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戦争への準備 後編

次の日

午前10時



「よーし。んじゃ、いきま すか。

ゼダンは頼んだぜー。」


「油断するなよ。頼んだ。」


おう。とボスに返事し、東京屈指の先進所中央区に向かうことにした。というか、EEB も中央区にあるので、そのまま車で向かった。


「にしても、ずーっとネカフェにいんのか?

金はどうすんだよ。広告でもやってんのか。疑問しか出てこねぇ…。しかも能力も解らねえ。」


独り言を喋りながら運転する。やけに車の量が少ないな。まだ20分ぐらいしか走ってないぞ。

情報じゃもうちょっと先のビックヤマダっていう電気屋を左だな。


歩いているとふと気がつく。

人が、少ない。まだ昼前と言うこともあるかもしれないが、これはおかしい。

何か行われてるのか…?


気がつくとネカフェについた。

見た目は古い。かなりだ。

こんなとこでずっとヒッキーなのか。


入ってみる。中は外見とはほど遠く、綺麗にされており、いい臭いがする。

見回すと、フィギュアだったりゲームだったりプラモだったり、Theオタクみたいな所だ。


「あ?誰だオメー。」


奥の部屋から人が出てきた。

痩せてる。いや、やつれてるの方が正しいような姿で、Tシャツにジーパン。存在感のあるT シャツには『童貞は神なり。』と書かれている。


「返事がない。ただの屍の様だ。

いや、返事しろよww」


そいつが俺に気持ち悪く笑いながら手を向けてきた。

すると俺は地面に叩きつけられた。


「がっ!?ぐっ…うあ!」


「うはwwよええw俺のとこに来るぐらいだから相当強いと思ってたのによ。」


破力を身体中に張り巡らす。だが、一向に俺を叩きつけるこの“力”を破壊することができない。


理解出来て無いってのか?

俺のこの破力は破壊する標的を視認、あるいは理解することで破壊することができる。

だが俺は今全く理解出来ていない。

こいつの、能力が解らない…!


「上がれ。」


やつがそういうと俺の体は宙に浮いた。

サイコキネシスか?それなら、破壊できるはずだ。


「解らないか。今自分に何が起こっているか。

教えてほしいか。良いだろう。


なーんてねー教えるわけないじゃんバーカwww」


今すぐにこいつの顔をぶん殴りたい。

調子に乗ってやがる。

浮いている俺をクルクル回し始めた。

気分悪…


「ねえどんな気持ち?やつれたニートになすすべなく回されてる気持ち。ねえどんな気持ち?

分かりたくねえwwww」


どんだけ笑うんだよこいつ。

何か引っ掛かるぞ。

急に地面に叩きつけられた。

今まで何度もサイコキネシスとかで叩きつけられてきたけど、いつもと感じが違った。


自分から倒れるみたいな。

自分から…

今クルクル回ってるのも、なんか変だ。

体全体を回してるだけじゃなくて、一部を押して、回転させてる。

まるで無重力になってるみたいだ。


………答え出たじゃん。


「破壊しろ。」


すると、いつも通り、俺にかかる力が破壊された。

浮いてる感覚がなくなり、そのまま着地する。

破壊できた。


「なん…だと…?」


焦ってる。尋常じゃないほどの汗をかいてる。

怖いのか。今まで自分の天下だったのが、今破壊されたのだから、仕方のないことか。


「話を、聞いてくれないか。」


「お前も、一緒なんだな。

あいつらと。


誰に雇われた!この前仕返ししてやったヤツか!

また、いじめるのか!!」


急に、ヤツの周りが沈んだ。

黒い…なんだこれ。重力が不安定になってるのか?


「死にさらせ。」


次の瞬間にはもう、ヤツの姿なんて見えないぐらい遠くまで跳ばされていた。

そして、背中に衝撃が来る。


「ガッハァ!おぇっ」


血がヤバい。口から出まくる。

強いとは思ってたがここまでとは。

俺のこの能力はさっきもいった通り、破壊する標的を視認もしくは認識しなければならない。

あんな高速の衝撃波を、重力の波動を認識するなんて無理だ。


「まだ生きてんのかよ。くそが。外道が。

死ねっつってんだろ。」


高層ビルを…持ち上げた…?

しかも一つじゃねえ何個もビルが浮いてる。

おいおい。規格外過ぎんだろ。


「話を聞いてくれ!俺はお前になにもしてないだろ!」


「俺が心を許した瞬間、また、裏切るんだろうが!!」


早い。避けるのは無理だな。なんせビルを横にして飛ばしてきたんだから。


「破壊しろ。全てだ。“破衝”!」


目の前のビルを破壊し、尚且つ浮いてるビルも破壊する。つか、あのビルとかって普通に人いる…よな。

俺、もう何百人殺した?


「とっ止まれ!マジでなんもしねえから!


人を殺しまくってるんだぞ!自覚はあんのか!?」


「俺以外の人間なんか全員死んで結構なんだよ!

てかよぉ!なんで死なねえんだ!」


足元に違和感…

気づくとどういう原理か、俺は上空に弾かれ、動けなくなった。


「なんだよ、これ。いやまてまて落ち着け。

これは重力を固定されてるだけだ。

破壊しろ。」


よし、なんなく破壊出来た。


「死ね。」


「えっ」


目の前にビルが…というかもうビルを叩きつけられた。痛い。

戦闘でこんなぼこぼこになったことあったっけ…。

あれ。


「体が動かない…?何でだよ。

動けっ…おいまじかよ。マジでヤバいぞ。

だってビル飛んできてんもん。

やるしかないな…“破滅”」


飛んでくるビルは破壊した。けど、あいつなんかしてる。力を溜めてるのか。

この町が消滅してもおかしくないくらいのエネルギーを感じる。


「…“終焉”」


何とか立ち上がる。身体中が悲鳴をあげてるとはまさにこの事だ。今すぐに倒れて寝たい。

だが、やるしかない。俺も力を溜める。

俺の中の破力をかき集めて圧縮して圧縮して…

ポンッと手のひらから小さな赤黒い、禍々しくゆらゆらと動く球体が出てきた。

それに、更に力を加えていく。


やつを見ると、元気玉するときみたいな格好で、ビビるくらいデカく、黒いエネルギー体を作っていた。

だが、段々、いや、無理やり小さく、圧縮し始めた。

絶対爆発するな、あれ。


「もう一度言う!話を聞いてくれ!」


大声を出した。身体が痛い。身体中が痛い。

俺のとやつのがぶつかったら、どちらかが死ぬかもしれないし、この町も無くなるかもしれない。

出来れば、もう終わりにしたいんだ。


「俺様に勝ってからにしてみろクソゴミ…


死ね。“ブラックホール”!」


ヤツの手から小さい球体が放たれた。

動きは遅い。俺も放つ。最高の攻撃を。俺のすべてをかき集めた力を。


「────────“Break”。」


俺のは速い。一歩遅れて放ったが、俺とやつとの距離のちょうど真ん中ぐらいで、力と力がぶつかった。


瞬間、爆ぜた。黒い放流。だが、そのまま止まり、収縮。そしてまた、爆ぜる。収縮を繰り返した。

破壊してるんだ。あの絶対重力を。

この地球さえ、押し潰すかもしれないほどの重力を。


幾度かそれを繰り返すと、2つの球体は合わさり、消えた。…勝った。


「はぁ…“破槍"」


やつが動けないように、当たらないようにヤツの周りに突き刺した。

破槍を使うのにもしんどくなる。疲れた。


「殺されたくなかったら、話を聞け。

これはお願いでも交渉でもない。命令だ。」


「どうやら…本当に話があるみたいだな。

顔も見たことないし。能力使って負けんのとか初めてだわw強いな、お前。

で、名前は?俺は坂裏(さかうら) 気仁(きじん)だ。」


「勝士だ。ここじゃなんだ。EEB にいくぞ。」


車を探す…が、どこに何があるかとか、なんもわからんぐらいに荒れていた。もう天災の域だな。

にしても、どうするよ。

車はねえし能力はもう使えない。使ったら死にそう。


「あー…もしかしてどうやっていくか迷い中?

翔んで行くか?ww 」


「まだ能力使えんのかよ。すげえな。

じゃ、甘えさせてもらおうかね。」


「ういういw」


なんでこんな無駄に笑うんだろうか。

なんか過去にあったか?いや、仕事上の関係だ。聞かないでいいか。


考えていると、急に身体が浮いた。

ヤバいな。一番便利なんじゃないか?この能力。


「行くよん。」


そのまま翔んでいく。速いなー…。

しかも安定するし、尚且つ運べる。

こっちに引き込めたのは幸いだな。

こいつと戦争になったら全滅だぞ。


「つかさ、EEB に行くってことは政府の人間か?

にしちゃあちょっと子供だけどw」


「まあ…そうなるな。てか子供じゃねえ。

気仁は何歳なんだよ。」


「あ…ああ。俺は23だ。おっさんだろw」


「23でおっさんはないだろ。」


「いや、十分よwてかさ、仕事くれんの?」



「ああ。大変な仕事だ。」


「へー。着いたぜ。言っとくけど、もし騙すようなら、死ぬ気で暴れるからな。」


「まだ言ってんのかよ。

信頼しろとは言わねえけど信用はしてくれ。」


「…りょーかいw」


そうしてEEB に戻ってきた。

町半壊以上の損害を出したことになんか言われるかもと思っていたが、以外にも何も言われなかった。


これで戦力は固まったな。

勝つぞ。超能力者を利用するやつ等に。

全員破壊してやる。


とりあえずみんな集まっていたみたいで、それぞれ自己紹介をする場が設けられていた。


「よし、みんな集まったな。それでは新しく組織にメンバーが加わることになった。まずは隼里。

自己紹介だ。」


「自己紹介って…ガキじゃあるまいし。

俺の名前は尾凪 隼里。能力はレーザー。

以上だ。」


「よろしくとかないんかい。

一応仕事仲間だぞ。」


「別に仲がいい訳でもねえだろ。次、いけよ。」


「私は(あかり)。能力はRightning。

役に立てたら幸いです。」


なんか…めちゃくちゃ距離ある自己紹介だな。

スタイルいいし美人なんだけどなぁ。


「俺は気仁で元ニートのおっさんです。

できるだけ頑張るんでそこんとこよろしくw」


「よし、分かったな。この三人が新しいセルのメンバーだ。いや、アンチセルといった方がいいか。」


「詳しく教えろ。」


「俺達は日本を守る秘密の組織、即ちヒーローだ…ったって感じか。

日本を守ってたのが日本に裏切られたんだ。」


「だったらすぐ抜けたらよくね?

裏切られたお返しでもすんの?」


「いや、実は日本を含む連合がある実験をしていてな。俺達超能力者全員に関わる問題だ。

俺達は捕まりモルモットにされる。」


「実験台ね…確かに、見逃せることじゃあねえなw

とはいったものの、掴んでるのか?全容を。」


「全くもって掴んでいない。

分かっていることは参加国が日本、中国、アメリカ、イギリスの4か国ということだけだ。」


「ふぅ…相手が仕掛けてこない限り、こっちは手を出すことさえ出来ない。

初手がヤバかったら全滅もあり得るよな。」


「一つ言いたいんですが。」


「なんだ?」


「敵は政府なんでしょう?なら、今からここもろとも木っ端微塵にしてあげれば良いのでは?」


「……………」


なにこのバイオレンスあほ娘。


「ぶはっwwwwww」


「何ですかあなた。気持ち悪い笑い声を私に向けないで下さい。」


「君知らんの?wwこの前化けもんでたじゃん。

その化けもんに日本のSランクのトップが殺されたんだぞw

そんなもんが量産されてたら戦力が整わない限り勝ちはねえよw」


「……………ふん。」


何あの反応可愛い。

というか気仁はニートだったわりには結構ニュースとか見てんのか。

ちゃんとした考えもできてるし普通にいい人材だな。なんであんなに暴れたのかが不思議だ。


「まあそういうことだ。

お前たち3人をこっちに引き込めたのは幸いだったがまだ足りない。

後は、The シリーズに応援要請をする。

勝士、頼めるな。」


「無償でやってくれるとは思わねえけど…。

やるだけやってみるわ。」


「えw勝士ってThe シリーズと面識あんのかよww

案外めっちゃすごいやつだったのか。」


「いや、俺自身がThe シリーズなんだけども。」


「………うそん。そういや、破壊…。

よりによってThe シリーズのなかで一番怖いやつ相手にケンカ吹っ掛けちゃったとはwすんません。」


最敬礼の形で気仁が謝罪してきた。

出来たヤツだな。でもなんであんなに冷静じゃなくなったんだ?気になるな。


「そういや気仁ってなんであんな豹変したんだ?

話しにくいんならいいけど。」


「あー…昔ちょっと苛められててな。

学校も止めてニートしてたわけよ。」


「そんな能力があって苛められてたの?

俺だったらぼこぼこにしてやるけど。」


ジンだったら勢いあまって殺しちまうだろ。


「いや、能力に目覚めたのはニート生活はじめてから一週間後。17歳の時だ。」


「……待て。能力が目覚めるのは16歳までだろう。

それはおかしいぞ。」


確かに、誠也の言う通りだ。アブノーマルか。


「まあおかしいだろうな。こんな馬鹿げた能力。

正直The シリーズが居なかったら世界征服できてるわ。」


「「「ああ?」」」


いや、灯と隼里は分かるけどなんでジンまで乗っかってんだよ。


「何だよ、文句あっか?重力に反するなんざ理から外れてる“破壊”だけだろ。」


「散々な物言いだな新入り。やってみろや。

お前のかっるい重力(笑)ってやつおぉ!?」


ジンが言い切る前に、気仁の能力の重力によってジンは会議室の床に叩きつけられた。


「言ってた割には直ぐに倒れてんじゃん。

なーんだ、EEBの秘密組織って口だけのやつばっかなのかぁ?」


ピシッ……と一瞬空気が凍りついたかのような錯覚に陥った。

ふとボスと誠也の顔を見ると、鬼の形相をしていた。


「あーあ、かるっ。思ってた以上に軽かってびっくりした。これが限界?」



「…あ?」


立っていた。standしていた。

重力の増加が止まったわけでもなさそうだ。今でも気仁が手をジンに向けているからだ。


「今10倍位だぞ…。意外とやるな。なら、これは?」


「…!はっ。余裕だな。」


ジンが立っている足元が少し陥没した。

いや、現在進行形で陥没している。


「ははっ。化けもん揃いかよ。

なら、100倍でどーだ?」


今のジンの体重の100倍…70キロぐらいだとして、

7トン…潰れるんじゃね?


「まてっそれは…」


「はぁっ!」


ズンッ…


すげぇ…立ってる。いや、やばすぎだろ。

7トンだぞ。7トンをあの足で支えてるんだぞ。


「ふー、慣れた。もっといけるだろ。来いよ。」


「く…重力付加の限界は100倍までだ…。お前もオーバーなのか?」


「そうだ。簡単に世界征服できるとか言ってんじゃねえぞオッサン。」


ジン先輩…怖いっす。ダメだ、極道のすごい人にしか見えなくなってきた。


「もういいだろ。俺の予想だと、近々またなにか起きると思う。もちろんEEB のやつらがらみだ。

出来れば早い方が良いだろ。」


「コウの予想ってあたんの?聞いたことないけど。」


「なんとなくだからよ、あんま気にすることはねえよ。」


コウがそう言った直後、会議室の扉が勢いよく開かれた。息を切らしてる職員が立っている。


「大変です!!ロシアのThe シリーズ、センチ様の死亡が確認されましたっ!」


………………



「え…?」

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