?
「…破槍。破刃。」
足に槍を刺し、腕を切断する。
え…
「えっ?うわぁぁ!?腕がぁ!!」
切れちまった。何で体に破力を纏ってないんだよ。
「あっ…動けない。嫌だ。死にたくないよ。」
何なんだ、こいつ。感情が急に現れたり、一気に無くなったり。…研究のモルモットにされて壊れたか。
こいつはこのまま殺すにはちょいともったいないな。
「なぁ、聞けよ。お前、名前は?」
「名前なんか、捨てたよ。僕の名前はどこかに行っちゃったんだ。ねえ、助けてよ。
僕はあの人に伝えなくちゃいけないんだ。あの人から離れたくないんだ。」
「まあ待てよ。お前のその研究に知人はどれだけ居た?」
「皆、知人だよ。僕たちは親に捨てられた子供、『認められなかった子供達』は黒羽に拾われたんだ。
そしたらね!黒羽盟主、頭魔───ぐえ」
べちゃ と頭が爆発した。急にだ。
頭魔と言った瞬間にだと…?頭魔。ジンの名字だ。
ああ、そうか。盟主は…ジンの親父か。
そして、親に捨てられた子供達を利用し、その上何事もなく、殺すだと?
「可愛そうに…いや、その原因を作ったのは俺、だよな。……ごめん。」
そうして名前も知らない、数奇で残酷な世界に生まれてきてしまったこの子を、いや、この子達をあの世に送るため消滅させた。
「…ん?これは…」
あの刀が残っていた。破力を纏わしても壊れない刀が。…よし、貰っておこう。
それより…“もう来てる”のか?奴ら。
「…戻るか。当分寝れそうに無いな。」
走ってさっきの部屋の前にいくと、もうビックリというか、その部屋の壁が無くなっていた。 てか破壊されていた。
中を覗くと血まみれの…というかもう肉片とかした元人間とThe darkness がいた。
「あ?なんだよBreaker か。来たな、奴ら。
まあこの通りだがお前のとこにも来たか。なんだその刀。」
「ああ…幹部が来たんだ。まあホントに幹部かは知らねえけど。そいつ、破壊の超能力だった。 」
「おいおいマジかよ。で、殺ったのか。
その刀持ってるっつーことは殺ったな。で、なんか情報はつかめたかよ。」
「ああ。“認められなかった子供達”って知ってるか?」
「そりゃあ、な。自分が求めている能力よりずっとランクが下だった我が子を平然と捨てるクソ親の息子。つまり捨てられた子供達。
まさか…」
「奴らの組織の名は黒羽。そしてその子供達を利用して超能力の開発をしている。」
「はっ!クソどもが考えることだな。
…殺りにくいな。」
「…ああ。それで、その黒羽の盟主の名も分かった。名字だけだが、頭魔と言った。」
「頭魔だと!?…クソがぁ!」
吠えた。頭魔。魔がついている。有名なのだろうか。
「なぁ、頭魔ってなんなんだ?」
「人類で最っ高に最低な一族の名だ。
生物を殺していないと自分を保てない、クソみたいな一族だ。そして俺の…くっ!」
殺されたのか…大切なだれかを。てか、生物を殺していないと自分を保てないだと?なら、ジンはどうなる。確かに人を殺すことが好きだったように感じた。 でもそこまでイカれてはなかった。
ああ、だから名字を呼ばれたときあんなにキレたのか。
「これは…。直ぐに発つぞ。ドイツに。」
「ああ。」
The シリーズの権力をフル活用し、あの子を殺してから30分後、俺達The シリーズはドイツへと向かった。