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辺境伯な女領主は恋を知らない  作者: ゆりあ
大海原から始まる初恋
2/27

初めて、こんなに美しい世界を知りました

「これが、海?」


「はい、こちらが、海です…!」


「なんて、なんて綺麗なんでしょう…!」


初めて見る大海原は、別世界だった。


透き通った薄青の水面に太陽の光が反射して、煌々と輝いていて、とても美しい世界だ。


ゴーリュンは、引きこもって、仕事ばかりする妻の女領主に、この生まれ育った辺境伯領の、素晴らしく、美しい景色を見せたかった。


山々と大海原に囲まれた辺境伯領は、海水浴も森林浴も出来る、自然が豊かな場所。


自室にこもっているよりも、自然豊かな場所を体感して、女領主として、素晴らしい領地だと知っていて欲しい。


だから、この浜辺に、彼女を連れて来たのだ。


リュディヴィーヌは、思った以上に感動して、その王女の美しい碧い瞳が煌めいて、大海原の波打つ水面ように、きらきらと輝いている。


「美しい………」


「ゴーリュン、何か言いまして?」


「えっ? い、いえ、リュディヴィーヌ様!

何でもありませんよ………!」


ゴーリュンは、密かに、また、今日のように、天気の良い時に連れて来よう、そう思った。


一緒に着いて来ている侍女マーサは、二人の、その様子に、ニコニコと満足そうだ。


明らかに、距離が縮まっている。やはり、政略結婚とはいえ、仲が良いのなら、安心だ。


その侍女マーサ自身も、42歳にして、初めて大海原を知って感動していたのだが、女領主とお婿様に気付かれないよう、口を抑えていた。


「とても美しいわ………」


「ええ、本当に………」


「………………………」


「………………」


ふたりは、夕暮れになるまで、大海原の景色をゆっくりと、無言で、堪能しました。


大海原にかかる夕焼けは、これまた別世界で、さらに、さらに、海が好きになりました。


「さすがに、お身体が冷えるといけませんので、そろそろ、帰りましょうか」


「ええ、そうよね、ありがとう」






「リュディヴィーヌ様、ゴーリュン様

おかえりなさいませ、本日の海辺のお散歩は、いかがでしたでしょうか?」


「初めて、こんなに美しい世界を知りました。

ゴーリュンに感謝致します。」


「リュディヴィーヌ様が、この領地の景色を気に入られたようで、良かったです。」


隠居生活中の先代領主である養父に仕えていたという執事、ロレインは、ほっとしました。


朝から夕方まで、慣れない土地で、事務作業に追われる女領主を心配していたのです。


さすがに、夫のゴーリュン以外が彼女を散歩や気分転換に誘う訳にもいかず、ゴーリュン様が機転をきかせて下さって良かった、と。





「ゴーリュン

おはようございます」


「………リュディヴィーヌ様!?

今日も朝早いですね?おはようございます。」


珍しく、リュディヴィーヌ様から、朝の日課の騎士としての鍛錬中に声を掛けられた。


いつもなら、ご挨拶するのは、鍛錬後のはず。珍しいことだな、と思いながら、嬉しかった。


美しい金髪碧眼の妻、リュディヴィーヌ様との距離が、少し縮まったのではないかと思えた。


「………あなたは、双剣使いなのね?」


「はい、カイラン師匠が、そうでしたので。」


「お師匠様………?

ああ、あのSランク冒険者の?」


「あ、師匠を、ご存知なんですね…?」


「ええ、もちろん知っているわ」


この大陸には、冒険者が存在する。


ジェルヴェール辺境伯領にも、冒険者ギルドの小さな支部がある。商業ギルドのお隣に。


噂で聞いたことがある。今は、異国に行ってる為に、不在のようだけれど、この辺境伯領地を中心に、Sランク冒険者が滞在している。


彼は、ゴーリュンのお師匠様らしい。だから、騎士でありながら、お強いのでしょう。


「Sランク冒険者、カイラン・へーべ殿の噂は、王都にも、届いておりましたよ?」


「そうなのですか!?」


「ええ、田舎の農民の子でありながら、Sランク冒険者になったのに爵位をもらうのを断って、自由奔放に依頼をこなしているそうですね?」


「あははは………はい、カイラン師匠、かなり、自由な旅が、お好きですからね。10代の頃に着いて行きましたが、世界が広がりましたよ。」


「自由な旅が……… そうなのですね。」


Sランク冒険者

カイラン・へーべ殿。


最初は、田舎の村の農民の息子だったために、苗字が無かったらしいです。


この辺境伯領内にある小さな村、へーべ村から苗字を与えられたようですよ。


国王陛下と先代辺境伯閣下に、この辺境伯領の地で、騎士団長として伯爵閣下にならないかと言われたらしいのです。


けれど、きっぱり、それを断ったそうですね。


冒険者の方が合っているから、と。

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