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革命流星伝  作者: 杉山薫
流星伝〜謀略
7/29

4話

 司令室のソファでジジイと向かい合って座っている。いつもとどこが違うかと言うと、オレは周恩楽司令官の姿で座っている。


ドアをノックする音。

宋麗が入室してきた。


わざとらしいがジジイと談笑しているふりをする。


「あの、周司令官?」


宋麗はオレを見て涙ぐむ。


「周司令官、よかったです。あなたが自害するなんて。ひどい悪夢でした」


「嬢ちゃん、自分の目で見てきたんだろ。ちゃんと受け入れろよ」


宋麗が怒ってオレを睨んでいると、ジジイが話を進める。


「あれから少し考えたんじゃが、ここは周司令官の自害は隠そうと思う。司令官の自害なんて革命軍全体の士気に関わる。どうじゃろう。麗君?」


「ジジイ、嬢ちゃんにそんな判断を委ねるのは少し無理があるぞ」


オレはそう言って館内放送のマイクのスイッチを入れた。


さてと、ここは演説だよな。

おい、宋清くん。

出番だよ。

あれ、出てこない。

仕方ねえ。

演説って言ったら、あれだよな。

やるか。

やっちまうか。


「全軍に告ぐ」


 演説をしている時に宋清からアドバイスがあった。永昌基地奪還のため首都城陽から百万の大軍で攻めてくると。オレは素直にその一文を演説の中に取り入れた。


 そして演説が終わり、窓から外を見る。大軍がこの基地を包囲している。


おいおい、百万の大軍って本当の話ってこと?


オレは外に出て大軍を迎撃した。これだけ敵兵が多いとはずれることはない代わりに終わりも見えない。


あ、そうだ。

押しつぶしちゃえ。


オレは大軍の上空に大量かつ大きなの気の塊を作った。いつも思うのだが、一人の人間の気の量ではない気がする。


それを大軍目掛けて、エイッ。

オレの目の前のすべてが潰れていた。


第二部隊の兵士たちは先ほどの演説とこの状況に異常なほど興奮しており、オレが右腕を天に突き上げ雄叫びをあげると、一斉に同じように手を天に突き上げ雄叫びをあげた。


 大軍を撃破して自室に戻るとジジイがいた。なにか決意を胸に秘めた表情だ。


「ワシはこれから首都城陽の西にある加檀と呼ばれる洞窟へ行く。お前さんもすぐに来い。政府官邸に使いの者を出しておく。ワシの名を出せばそこまで来れるじゃろう。それからな。この手紙を読んでおいてくれ。必ず来いよ」


「いやいや、第二部隊はどうすんだよ?」


「お前さんが指揮して城陽まで来い」


「おいおい、大規模戦闘になるぞ。首都じゃ民間人の被害もでるし、ジジイが指揮して行ったほうがいいじゃねえか」


「すまん。準備せにゃならんのじゃよ。戦闘にならんように根回ししておくよ」


敵地で戦闘にならないような根回しって?

オレの頭じゃ、思いつかねえ。


そう言ってジジイは出ていった。



 ジジイが残していった手紙には流星の涙の伝説が記されていた。


昔、この大陸に国というものができるずっと前の話。


この大陸を双竜が支配していた。この双竜は非常に賢いうえに強い。それ故、天上の神々も手を焼いていた。

ある時、神々の一人が妙案を出した。片方の竜をこちら側に引き入れてこの竜を封印してしまおうと。この双竜、右が男竜で左が女竜であり、女竜を味方に引き入れようという結論になった。


神々の手先となった女竜は封印された男竜を想い涙した。その涙は流星の涙となった。


ふうううううん。

肝心なところはなにも書いていないし、突っ込みどころがたくさんありすぎて胡散臭いとすら思えねえ。これ、ちゃんとした書物かなんかがあるんだろうから、できればそれで読みたかった。オレはジジイの記憶力と文章力を呪った。


こんなのウェブ小説だったら誰もリピートしてくれんぞ。


 第二部隊はジジイの指示通りオレが指揮して首都城陽に向かって進軍することになった。ジジイは革命軍司令官会議なるものに参加しているという話にした。宋麗はオレのことをずっと睨んでいる。以前から睨まれていたが、勝手に第二部隊を指揮しはじめてからなおさらだ。ジジイの指示で動いているだけなんだが。ジジイは宋麗には根回ししなかったらしい。一番大事なところに根回しできない奴が敵地で根回しできるのか?


愛しい妹に睨まれる宋清はどんな気持ちなんだろう。


『いや、これはこれで』


うるせえよ。


そうこうしているうちに、首都城陽が見えてきた。首都防衛部隊など皆無であった。


首都城陽は無血で第二部隊の入城を許した。


 オレたちは政府官邸に招かれた。ズラッと政府関係者が並ぶ。オレは政府関係者の面々を見渡す。ジジイが根回しした相手は誰だろうと思っていると一人の軍人がオレの前にやってきた。


「ご苦労。ご苦労。周君」


オレはこいつだと確信した。


「周恩楽にございます。李老師はどちらでしょう」


「はあ?」


違った。


『もう、しょうがないなあ。次は僕がやるよ』



一人の軍人が僕の前にやってきた。


「ご苦労。ご苦労。周君」


「お久しぶりです。張岳総司令。白ちゃんとの急ぎの話があるのでこれにて」


あ、こいつが張岳ね。

だから、これが正解ならオレじゃ無理じゃね。

根回しって、なに?


僕は一人の青年将校の前まで歩いていく。


「白ちゃん、李老師に呼ばれているはずだけど」


僕は張白の耳もとでささやく。


「ああ、慈華が裏口にきている。早く行ってやれ」


僕は裏口にいき一台の車の前に立った。

 


 オレが車の前に立つと中から一人の女が出てきた。


「はじめまして、張慈華と申します。周様、車の中へ」


オレは軽く会釈して車に乗った。オレが黙り込んでいいると見かねた宋清が口を開く。


「華ちゃん、久しぶりだね。僕は宋清だよ。今は彼の中にいるんだ」


僕がそう言うと彼女は泣き崩れてしまった。


「宋清様、申しわけございませぬ。兄たちのせいでこのような事態になってしまって」


彼女がそこまで言うと、僕はニコリと笑ってこう言った。


「僕はね、これはこれで良かったと思っているよ。僕ではできないことを彼ならできるからね。彼って誰だよ。君だよ。ああ、華ちゃん。ごめんね。これじゃ自問自答しているみたいだね」


オレはとりあえず黙り込んで、宋清に任せることにした。


「李老師は彼にはなにも話していないんだよ。これから起きることを彼に伝えてあげて。華ちゃん」


「わかったわ。周様、時間もございせんので簡潔にお話しします。足らない部分は後で宋清様からお聞きになってください」


彼女はそこまで言うと一つ深呼吸をして、ふたたび話しはじめた。


「この車は城陽の西にある加檀という洞窟に向かっています。私たちはここに封印されている覇王を復活させることになります。封印を解く方法は宋清様から聞いていただきたいです。普通は覇王の復活などというだいそれたことはできないのですが、今回は周様がおりますので李老師もご決断されたのでしょう」


「ああわかった。わかった。もういいよ。オレの頭じゃさっぱり分からん。要は覇王を復活させる。それにはオレが必要。それでいいんじゃねえか」


オレがそう言うと彼女はコクリとうなづいた。


「それよりも気になったのが、君は張白という男の妹かい」


「違います。私の旧姓は周慈華。周恩楽の妹で今は張白の妻です」


それはご愁傷さま。


「あ、到着したみたいですね。周様、車から降りてください」


オレは車から降りて彼女の後ろに歩いていく。しばらく歩いていくと洞窟が見えてきた。


「おお、お前さん。やっときたか」


ジジイ、やっとじゃねえよ。

何が根回しだ。


すると、奥からもう一人現れオレを見て涙ぐんでいる。周恩雷、そう周恩楽の父である。オレは一言二言あいさつのような話をして洞窟の中に入っていった。

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