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「お前は追放だ!」と近衛を解雇された男爵令嬢、生まれ故郷の辺境都市にて最強衛兵となって活躍する 〜赤虎姫と呼ばれた最強の人形使いはTS転生貴族令嬢!?〜   作者: 自転車和尚
第一章 追放と帰郷

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第一七話 決着をつけよう

「三〇騎墜しって随分懐かしくて、くそダサい名前を……やめてよぉ……」


『……すごい名前なんですよね? なんで恥ずかしがってるんですか……』

 ロックヘアの操縦席に座ったまま私が羞恥心を感じて軽く身悶えていると、接続(コンソート)されたままのパトリシアが不思議そうにそう答えた。

 いやまあ……赤虎姫(ティグレス)というネーミングはいいんだよ、私でもイメージできるからさ……でも三〇騎墜しって安直すぎるんじゃないのか? という気がしてならない。

 確かにそう呼ばれるきっかけとなった戦いでは王国軍の大規模な人形騎士(ナイトドール)部隊と交戦し、かなりの数を撃破したのは覚えてる。

 あの時は死に物狂いで戦ったから、数までは数えていなくて後から交戦中に三〇騎を撃破したって同僚に知らされたんだけど、それくらいの印象でしか無いんだ。

 ところが……赤虎姫という名前と同時に、三〇騎墜しという名前も有名になっていると知って、まだ若かった私は密かに羞恥に悶絶していたものだ。

「ったく……戦争終わって言われなくなったってのに、もっと格好いい名前ならいいのに」


『だがお前を倒せば俺は三〇騎墜しを倒した男として名を挙げられる……なら』

 敵人形騎士(ラプター)曲刀(シャムシール)を構え直すとゆっくりと移動を始める、逃げる気はなさそうだ。

 本来この場所にいてはいけない連中なんだと思うが、それでも逃げないのは功名心からか、それとも別の目的だろうか?

 次の瞬間、擱座したままのもう一騎の破壊したラプターが突然炎をあげる。

 魔術による炎ということは、証拠隠滅を図るための機構は備わっているということだろう、用意周到なこって。

 それを合図と見たのか、ラプターは一気に前に出る。

 随伴魔術師がいなくても十分な戦闘能力を有している、と宣伝文句には書いてあったが、実際に戦争中に見てきた王国製の人形騎士よりも動きは滑らかだ。

 この先人形使いという存在は随伴魔術師を得なくても十分に戦争の主役として活動できる日が近いんだろうな。

 特に魔力による全強化というのは、とてつもなく魔力を消費するから負担が大きすぎるって言われてるし。

「トリシア、もう大丈夫だから接続を解きな、疲れてるだろ?」


『……まだ問題ありませんよ』

 そう答えるパトリシアだが、接続されたままの彼女と直接繋がっている私は彼女の状態を正確に把握している……無論私の状態も彼女はすぐに理解できるわけだが、すでにロックヘアの動作を補うために彼女は恐ろしい速度と膨大な魔力を消費して息が切れ始めている。

 そもそも遠隔契約なんて離れ業をやってのけたのだ……本来契約はお互いの手を握り合ってやるものであって、離れた場所にいる私と強引に契約を結んだ反動が出始めている。

 ロックヘアの調整や強化はすでに行われているが、やはり仮初の契約では無理があるのだろう……時間と共にあちこちにバラツキのようなものが出始めているのだ。

「……ならすぐ終わらせるよ」


『……はいッ!』


『うおおおおおッ! お前を倒して俺がエースになるんだッ!!』


「……そりゃ遅い、死ぬなよ坊や」

 ラプターの鋭い一撃……上段からの袈裟懸けの斬撃を左腕の小盾(バックラー)を使って受け流す。

 そのまま相手の体を引き込むように片手を使って引くと、私は右手に持った小剣(ショートソード)をバランスを崩していたラプターの腹部に突き刺す。

 ドンッ! という音と共に剣は力の核(ウィス・コア)付近を正確に貫くと、機体が大きく痙攣した後にそのまま地面へと崩れ落ちる。

 地面を振動させる音と共に倒れ伏したラプターを見た山賊たちは大慌てでその場から逃げ出していく……人形騎士は人形騎士でしか止められない。

 自分たちが操っていた人形騎士に対抗する術がなくなったのだから、当たり前だろうが……彼らが逃げ去っていった。

 山賊が逃げ去るのを見届けているとロックヘアは急速に各部から異音を放ち、ガクガクと全身を痙攣させてその場に膝をついてしまった。

「お、おお……っと……もう限界か、仕方ないね」


『大丈夫ですか?!』


「無理させすぎたからね……もう廃棄コースだ、この子は……」

 人形騎士には寿命という概念はないが、それは入念に整備を行ない部品の交換を適切に行った機体だけであって、山賊団のオモチャとなっていたこのロックヘアはすでに限界近かったのだろう。

 接続により無理やりブーストした力で操縦したがために、修理不可能なほどに各部の機構が歪んでしまっている。

 仕方ないが人によって作られた機械の定めとも言える……山賊団に買われてしまったことで、この子の運命は遅かれ早かれこのような状況になるのは決まっていただろうし。

 私は操縦席のハッチを開けると、動かなくなったロックヘアの前へと降り……そして軍隊式の敬礼をした、それは私とともに戦ってくれたこの子へのお礼、そして壊れてしまったことへの謝罪だ。

「ごめんね……もっと良い主人に出会えれば……」


「アーシャさん!」

「姉ちゃん無事か!」

 パトリシアとミハエルが走ってくるのが見える……私は彼らに満面の笑顔を見せて笑うと、彼女たちも釣られて笑顔を浮かべる。

 軍を追われてまさか自分が随伴魔術師を契約して人形騎士戦に挑むことになろうとは……これからどうするべきか? その答えはわからないものの、まずはライオトリシアに行って実家を頼るしかなさそうだ。

 パトリシアの保護……そして何らかの形で彼女を守らなければ、と私は考えながらも笑顔ながら少し涙を目にためて飛び込んできたパトリシアを受け止める。

「ありがとうトリシア……でも無茶しちゃだめだ、それは私からの約束……いいね?」




「ぐ……お……し、死んでない……」

 静まり返った暗闇の中でカイネル・オイレンブルク騎士少尉は、肩に食い込むベルトの痛みで覚醒するとしばらくの間自分が気を失っていたことに気がついた。

 兵士(ミーレース)級人形騎士ラプターに備え付けられている脱出装置、これは普段出入りをする前面装甲が何らかの形で動かなくなった場合に、首の付け根から出るために備え付けられた機構だが、そのレバーを操作しながら最後の光景を思い返す。

 まるであの動きは見えなかった……驚くべき神速、そして正確に力の核を打ち抜く一撃……自分があの三〇騎墜しの足元にも及んでいないのだ、という現実に打ちのめされている。

『カイネル……生きているか?』


「何とか……今脱出しています」

 クリミス・ペルシアーニ騎士少佐の声が通信用魔道具から聞こえたことにホッとしつつ、彼は動作不能に陥ったラプターから何とか脱出した。

 機体は地面にうつ伏せのまま倒れており、すでに力の核が破壊されてしまった故に動かすこともできそうにない。

 命を失った巨人のようにも見えるそれまでの愛機の姿に歯噛みをしつつ、彼はその隣で膝をついたまま放置されていた王国製兵士級人形騎士ロックヘアの姿に気がついた。

 ひどくボロボロだ……あちこち錆が浮き、関節部などもかろうじて繋がっているような状況、そして戦闘中からすでにそうだったのかもしれないが、あちこちから生命の水(ヴィータリス)らしき青い液体が漏れ出しており、この人形騎士がすでに息絶えているということを物語っている。


「……こんなボロで俺を……」

 クリミスはあの赤毛の軍人崩れ、アナスタシア・リーベルライトと名乗った女性のことを思い返すが、美しい顔立ちよりも大きな胸が印象的で、貴族なのだろうなとは思ったが……。

 砦に連行されていた時には随分とくたびれた服を着ており軍人とはいえ人形使い(ドールマスター)だとは思わなかった女性だったが、まさかあれほどの腕とは。

 世界はまだ広い……クリミスはその場から駆け足で離れると同時に、懐から小さな箱を取り出すとラプターに向けて軽く振った。

 それを機に人形騎士が突然炎を上げて燃え上がり、近くに置いてあったロックヘアを巻き込んで炎上を始める……この場所に連邦がいた痕跡を残してはいけない。

 彼はおそらく彼女たちが向かってたであろう、ライオトリシアの方角を向いて拳を握りしめる……いつか必ず、彼女を倒して見せる。


「待ってろよ戦場の死神……俺がお前を必ず倒す……!」

_(:3 」∠)_ クリミス君は運がよろしい


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