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カチグミ・サラリマンの悲哀


「し、死んでる……!!」


 白衣を着た男は、和室のテーブルの上にもたれかかって動かない。

 廃墟の中で死体見つけちゃったよ!!!


「殺人事件だー!!」


「ま、まて落ち着くんだリー。

 救急車を呼ぶか? いや、ポリスメンか?」


「貴女も落ち着いてないじゃないですか。

 ふむ……見てみよう。

 テーブルの上にあるのは――」


 シヴァは肩眉を上げ、テーブルの上を訝しげに見回す。

 そして彼女は、手近にあった黒い怪しげな空き缶を手にとった。


「あぁ、シヴァさん、現場は保存しないと!」


「これは……エナジードリンクに栄養ドリンク。

 サラリマンお気に入りの品ですね。

 なるほど、これのせいで昏倒しましたか」


「昏倒? 死んでないのか」


「死体は呼吸しませんよ。よく見てください」


「あっ」


 言われて冷静になって見ると、男の肩はゆっくり上下している。

 なんだ焦ったぞ。


「とはいえ、このまま飲み続けてたら本当に死ぬでしょうけどね。

 エナジードリンクはサラリマンお気に入りの品ですが、

 これは健康を犠牲にして、寿命を前借りするものですから」


「そりゃ死ぬために働いてるようなもんじゃないか。

 天笠ってメガコーポの中でも有名どころだろ?

 そこの主任が、なんでこんな廃屋の中で死にかけてるんだ」


「彼がエンジニアだからですね」


「はい?」


「メガコーポで働くサラリマンは、いわゆるカチグミ・サラリマンです。

 しかし、そのカチグミの中でも上下があるのですよ」


「ふむ。なんか聞きたいような聞きたくないような。

 どういうことだ?」


「カチグミ・サラリマンは、厳格な階級社会を()いていて、

 カイチョーを頂点とした、ピラミッド構造の社会で生きています。

 サラリマンは人類によく似ていますが、実際には別種の存在です。

 彼らは会社という、創造された社会で生きる種族なのです」


「サラリマンが人間じゃないみたいにいうな!!!」


「ですが、サラリマンは人間とは違う価値観を持っています。

 彼らは食事や睡眠といった、生物としての欲求を満たすよりも、

 肩書を持つタイトルホルダーであることを重視しているんです」


「あー……このぶっ倒れているのがそうだと?」


 シヴァは俺の言葉にたいし、深くうなずいた。

 そして彼女はさらに続ける。


「エンジニアはサラリマンの中でも最下層の存在。

 労働階級であり、メガコーポのために存在する奉仕種族です。

 主任といえども、エンジニアはサラリマン社会の底辺。

 使い潰される運命にあります」


「……カチグミも大変なんだな」


「『カチグミは人生の勝利者』

 『カチグミになれば幸せになれる』

 カチグミはそういった一種の神話的存在になっていますが、

 それはメガコーポの悪質なプロパガンダです。

 見ての通り、実際にはそうではありません」


「まぁ、こいつの姿で何となくわかるわ。

 廃屋でぶっ潰れて、幸せとは真逆の光景だからなぁ」


「えぇ。彼もプロパガンダの犠牲者ですね。」


「貧しい家の出であれば、両親の内蔵を売ってでも、

 必死でカチグミの座を掴み取ろうとします。

 しかしこれはメガコーポが奉仕種族を補充しようとする

 計画の一環に過ぎないのです」


「やんなるなぁ……。

 正気で狂ったことをしている。

 いや、どこもそうか」


「しかしこれはチャンスですよ。

 彼は日頃のビズでかなり疲弊(ひへい)しています。

 ルイさんが優しい言葉をかけて看病すれば、

 生まれたてのチキンのヒナのように懐くでしょう」


「正気で狂ったこと言わないで」


 クソ!

 よく考えたら、シヴァもそっち側じゃねぇか!


「助けるのはいいが、意図が邪悪すぎんか?

 シヴァのそれってメガコーポと大差ないぞ」


「私たちの背後には守るべき生活がありますので」


「メガコーポの中の連中も同じことを言いそうだな。

 自分のためか、他人のためかという違いはあるけど……。

 さて、こいつをどうしたもんかな」


「彼を寝かせ、エナジードリンクが抜けるのを待ちますか。

 今の状態では話を聞くどころではありませんから」


「会話が薬物中毒者の治療のそれなんだよなぁ……

 まあいいか、フトンを探してくるか」


「リーは顔をぬぐえる布と、洗面器を探して」

「おー!! まかせろ!!」


「よし、取り掛かろう」



情報量が多いけど、内容がトンチキ過ぎて

あたまおかしなるで

でもこういうのスキ(

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