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「お前は追放だ!」と近衛を解雇された男爵令嬢、生まれ故郷の辺境都市にて最強衛兵となって活躍する 〜赤虎姫と呼ばれた最強の人形使いはTS転生貴族令嬢!?〜   作者: 自転車和尚
幕間 統一戦争期 〇二

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(幕間) 帝国歴一二七九年 新たなる命令 〇三

「む、君がアナスタシア・リーベルライト曹長……そっちは伝言を頼んだテグネール曹長だな」


「テグネール曹長及びリーベルライト曹長出頭いたしました」

 二人が部屋へと入ると、それに気がついたベニート・マッテーイ大佐は書類を読む手を休め、入ってきた二人を交互に見て……特にアナスタシアを見て意外そうな表情を浮かべた。

 だが、その表情も一瞬だけで、彼は厳格な軍人らしい顎鬚を軽く手で撫でた後、表情を引き締めると机の上に書類を放った。

 駐屯地にある大佐専用の執務室……帝国軍では、佐官から執務用の個室を与えられそこで仕事をすることを許されている。

 基本的に佐官まで昇進する人物は貴族出身者が多いが、長らく戦い続けている帝国では人材不足を解消するために有能な人物は昇進が約束されている。

 最近では補給部隊を指揮していた平民出身の尉官が、大きな功績を立てて昇進を果たしたという帝国軍の宣伝が平民出身の兵士たちの士気を盛り上げているらしい。

 帝国軍人が行う胸に手を当てる形の敬礼を見せた二人に対して、マッテーイ大佐は椅子から立ち上がって簡易的な敬礼を見せた後、楽にしていいと手を振って再び椅子に座った。

「よろしい、君たちを呼んだのは命令書にある通り……ケレリス修復の間に別の人形騎士(ナイトドール)を支給することになったからだ」


「あ、あの……質問をしてもよろしいでしょうか?」


「なんだねリーベルライト曹長」


「ど、どうして新しい機体が支給されるのでしょうか?」

 その質問はニルスも少し感じているものだったが、あえて彼は口を挟まずに黙って天井にあるシミを数えていた。

 豪華な部屋ではあるが、この砦は最前線に近く帝都の駐屯地のように掃除が行き届いているわけではないため、細かい部分は少々気になるなと彼は思った。

 アナスタシアの言葉にマッテーイ大佐は顎鬚を軽く手で撫でると、少し考え込むような仕草を見せ……そしてどこから話していいものなのか悩んだのか無言のまま、再び椅子から立ち上がった。

 そしてそのまま窓際へと歩み寄ると、外を見ながら軽いため息をついてから彼女たちへと言葉を投げかける。

「今回の命令だが、私が出したわけではないよ」


「そうなんですか?」


「今回の命令はグラディス中将直々に下されていて、私もまた伝言役なのだ」

 グラディス中将……ゼルヴァイン帝国の第三皇子にしてヴォルカニア王国方面軍の指揮官として辣腕を振るっている紛れもない帝国の皇位継承権を持つ皇族である。

 だがその名前を聞いたアナスタシアの表情が少しだけ嫌そうなものに変わったことに、ニルスは意外なものを見た気がした。

 もしかして彼女はグラディス中将と面識があるのだろうか? 年齢的には中将の方が少し上で学年が違うため、騎士学園でも交流などはないはずなのだが。

 彼女の横顔を見ていたニルスに気が付いたのか、アナスタシアはすぐに軽い咳払いをしたあと表情を引き締めて大佐へと応えた。

「……そうですか」


「君は閣下と個人的に知己になっているそうだな、羨ましいことだ」


「……学生時代に一度だけお会いしましたが、それ以来交流はございません」


「そうなのか? それにしては随分と閣下は楽しそうだったが……」

 大佐の言葉にニルスは横に立つアナスタシアをもう一度見るが、彼女の表情は再び嫌そうなものへと変化しており、どうやらその『知己』になる過程に問題があったことを示していた。

 男女の問題なのか、それとも噂に聞くグラディス中将の()()()で嫌な思いをしたのか、それは本人でないとわからないだろう。

 グラディス中将は帝室の一員であり、帝国臣民からすると雲の上の存在であるにもかかわらず、彼女の態度はあからさまに不敬であり、人によってはそれを理由に独房に放り込むことすら可能である。

 ただマッテーイ大佐はそれすらも中将より言い含められていたのか、大佐は軽く左右に頭を振ると、話を変えようと別の書類を手に取った。

「まあ、君が拒否感を示しても閣下は罰するなとの話だったからな……ともかく、一旦修理の間に別の人形騎士を支給する手筈が整っている」


「……ありがとうございます」


「本来はグラディウスを支給したいところなのだが、残念ながら新規建造の機体は配備が済んでいてね、フェラリウスを一騎用意してある」

 マッテーイ大佐はアナスタシアへと帝国軍が公式に使っている命令書を手渡す。

 人形騎士フェラリウス……現在の帝国軍主力機である戦士(ベッラトール)級人形騎士グラディウスからは一つ前の世代にあたる機体である。

 さらに一つ前の世代にあたる戦士級クストスの後継機として建造された人形騎士で、重量級のクストスと比べて軽量、かつ機動力に優れた性能を有している。

 操作感が軽く、抜群の反応を示したことで最前線では長らく活躍したことで知られる傑作機の一つだ。

 この戦士級人形騎士を支給されるというのは相当に名誉……かつアナスタシアの功績が高いことを示しているかもしれない。

「整備はしてあるとはいえ中古で申し訳ないがね」


「いえ、謹んで受領いたします」


「ただケレリスの修復までという取り決めだ、本来フェラリウスは後方部隊へと送るための人形騎士だからな」


「はい、承知いたしました」

 フェラリウスに変わり、グラディウスが主力機となってからかなりの時間が経過している……そのため最前線に配置されているフェラリウスは次第に数を減らしており、新規建造もされていない故に補修部品が枯渇しつつあると聞いている。

 後方部隊や安全な各都市への再配備が進められている故に、ヴォルカニア王国方面軍でも数はかなり減少していて、今回アナスタシアに支給された機体も本来は後方都市への移送が決まっていたものなのだろう。

 グラディス中将がその権力を行使して一時的とはいえ、乗機を失ったアナスタシアへと送ったもの、と考えれば納得がいく。

 が……これほどまでに好意を示されているはずのアナスタシアの表情がかなり微妙なもので、本人は納得をしているわけではないというのがありありと見えた。

「それと、支給された機体を使って任務を遂行してもらいたい、テグネール曹長も同行してな」


「……は、はい!」


「よろしい、テグネール曹長にも苦労をかけるね……本来であれば君はもう少し……いやすまない」

 マッテーイ大佐は、何かを言い淀んだ後軽く咳払いをしてから机の上から別の命令書を取り出そうと書類の山を軽く崩すと、中から一枚の命令書を取り出してから、ニルスへと手渡した。

 そこには受領した人形騎士を使って、ヴォルカニア王国軍の補給部隊の移動に合わせて遊撃を行い、補給基地を完全破壊……主戦線にいる敵軍の行動を阻害するようにと書かれている。

 その命令を見たニルスは思わず息を呑む……補給部隊は前線よりもかなり深い位置を移動していて、敵軍の勢力圏内に入って行動する必要があるからだ。

 普通の命令ではない……はっきりいえば自殺行為に近い作戦なのだが、大佐はニルスの顔を見て苦笑する。

「無茶な命令だと思うだろう?」


「……いえ、その……援護が必要かなと」


「最前線で主力がぶつかっている間、遊撃部隊としての行動を期待している……補給基地を攻撃し破壊した後は早急にその場を離れ撤退してよろしい」

 誰だこの無茶苦茶な作戦を立案した奴は、とニルスは命令書に書かれた立案者の名前を探すが、そこには達筆な字で『グラディス・バルハード・ゼルヴァイン』の名前が書かれていたため、思わず息を呑む。

 つまり中古とはいえケレリスよりも高性能な人形騎士を支給するから、補給基地をなんとかしろ、という直接命令なのだ。

 その意図はわからないが、グラディス中将は若い曹長でしかないアナスタシアならどうにかする、と信じているのだろう。

 ニルスが少し迷いを見せていた中、隣に立つアナスタシアは軽く息を吐いた後まっすぐ大佐を見てから凛とした声で応えた。


「承知しました、フェラリウスを受領した後補給基地攻撃の任務につきます」

_(:3 」∠)_ 結構無茶な作戦を押し付けられるの巻


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