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後継

「冬月が呼び出した『神』を使って世界を変える。簡単に言えばそんな感じですわね」


「いや待て。そんな簡単に言うな。」


さっきまで散々勿体ぶってた癖に言う時はサラッと言いやがる。


「まあ、本人に話を聞きながらの方が話もしやすいでしょう。皆、貴方を待ってますので。」


手を引かれ、大きなホール…というか会議室へと案内される。


「さて!やっと全員揃いましたので、さっさと解説しますわ。」


「全員揃わないと言わないー、って言ってたもんねぇ。いつになるやらヒヤヒヤしたよ。私のお腹は冷えてるけど。誰かの氷のせいで。」


冬野の嫌味がチクチク刺さる。


「まずは冬月シオン。彼女の異能を簡単に説明します。彼女の持つ本の中に出てくる異形のモノ。『神』と呼ばれることさえあるこの世の理から外れたもの。それらを呼び出し、ほんの一部を拝借する事ができる。そういったものだと、本人から聞いています。」


「本の中を世界と仮定し、そこに『神』と呼ばれる存在が居るのであれば、それはこの世にも居るということ。ましてそれを呼び出せるのですから、この世界においても神は居るのだと。そう仮定してかつての私は計画を進めました。」


何の説明もなかったこれからの計画について、突拍子もないものが出てくる。

前の偽物の世界でも似た話はされていた気がするが、ならばここも偽物なのだろうか。

判断材料が無さすぎる。


「結果は、まあ今の現状が答えですわね。世界を救うには至りませんでしたわ。」


誰も口を挟まず、それをわかっているかのように愛上は語り続ける。


「それでも。過去の経験の中で最も世界の根幹に触れられたのがこの方法でした。冬月の力で『神』を呼ぶことによってこの世界のバランスは著しく崩れる。それを修正すべく、この世界の神は現れたのです。」


神だのバランスだの…何もかもご都合主義にしか聞こえてこない。

本当に、俺たちはその計画の為にこれまでやってきたのか…?


「『神』を()ぶ為だけで冬月の命は砕け散りました。そしてそのまま、現れた異形もすぐに消えてしまったのです。それを見届けてこの世の神は去っていきました。私たちの滅びなど見向きもせずに。」


すっ、と息を吸い込み、愛上が声を上げて語る。


「ならば!この世の神に私達が生き残らせるに値するものであると見せつける他ありません!脅迫、取引、情…なんでもいいのです。私達のこの世界を、滅びの運命から逸らすことに利を見出させるしか…ないのです!」


「はい。そういうわけで、結局賭けですね。世界をほんの数人で確実に救う手立てなんてそれこそ都合良くいかない限り無理ですし、数居れば確実かと言えばそうでもありません。内部からの反発、外部からの妨害、いざという時の後継。全てを加味してこの時期に行うという決断に至りました。」


冬月がさらりと言葉を補足するもんだから愛上がちょっと不満そうだ。


「…まあ、そういうわけですわ。折角なら最後までビシッと決めさせてくださいまし。」


「はいはーい。質問なんですけどー」


空綿が声を上げる。


「後継って、なんですか?もう終わりなんですよね、この世界って?」


「あ、それボクも気になってたのじゃ。そこんとこ説明よろなのじゃ」


造も加わり、2人の質問に対して待ってましたとばかりのしたり顔で冬月が答える。


「はいはい、そこはちゃんと説明しますね。絶対質問来るだろうなーって分かってて言ってるんで。」


「「むっ…」」


当の2人はちょっと嫌そうだが。


「私によって出てきた神は私の命をものの数分とかからずに使い切ります。私の命がそのままタイムリミットなわけです。ですが、それで『はいわかりました急ぎます』なーんて神様が行ってくれるわけありません。向こうは向こうのペースでのんびりゆったり来るでしょう。なので、私の命が終わり次第命の消費を継いでくれる人を決めておきます。」


「あー、そゆこと。」


「ならボクたちが最有力なのじゃ。正直嫌じゃけども。」


「戦うには向かないもんねえ」


「代わりに他の皆には頑張ってもらうのじゃ。痛いのはごめんなのじゃ」


空綿と造は早々に納得して話を続けてしまう。


「他に質問のある方は?」


「じゃあ俺も。結局さ、これ冬月次第のワンマンプレイじゃん?俺たちがここに残った意味ってその『後継』になるためだけってこと?」


リズからの質問ももっともだと思う。

戦う相手もいない中で、俺たちがこうして残った意味はなんなのか。

命をかけて繋ぐ、というだけなら質より量…の方が建設的だと思う。


「当然、皆さんには戦い抜いて私を…ひいては後継の方を守っていただく必要があります。まあ簡単に説明しますね。」


「戦うってもなぁ…流石に神様と戦えってのは無理あると思うんだけどね」


「当然ながら神と戦うなんてことは不可能です。世界のルール的な問題で無理です。スゴロクのコマがプレイヤーに逆らえないのと同じくらい不可能です。…ですが、私達は駒でもなければ、進む歩幅もその道筋も自分たちで選ぶことができます。少なくとも、そうでなければここまでこの世界は続かなかったはずですから。なので…」


「全然簡単に聞こえないんだけどこれ質問したら俺が悪い?」


うん。俺も分からん。


「……つまり、向こうの想定外の動きをしてくださいってことです。想定外には向こうも対応せざるを得ないでしょうから。」


「想定外つってもなぁ。何やりゃいいか分かんない中で神様の考えの外の行動をしろってものも無理難題じゃねえ?」


「その無理難題を通してこそ、その先の未来が見えるんです。なんとしてもやり切って下さい。」


「はー、簡単に言ってくれるよ」


「まあ、そう言うなって。俺なんか外からくるよく分からん奴らとバトる羽目になってんだからさ」


やれやれ、と言いたげに声をかけるのはりでるだった。


「俺はむしろそっちの方が性に合ってるんだけどな」


「わざわざそっちに居るんだから何かしら役割あるんだろ。やることやるしかないってことよ」


「あとは…特に質問ありませんか?」


外から俺たちを襲いにくるあの『手』について聞こうかとも考えたが、この場にいる皆のりでるへの反応を見るに全員理解している。

それならば後で聞けばいいことだ。


「……では、今回はここまでということで。残された日は多くありません。最後の戦いに向けて、きちんと休んでおいて下さい。」


皆解散し、各々の行動を始める。

俺はつららを呼び止め、あの手について聞いてみた。


「あれは、この世界の成れの果て…らしいよ。愛上さんから聞いたことだから私が調べたわけじゃないけど。」


「成れの果て…?」


「あの外の暗闇。アレに呑まれた人達は人であることを維持できないで、助けを求めて手だけを伸ばす…みたい。この世界に生きた人たちの、最後の抵抗…って感じかな。」


思ってたより気持ちのよくない話だった。よく分からない侵略者、とかの方が幾分楽だ。


「…そう、なのか。そういえば、俺は作戦日もつららと同じ位置に配置されて冬月の護衛につく形だったよな。」


不自然な形になったが、どうにか話を変えたくなった。長く話したいものではない。


「そうだね。もうほんの少ししか無いけど、これからどうなるにしても…やるだけやってみなきゃね」


未だに『俺のやるべきこと』が見えない俺は、静かに頷くほかなかった。


「…あ、言い忘れてた。」


「当日の動きとかか?必要な情報はなんでも…」


「もう1人、増えたんだよ。ここに居る人。」


「………へぇ…」


なんというか、誰なのか大体想像つく。


「あれ、なんかうっすい反応。もっと驚くと思ったんだけど」


「まあ…なんというか…」


「顔見せくらいはしておかないとね!短い付き合いになるとしても、コミュニケーション取っておかなきゃ!」


腕を引かれ、連れていかれる。

多分あいつだろうなぁ…とか思いながら開くドアをやる気なく見つめるしかなかった。

正直、合ってたら一発ぶん殴りたい。

ゆったり進んでいるつもりでしたが、こうして見るとだいぶ急ピッチに見えてきてしまう今日この頃いかがお過ごしでしょうか。ロベルトです。

仕事の合間に書いてるのでどうしても更新が亀の如くおっそいですが、話について来れてるでしょうか。

俺は微妙です。

桜も散って、梅雨へ向かっておりますがマイカーのタイヤが未だにスタッドレスです。予約が遠い。

燃費が悪いので早めに交換したいけどまあ仕方ないや。

本編について全然語ってないけどとりあえずこんなもんで。

ではまた次回!

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