裏切り
「では、作戦を言うぞ。
囮は勝士…と言いたいところだが、炎羅にやってもらおう。
理由は簡単だ。死んだふりをしたからだ。対策は打ってくるだろう。
そして、俺とジンと誠也は敵の捜索。コウはバックアップしろ。後、各自に銃をやってくれ。
勝士は炎羅と動いてくれ。」
「ハンドも全面協力だ。コウの手伝いをさせる。」
「おお。ありがとな。」
「細かいところはその場に応じて考えてくれ。以上だ。」
「「「「「おう!」」」」」
各自、それぞれの銃を持ち、車に乗り込む。
今回の目的は俺を狙ったヤツの拘束もしくは殺害。
テレポートは厄介極まりない。だがこんだけ人数いたら大丈夫だろ。
まあ…敵は一人とは限らないがな。てか絶対一人じゃねえ。
「止まれ。ここだ。ここであのクソテレポーターを監視カメラが捕らえた。」
都市って感じの場所だな。高層ビルも多い。
交差点か。ここ。
「人気ねえな。アルド州西地区…観光地として有名…これは罠だな。」
「そうだな。人居ねえなら、やり放題だな。」
「よし、降りるぞ。ちっ! 【炎断】!」
銃撃。それも一人が撃ってる騒ぎじゃねえ。20人は居るぞ。
「ありがとよ。右半分やるから左半分炎羅やってくれ。」
「任せろよ。」
炎羅の【炎断】が解けた。
その瞬間に、見えている数の人間に銃弾と破動をぶつける。
「片付いたか。」
「勝士、上みろ。」
バババババ
デカイプロペラが回転する音。段々近づいて来る。
「【破弾】。」
攻撃してくるまで待つこともない。
ビルとビルの間から機体が見えた瞬間に、撃つ。
段々と消えていき、チリしか残らなくなった。
「えぐっ」
「わざわざ待つこともねえだろ?まず撃たれて平気かどうかわかんねえし。」
「んなことより、ヤツは何処だよ。」
「ヤツらの目的がThe シリーズの捕獲なら…俺らのところに来るはずだがな。」
「あー……あれヤバくねえか?」
「あ?……うわーお。…逃げるぞ!」
遠くだが…あれはたぶんミサイルだろう。早い。
こっちに向かってきているのも分かる。
「おい!待て!早すぎるぞ!
助けようとは思わねえのか!」
ははっ。炎羅は俺みたいに早く走れないようだな。
「ほら、十八番のお空飛び飛びつかえば?」
「てめえを頼ろうとした俺がバカだった。
死ねカス。」
「バーカバーカ」
「…殺す。」
なんだよ。自分でバカだっていったくせに。
つか、猛スピードで飛んできてんじゃん。
やべ。
「その早さじゃ死ぬんじゃね?スピード上げるぞ。」
「まだあげんのかよ。限界だぞ死ね。」
「死ねが口癖になってるぞ。じゃ、行くわ。」
本気で走ってやる。だが、こちらも体力が持たない。短い間に距離を稼がないとな。
と考えていたら後方からばかでかい爆発音が。
その0.5秒後に俺は吹っ飛んだ。
衝撃波だろう。
痛い。軋む。動かない。
「やあ、The breaker 。
ぶっ倒れてるなか悪いけど、死ねよ。」
撃たれる!
向けられてるのはアサルトライフル。
壁に体が埋まって動けない。
なら。
「──────超能力か。
その力、恐怖せざるおえないな。
だが、同時に試したくもある。……どれだけ耐えれるんだ?」
ゾクゥッ
「お前…何だよ。」
「お前らみたいな化け物達を殲滅するために人間をヤメタ者だ。」
…ヤツの右半身、普通じゃねえ。血管みたいにぐじゅぐじゅ動く…コードか?あれ。
「見た目は良いものではないが、なかなかに良いものだよ。The …breakerrrrrrrrrr!!」
「ガッハァ!…………なんっだ、これぇ!」
能力が伝わるまでの速度を上回った?
何故俺がダメージを受けた。真正面からだ。
能力を体中に張り巡らせていた。そのお陰で壁を突き抜けた。
ヤツのクスリヤってるみたいな異常性。
……何処で、何の組織だ?
「どーこだぁー?
いいや、ここいったい地獄にしてやるっ。」
地獄…?
コードだらけの機械みたいな腕を地面に向けた。
そして、腕が光る。
「あれはやべぇぞ!来い!」
急に腕が引っ張られた。飛んでる。炎羅か。
「ありがとよ、炎羅。
あいつ、テレポーターだ。顔はな。
だが、能力の2個持ちでもない。あれは…」
「改造人間…だろ?
見りゃ解るぜ。あれはやべえよ。
お前、勝てるか。」
「いいや、無理だよ。だって俺は強いから!
キシシシシシシ!!!」
急に目の前に。あぁそうか。
元はテレポーターなんだ。
答えが出たときには既に地面に叩きつけられていた。
「いってぇ…10メートルぐらいか…。」
まさか10メートルぐらいから落ちても痛いだけなのはビックリだ。
だが、そんなゆうちょうなことを考えている暇はなかった。現に炎羅の苦痛の声が聞こえている。
見ると、あの気持ち悪い腕に炎羅が捕まっていた。
「離せっ…クソやろう。」
炎羅がテレポーターの顔に唾を吐き付けた。
「お前には何の価値もないんだ。消えてくれよ。」
テレポーターの腕に力が入っていっているのがわかる。
「やめっ」
グシャ
顔に付く、気持ち悪くて、鉄臭くて、知りたくもなかった、友の────
血の臭い。
「うあぁぁぁぁあぁぁ!炎羅ぁ!!」
「うは。簡単に死ぬね。
俺様の自慢の腕がクソ気持ち悪いSランカーに犯されちゃったよ。
ねえ。」
グルン。と、テレポーター。いや、化け物がこっちを見る。ゾワゾワゾワ。
止まらない。警報が。頭が。体全体が。
「次は君だ。」
拒否する言葉を聞いてしまった。
「どっち道死ぬかもしれねぇ。
なら、犬死にだけはしたくねえ!
炎羅の仇はとるぞ。このクソカスがぁ!」
ダァン!
銃声。俺は撃っていない。化け物も撃っていない。
それどころか、化け物の足から、血が吹き出している。
おせぇよ。遅いんだよ。遅すぎるんだよ。
「ぶっ殺す!!」
怒りを憤怒を全て化け物にぶつける。
破壊し尽くす力の放流。回りの高層ビルも無くなっていく。それに、炎羅のぐちゃぐちゃになった死体まで。
「ああああぁぁあぁ!!!」
「落ち着け勝士!もう終わってる!」
「俺のせいなんだよ!炎羅が死んだのは!
これが“失う”って事なのかよ!
どんなに頭からはなそうとしても目の前の炎羅の死体は消えたのに、残ってるんだ!
きえろ!きえろよ…!きえてくれよ……」
「ミッション達成。ヘリを頼む。いや…4人乗りでいい。」
こんなときでも報告かよ。
なんとも思ってねえのかよ。
「炎羅は死んだんだな。
勝士。これが俺たちの仕事だ。いつも、死と隣り合わせだ。解るな。
敢えて言う。
“お前のせいじゃない”。」
「くっそぉ……」
涙が出る。こんなに悔しくて、腹が立って、自分を殺したくなった事はない。
ヘリの騒々しい音。
残して帰るのか。こんな思いを胸に残したまま帰るのかよ!
「ほら、帰るぞ。俺達は炎羅の思いを背負って生きていくんだ。
だから…前を向け。」
くそっ。くそくそくそくそくそっ。
死にてえ。
「ああ…。」
ヘリに乗った。
炎羅を残して。
残すしかなかった。
俺が殺したからだ。
俺は………弱い。
……………………………
……………………………
3日後、俺達ゼロはハンドと合併し、ゼロではなく、
セルとなった。
名前は上のやつらが決めた。いつもそうだ。
もしかしたら、意味があるかもしれないな。
今、The シリーズを狙ったあの組織についての会議が開かれている。
だが、頭に入ってこない。
「聞いてるのか勝士。ぼーっとしすぎだ。」
「あぁ、すまん。何て?」
「だから、ドイツのThe シリーズ、The saint が情報を持って日本に来るから、迎えに行くんだ。」
「俺が?」
「だってさ、勝士しか面識ないじゃん?」
「確かにな。何時だ?」
「今からだ。東京の北地区の空港に行ってくれ。
もう車は用意してある。」
「毎っ回思うんだけどさ、急すぎじゃね?
もうちょっと余裕を持たしてくれよ。」
「時間だ。」
「冷たっ。分かったよ。いけばいいんだろ。」
バタン
会議室から出た。
Saint か…なにもなかったらいいけどな。
………………………………
「…大丈夫そうだな、一応。」
「コウはいつも心配しすぎだ。
堪えているとは思うが、そんなに弱くない。
強いぞ。体も、心も。」
「案外ボスが一番心配性だったりしてなー。ははっ。」
「馬鹿なこというな。
誠也、どうだ?」
「難しいな…。この腕、馬鹿みたいにエネルギーが詰め込まれている。
推測だが“これ”をされた人間は短命だろう。
持つはずがない。耐えれるはずがないな。
一体どれ程の規模の実験なのか…。」
「そうか。
引き続き、研究してくれ。
俺達も、出来ることをするぞ。」
「おう。」
…………………………………
EEB を出てから15分後、北地区の空港についた。
お腹が空いたので辺りを見回していると、見つけてしまった。
Saint に群がる10代の女の人たちを。
「かわいー!なにこの子、外国人の子だよね!ちっちゃいし、顔人形さんみたい!」
「ホントにかわいい!でもさ、何で外国人がいるの?
鎖国してなかったっけ?」
「キャハハ。
相手は選んだ方が身のためだぞ、クソババア共。」
まずいっ!
「やめろ!Saint !
相手は一般人だぞ!」
「あれ、あれあれ。The breakerじゃんよぉ。
日本て国は一体どうゆう教育をしてんだ?
見るからに頭悪そうなごみ共。
力の差もわかんねえのかよ。なぁ!」
「うっ!あがっ!」
Saint が一人の女の人の首を掴んだ。
まずい、まずいぞ。
「待て、落ち着けよ。
Saint の顔が知られてないんだ。しょうがないだろ?」
「このババアを庇うか。そうか。
そうかそうかそうか!!なら守って見せろよ。
お前のその化け物みたいな力で!」
ちっ…。どうする。あの女の人、ヤバイな。
大分苦しがってる。つか、ブッサイクだな。
いやいや、そうじゃなくて、助けねえと。
「どうした!やれよ!
この俺を破壊してみろよ!」
「なんだよ!どうすりゃいいんだ!めんどくせぇ!
そのブス殺す以外に打開策はねえのかよ!」
「ぎっ!」
一層腕に力をいれるSaint 。マジで死んじまうぞ。
「はぁ、カッとなっちまった。
二度とその汚ねえ顔、見せんじゃねえぞクソ共。」
急に、首を離したSaint 。
どうなってる?殺さねえのか?
「飛行機と腹が減ったのでイライラしてんだ。
なんか食わせろよ。それとも、呼んどいて
出迎えの物何にもねえのかよ。
壊すぞ、この国。」
「何でも買ってやる!暴れるな!」
イライラして人殺すとか、扱い難しすぎるだろ。
疲れるな。
その後、The saint はアホみたいに食って食って食いまくって、12万円入ってた財布がすっかり痩せてしまった。
俺のぶん……
「あーー、食った食った。なにしてんだよ。
行くぜ。お前らのアジトによ。」
「お前、ホントに色々壊れてる。
こっからは車だ。外に用意してある。」
「おう。」
見た目からは想像出来ないぐらいおっさんだな。
ゲップ長いし。
「こっから何分だ?待つの嫌いなんだけどよぉ。
運転手。切り刻まれたくなかったら、とばせ。」
「いつも通りでいいぞ。
10分位だ。そんぐらい待ってくれ。」
「あーあ。かったりぃ。
あのクソ大統領。あの薄毛むしりとってやったら気が済むぞ。クソが。
何で俺が行かなきゃなんねえんだよ。」
「大統領には弱いのか?
案外シンプルな弱点だな。」
「あいつ自身が弱点じゃねえんだよ。
俺の最愛の女を人質にとるんだよ。毎回毎回。
いつかあの首引き裂いてやる。」
「最愛の女…?マジで?」
「は?それがThe シリーズに対しての抑止力だろうが。
あれ。あはははは。キャハハははははは!!
まさか。ま・さ・か!
最愛の女がいないんですかー!?」
「いや、いねえよ。
なんでそんな笑うんだよ。」
「は?」
ポカーン
この表現が一番適切だろう。
口を開けて、人形みたいな顔が台無しな位のあほ面だ。
「マジでいってんのか?
じゃあよ、お前は何のために国に従ってんだよ。」
「そりゃ、仲間を守るためと、自分のためで、仮を返すためでもある。
女なんか考えたこともねえな。忙しすぎて。」
「おいおいおい…日本の誇る最強戦力が
童貞とはな…。ま、いいんじゃね?お前がいいならよ。」
「なんだよ、それ。お、着いたぞ。
あれがEEB だ。日本が誇る抑止力…。」
「ちゃんとしてんな。
ちょっとここらへんブラブラしていいか?」
「ダメだ。暴れるだろ?」
「ガキじゃねえんだ。
もうイライラしてねえよ。ま、させられたら殺っちゃうかもだが。キャハハ。」
「……好きにしろ。」
「サンキュー」
そう言うとわざわざドアを蹴破り、走り去ってしまった。
「はぁ…壊す必要あんのかよ…。
取り敢えず降りるか。」
「あれ、勝士。The Saint は?いないみたいだけど。」
「ジンか。散歩に行った。…うわ…大丈夫かな。
暴れてないよな…。」
「空港で暴れたらしいな。
ホント、The シリーズは面白いやつばっかだわ。」
「何が面白いんだよ。こっちは大変だったんだぞ。
ダメだ。やっぱ迎えにいこ。怖すぎる。」
「ま、なんかしでかしてたら勝士の責任だな。
ドンマイ。ははは。」
「その言葉…ホント苦手だ。行ってくる。」
「おーう。」
取り敢えず、EEB から出てすぐのゲームセンターに行ってみることにした。
「にしても…ここらへん色々ありすぎてやべぇな。
見つからねえぞ。」
「あ、勝士じゃん。おひさー。」
「…妃弧か。久しぶり。」
「元気ないね…。そりゃそうか。
炎羅死んだもんね…。」
やめろよ。掘りさげんなよ、んなこと。
せっかく忘れようと思ってたのに。
いや、忘れるわけないか。つか忘れちゃいけねえよな。
「ごめん。俺の」
「勝士は悪くないよ。ボスにも言われたでしょ?
敵がしたことなのに、なんで味方の勝士が謝るの。
皆そう思ってる。」
「…そうか。ありがとな。
俺Saint 探さなきゃいけねえし、もういくわ。」
「あれ?さっきEEB に入っていったわよ?
入れ違いかな。」
「なんだ。じゃ、行くわ。」
「うん。頑張ってね。」
なんだよ。せっかく探してやったのに。
……優しいな、皆。うじうじしてる俺に…。
だから弱いんだな、俺。
あ、Saint 居やがった。
「早かったな。何してたんだよ。」
「あ?The breakerか。
ちょっと日本の土産をな。早くしろ。立つのだりぃ。」
「へいへい。会議室だよな。
こっちだ。」
なんで把握してねぇんだよとか聞こえるけど無視で。
「にしても無駄に広いな。
日本人って無駄をなくすのが趣味なんじゃねぇの?
なんだよあれ。探し物[ケータイ]って。何個もあんのかよ。」
「ああ。無くすやつ多いんだよ。
バカだからな。」
「そんぐらい警察に頼めよ。
つかさ、俺がツッコミ役みたいになってるからよ。
早く案内しろ。」
「ごめんごめん。
ここだ。たぶん皆集まってる。」
「ホントに曖昧な奴だな。」
扉を開くと思った通り、皆集まっていた。
あ、ボスイライラしてる。顔でわかるな。
「勝士…遅いぞ。」
「言うこと聞くと思うのがおかしい。
連れてきたぜ。The Saint だ。」
「よお。篤三、おひさ。その他は知らねえな。」
「Saint …久しぶりか?1週間ぶりか。
取り敢えず座ってくれ。」
「ボスって名前篤三だったんだな。初めて知った。
」
「そう言えば、勝士は知らなかったな。
俺はコウだ。よろしく。」
「はいはい。で、情報だ。」
ちょ、吹いた。すげえスルーだな。
「ああ。そっちにも来たんだな。奴らが。」
「大惨事だ。半径50kmが焦土化、犠牲者は3500人位だっけな。俺に注意を向けるためだったらしい。
で、こっからだが、奴らは俺達、The シリーズが
狙い。そりゃあわかるな。
問題は俺達をどう使うかだ。ま、それも察しがつくだろうよ。
あいつら、明らかに改造人間だ。理性も言語力も低下。そしてあの力。研究しまくったんだろうな。
そして言うこと聞くぐらいまでになった結果があれだ。つまり俺達を実験のモルモットにするため捕らえようとしたんだろうな。」
ゴクっと出されたお茶をのみ一息。
俺達を実験のモルモットか…。自惚れてはいないが、
言わば俺達は頂点だ。それを越えたいのか。
軍事力として使いたいのか。
ヤツを思い出すと今でもやっぱ鳥肌がたつ。
「俺はヤツを八つ裂きにした。そしたらよ、ちょうど機械化した腕が丸々残ってたんだよ。
それを調べたらあら不思議。
いろんな人間のDNA が出てきた。
つーまーり、色とりどりの超能力の合成。
それがあの力を産み出したと言える。
じゃあ、超能力の合成に成功してんなら、俺達を合成したらどうなる?
化け物の誕生だ。誰も、何もかもが勝てねえ存在の誕生だ。」
「そんなもん造ってどうすんの?
戦争でも起こすのか?メリットがわからん。」
確かにジンの言う通りだ。メリットはなんだ?
戦争をしたからといって……ちょっと待て。
民間的な機関。つまり非政府の奴らが造っても何のメリットも無いけど国自体がその機関だったら?
国土は増えて労働者は増える。しかも、でっかい抑止力も持っている。
最強の国の誕生だ。
「察しがいいやつはわかり始めただろうけどよ、
敵はどっかの国、もしくは連盟だ。
国ってやつは裏でなにやってるかわかんねえ。
最悪のパターンが全ての国がグルってことだ。
こうなると全部崩落すんぞ。」
「成る程な……。この事は内密にしねえとな。国にも。」
「賢明だな。
情報は伝えたぜ。じゃ、帰るな。
あとThe breaker 。お前はお前を信じろ。
他のやつは気にかけんな。
じゃあな。」
そう言い残すと癖毛を揺らし、会議室から出ていった。
「急になんだよ、あいつ。」
「……はぁ。疲れた。The Saint 、すげえ警戒心だな。俺漏らすとこだったわ。」
「威圧感って言うのか?あれ…。
ドイツ…侮れないな。」
「そんなん出してたのか、あいつ。
取り敢えず俺達のこれからの方針は決まったな。
国の上の奴らの監視。それでいいだろ。」
「私は日本はクロだと思うな。」
「誠也、何か分かったのか?」
「妙な金の動きがあったんだ。
巨額だ。あれは明らかに異常だ。研究資金だろう。」
「マジかよ…。つーことは、国は俺のこと狙ってんだろ?いや…下手したら俺達全員を狙ってる可能性だって…」
「あるな。ドラゴンもそうだろう。まず、人間以外の生物がいない。それがなぜドラゴンという伝説上の生き物が?これは大変なことになるな。」
「明確な目的が知りてえ。最強の国家を造ったところでどうすんだ?なんか引っ掛かる…。
気持ち悪いな、これ。」
「すみません、会議中に。
The シリーズのThe darkness様からお電話です。」
音もなく侵入してきた女。スーツが似合うな。
できる女って感じだ。
「勝士様に変われと。」
「おっけ。」
タイミング的にさっきの話と同じだろうな。
「もしもし。Darkness か。」
『ドイツは来たか。』
「ああ。」
『ならわかるな。さっき国の上層部の奴ら殺しまくって情報を得た。
あいつらが言うに参加してる国々は4つ。
中国、日本、アメリカ、イギリスだ。
気を付けろ。狙われてるぜ、お前。』
「ああ…。もちろんだ。お前もな。」
『おう。これからも増える可能性っていうのはなきにしもあらずだ。じゃあな。』
そういって通話が終了した。
殺しまくったってすげえな。とにかくいい情報を手にいれた。
「何かわかったか。」
「ああ。参加している国は4ヵ国。
日本、中国、アメリカ、イギリスだ。
これからも増える可能性はあるな。」
「やはり日本はクロか。クソっ。
あまり目立った行動は出来ないな。」
「相手が明らかな行動をしない限り手は出せない。
まあ色々準備はしておくか。
重火器の勉強が役にたちそうだな。」
「大きな戦い…いや、戦争になるだろうな。
ここで聞いておく。日本に着くか、俺達、セルに着くか。どうする。」
「もちろんセルだ。」
「当たり前だよねー。」
「セルだな。」
「俺は元からセルについてる。離れる気はねえよ。」
「いい返事が聞けてよかった。
これで、今回の会議は終了する。」
戦争…こりゃあ特訓しねえと勝てねえかもな。
もっと、強くなんねえとな。みんなのためにも。
ドクン
「え…?」