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捨てる覚悟

あまりにもあっさりと『自分の異能で救う』と言い切ってしまう冬月シオンの行動は、俺には全く理解できなかった。

少なくとも、つららも同じ感覚を得ていたと思う。

だが、俺たち以外。愛上や、りでる、冬野、あやめでさえもその言葉を受け入れていたし、誰も異議を挟まなかった。


「私の…というのは少し語弊があるかもしれません。正確には、『私の異能を基にして世界を救う』が正しいですね。」


何が違うのかよく分からないが、要は彼女の異能が世界を救う鍵なのは本人も理解している事実なのだろう。


「俺たちはまだそれをよくわかってない。きちんと説明してもらう時間はあるだろうか…?」


「もちろん、そのつもりです。ここを理解して頂かないとここから先の行動に齟齬が生じますので。」


そっと取り出すのはいつも持っている本。


「この本が、私の異能の元になります。私の異能の名は『怪書(インビジブル・)顕現(コーリング)』。私が手にして、読み切った本の中に出てくる非実在のモノの力を一部借りることができる…そういう能力です。あくまでも一部。その力の全ては使えません。それに、この能力を知っている人が書いた本は対象外ですしその力を使う為には代償も支払う必要があります。」


冬月の言葉は続く。


「この本はTRPG、と呼ばれるゲームの内容を小説に落とし込んだもの。その世界の中には異形の、異質の、異端の神々が存在しています。私はその神の力をほんの少し借りたり、少しの間だけ顕現させることによってこれまでを戦い抜いていました。」


いきなり神とか言い出したんだけど何言ってんの。


「簡単に使える能力ではありませんが…言い方は悪いですがどうせ次がある身です。躊躇なく使うことが出来ました。もしこの戦いで救いが行われたのなら、その後の世界で私は私の運命を生きよう、と。そう思って戦って参りました。それが今回、最後だと通告されてそれでもこの先を見ることが出来る可能性がこれまでで1番あると断言されました。」


んーと、つまり難しそうに言ってるけど自己犠牲を厭わないで使ってきたぞってことだな。


「私にも、これまでやってこれなかったことがあります。自分の頭の中に案があっても、それを実行できなかったことがあります。それらを全て試してでも今回の事は成功させてみせます。」


ふう、と一息入れて冬月の言葉はまだ続く。


「恐らく、私の命や存在はこの世界から消し飛ぶでしょう。それくらいの覚悟はしています。そして、私1人の存在を賭けたとしても出来るのはせいぜいチャンスを作るための機会を作る…その程度でしょう。なので、後は皆様に託さなければなりません。私の異能はそこまで万能ではないので。」


長くなってしまって申し訳ありません、と言葉を締めて冬月は後ろに下がる。


「彼女とは、前の世界線の時からこの話を進めていました。誰が何を言おうとも、この方針は変えません。この作戦が最も可能性があるのです。」


愛上が冬月が終わらせた言葉を繋げる。


「そゆこと。私も多分その時に協力しなきゃだからそこまでになるかな。あとは頼んだぞ〜」


飄々と自分の限界を語り出すのは冬野だった。

何がなんやら理解が追いつかない。横を見ればつららも困惑しているようだし、俺たち以外は皆理解しているという面持ちだ。


「ボクも他の手立てがあるだろうと思って色々提案してみたのじゃ。でも、この方法を超える可能性を見出せなかったのじゃ…」


「私もやる事あるので多分最後までは残れませんし、あとは皆にお願いするしかないですね」


閃ちゃんも、空綿もこう言ってくる。


「やろうと思えば今すぐにでもこの作戦は始動します。今始めたところで準備不足になりますけど。」


愛上の言葉は嘘ではないのだろう。この期に及んで何を隠すと言うのか。

準備不足…要は俺の覚悟。

仲間の命と引き換えに世界を救う、その覚悟が必要なだけだ。


「いきなりこんな事を言われて困惑するのは分かります。ですが、時間はありません。」


早めの決断を…と言われ、解散となった。

だがこの状況で決断を迫られて『やっぱり皆が生き残る道を探そう』だなんて言えるものだろうか。

過去に読んだ小説には仲間の死をよしとせずに違う手立てを探し、見つけて大団円となったものもあった。

犠牲を払って手に入れた先で何故か生き返ったりだとか、実は死んでなかった、だとか。

そんなストーリーもあった気がする。

でも、これは違う。

嘘みたいな、現実だ。

死んだらもう二度と会えないのは当たり前だし、生き返りもしない。

これまで愛上が何回のループを生きてきていようと、このループにどれだけ大事な記憶があろうと。

死なせていい訳がない。そんなのは考えるまでもない当たり前の事だった。


「…………」


なんの声も出ない。息を吐くことすら忘れてしまいそうな重圧に、自分の部屋で押しつぶされそうだ。

ベッドに座りながら考え方をして、潰されるも何も無いか。


俺の一存で決まる訳がないこともわかってる。

俺が『使える』人間がどうかを見てるだけだってこともわかる。ここで反対するようなら切り捨てられるんだろう。


ならさっさと賛成してしまえばいい。

死んだ先で蘇るかもしれないし、もう一周実はあるかもしれない。

次考えればなんとかなるって可能性だって無くは無いんだ。

…それならなんの迷いもなく犠牲を払う方を選んで試してしまえよと。

自分の中の葛藤はいつになっても収まる気配がない。


いつの間にかだいぶ暗くなってしまっていた。西陽が少し入る程度しか明かりがない。

そんな閉め切った部屋にノック音がする。


コンコン、と。


「ねえ氷河。ちょっと…話さない?」


ドアの向こうからするのはつららの声だった。

俺はなにも言えずに、ただドアを開ける行為を返事代わりにしてしまう。


「…ん、ありがと。」


そんな行為にお礼を言いながら、部屋に入ってくる。

俺の隣に座りながら、何も言わずに居てくれる。

『話さないか』と言っていたんだから、何かしら話したいことがあったのだろう。

もしかしたら、俺と同じ状況になっていて意見を求めていたのかもしれない。

俺からかける言葉は見当たらないし、何を言ってほしいのかすらわからない。


5分、10分。

暗い部屋で2人きり、ゆっくりと時間が過ぎていく。

どれくらいの時間が経ったのだろう。

外から入る陽の光は既に無くなり、完全な暗闇がここにある。


「ねえ氷河。私ね」


暗い部屋に、いつぶりかの音が響く。


「前の世界で、とか言われても正直実感ないんだ」


そういえば、つららは実際に飛ばされた訳じゃない。俺の氷の中で、凍らされていたままこの時代まで生き続けていたんだ。


「だから、多分誰よりも前の世界のことは覚えてるんだと思う。つい昨日のことだもん。」


確かにそうだ。つららからしたら何が起きたのかの理解すら追いついていないだろうし、そこにこんな話まで付いてきている。


「私はね。優しくて、でも臆病で、肝心な時に迷っちゃうけど最後はちゃんと決めてくれる…そんな氷河が好きだよ。だから、氷河が決めたことなら私はついてく。」


声のする方を見ても、表情も何も見えない。


「だから、後悔しない道を選んでね。言いたかったのはこれだけなんだ。これだけなのに中々言えなくて、いっぱい居ちゃった。」


ドアが開く音がする。


「じゃあ、おやすみ。ちゃんと明かりはつけないと見えるものも見えないからね」


ドアから入る廊下の光で目が眩んでしまう。

結局、ちゃんと返事もできずに2人の時間は終わった。


「俺が、後悔しない道…か」


何が俺の後悔になるのか。

よく考えて、選ばなければならない。

はい。暗い部屋に2人で居ても絶対手は出せないし、空気を無視してそういうことできるタイプじゃないだろうなって感じの氷河くんイメージです。絶対無理そう。

手綱をとるならつらら側だろうし…って何の話だ。

そんなこんなでぶっ飛んだ能力出てきましたね。

でもこれ、前々から使ってたんで後付けじゃないんですよ!!本当ですからね!!


てなわけでまた次回!

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