第九六話 森の巨人 〇二
「おめらなにものだぁ?」
「フォレストジャイアントかよ……」
私はモニターに映るちょっとでっぷりとした体型の巨人をみて絶句するが、ジャイアントはこの世界においても結構数がいるメジャーな魔物の一種だ。
ちなみに知能はかなり高くて、神話では神様が彼らを使って地上を支配しようとしたけどそれに逆らったため、本当の力は奪われてしまった、なんて話もあったりする、
古い時代には彼らと人類は結構いい関係を築いていた時期もあったそうで、人形騎士がない時代には彼らが大規模な建築にかかわったという記録も残っている。
主にそういった逸話に由来する建物はヴォルカニア王国に残されていたけど、戦争中に帝国軍が結構破壊してしまったので、今では廃墟と化している場所が多数だ。
『フォレストジャイアントって初めてみました』
「なんだぁ……おなごしかおらんのかぁ」
「まずいね、巨人の中でもこいつらはあんまり品がよろしくない」
巨人族にもさまざまな種がいるけど凶暴すぎて話にならないサイクロプスと違って、フォレストジャイアントは比較的話が通じる方だ。
ただし通じるだけで思考回路は人間のそれとは全く違うし、知能としては人間の子供くらいと言われる程度でしかない。
言葉が妙にたどたどしいのもその影響で、巨人族の中でもファイアジャイアントやフロストジャイアントなどの上位種に比べると格段に能力としては劣る。
そして巨人族は基本的に雑食なのだが、フォレストジャイアントはかなり貪欲な食欲を持っている……飢えれば人間も捕食する厄介な存在なのだ。
「なんだぁ……おおきいてつからもにおいがすっど……それよりもおらぁはらへっだんだぁ」
『……アーシャさん、なんか相手の様子が……』
「こいつら飢えたらなんでも食うからな……くるよッ!」
「はらへっだぁあああ!!!!!」
フォレストジャイアントは突然大きく口を開けたかと思うと、私が乗る戦士級人形騎士ヴィギルスへと突進を開始する。
人形騎士の影にいたメルタは危険を察知していたのか、装甲馬車をさっさと移動させており、私が動きやすいように連携してくれている。
ありがたい……私は長剣を引き抜き円形盾を構えると、相手の突進を誘導するように右方向へと移動していく。
その動きに釣られたのかフォレストジャイアントの突進はほんの少しだが速度が落ち、そしてその動きに合わせて状態が大きく揺らぐ。
「くわせろおおおおッ!!」
「食わせるもんなんかねえよって……おいおい……」
私はフォレストジャイアントの突進を盾を使っていなすと、バタバタとした走り方をしていた相手の足を引っ掛ける。
その動きに対応などできるはずもなく、巨人は大きくバランスを崩そうと仕掛けた私が驚くくらいの勢いで前転しながら近くの藪へと飛び込む。
ズウウウンッ! という地響きとともに木々がへし折れ、大きな土煙が舞い上がるが……まるで足元を見てないなこいつ。
濛々と立ちこめる土煙の中、大きな黒い影がゆっくりと立ち上がる……巨人は基本的にめちゃくちゃタフだ。
全身に巨大な槍を突き立てられ血だるまとなりながらも暴れ回り、たったまま絶命した巨人もいたとかなんとか……どこかで聞いたような話だなと思ったが。
『うわぁ……まっすぐ突っ込みましたね……』
「この程度じゃ死なないよこいつらは……」
「うう……いでえ……いでえよおおおおおお!!」
土煙の中から飛び出してきたフォレストジャイアントは両腕をぶんぶんと振りながら私へと向かって走る……それだけを見れば小さな子供が泣きながら暴れているような感覚があるが、それを体高八メートル近い巨人がやるとどうなるのか?
周囲の木を薙ぎ倒し、岩を弾き飛ばして突き進む巨人は破壊の権化となって突き進んでくる……さてどうやって止めたらいいだろうか。
私はその突進を大きく機体を横へとスライドさせて避けるが、一度走り始めた巨人はそんなことはお構いなしにまっすぐ突き進むと、ある一定の距離を走り終えた後すぐに人形騎士へと向き直り、威嚇を始める。
真っ黄色で汚れた歯を剥き出しにして両手を大きく広げると、まるでゴリラのドラミングのように胸を数回叩く。
ドンドンッ! という鈍い音を響かせた後、フォレストジャイアントは私が乗るヴィギルスが武器を握っていることにようやく気がついたのか、眉を顰めた。
「うごごごっ……ぶきぃ……おでももつぅ!!」
「……少しは頭が回る個体か……」
フォレストジャイアントは近くに生えていた木に手をかけると、まるで躊躇なくそれをへし折る……この森に生えている木々は高さが一〇メートルくらいあって、かなりの高さと太さがあるのだが、そんなことはお構いなしという感じだ。
凄まじいパワーだ……巨人は腕力に優れた種族ではあるが、目の前の個体は特別能力が高いらしい……サイクロプスほどではないとは思うけど、それにしても厄介だな。
私は黙って武器を構え直すが、それを見た巨人は両手で引き抜いた木を構えると、再び叫び声を上げてその武器を上段から振り下ろす。
技術もへったくれもない純粋な腕力……だが、その一撃を喰らえば人形騎士といえども大きなダメージを受けかねない危険なものである。
「うごおおおおおおおおっ!!」
「……くっ」
タイミングを測り損ねた私は大きく横に機体を飛ばしてその一撃をなんとか回避する……ズドンッ! という音と地響き、そしてたった一撃で木は粉々に砕け散ってしまう。
その一撃を回避した私の前で地面に大きな穴が穿たれるのが目に入る……やばすぎる、こんな一撃くらったらヴィギルスはあっという間に行動不能だ。
私は不思議そうな表情を浮かべて、手に持つ残骸を見つめるフォレストジャイアントへと走り出す……武器がない今しかない。
全力で走り出した人形騎士の駆動音に反応したのか、巨人は残骸を私へと放った……まずいっ! 速度が上がり始めていたヴィギルスのペダルを踏みつけ左側へと身を投げ出すと、すぐ近くを轟音を立てながら残骸が飛んでいくのを感じる。
「あぶねっ!!!」
「なんでよけるだぁ!!!」
「当たったら死ぬだろバカか!!」
「うるさいいいいいいっ!!」
フォレストジャイアントは再び片手で近くにあった大きな岩……これも人間なんかよりはるかに大きなサイズだが、それを持ち上げると私に向かって投げ飛ばしてきた。
この軌道は避けられない! 私は盾を使ってその岩を受け止めるが、ゴオオンッ! という鈍い音と共に、ヴィギルスの左腕関節部から、青い液体が軽く飛び散るのが見えた。
凄まじい衝撃で関節部分にダメージが入ったのだろう……だが手応えは失っていない、損傷はあるがそこまで大きなものではない。
私は剣を振りかざして一気に距離を詰める……裂帛の気合いから右からの袈裟斬りを放つが、その一撃をフォレストジャイアントは左腕で受け止めようとした。
おそらく反射的な行動だったのだろうが、鋭い剣に対してその防御は悪手だ……剣が腕の肉へと食い込み、真っ赤な鮮血が舞う。
「いでえええええっ!!」
「まじか、断ち切れないだと?!」
だが、私はフォレストジャイアント……巨人の能力を少し見誤っていたらしい。
特別個体グラトニアの尾すら一撃で断ち切ったはずの剣は、フォレストジャイアントの左腕に半分ほど食い込んだところで止まっている。
ギリリ、と刃が食い込むがその感触は相手の骨を断つまでには至らず、巨人は溢れ出る血液とその激しい痛みに我を忘れたかのように拳を振り抜いた。
一瞬の出来事に私は身を交わそうと操縦桿を動かしたのだが、相手の行動がほんの少しだけ早く、拳がヴィギルスの顔面を撃ち抜く。
ガアアアンッ! という音と共に機体が大きく後方へと飛ばされる……なんとかペダルを踏んで体勢を整えるが、立て直した直後私は驚きに目を見開く。
「まずい……今の一撃でモニターが死んだ……!」
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