ラジオから死者の声が聞こえる
『夏のホラー2022』投稿作品です。
タイトル通りです。
でも【怖さ度1】です。
思ってたのとちょっと違う恐怖をお楽しみください。
お盆。
地獄の釜の蓋が開き、あの世とこの世の境が曖昧になる季節。
そんな時には不思議な事が起こるようで……。
ジ……、ジジ……。
「? 何でラジオが?」
電源を入れていないはずのラジオから、ノイズが流れ出す。
それは兆し。
「あなた、どうしたの?」
「いや、ラジオがおかしいんだ」
「え?」
「電源が入ってないのに、ノイズが出てるんだ」
「壊れたのかしら。電池抜いてみたら?」
「そうだな」
スイッチを切っても、電池を抜いても、その恐怖から逃れる事はできない……。
「な、何で電池を抜いてもノイズが……!?」
「やだ気持ち悪い……!」
そしてそこから流れてくるのは……。
『……る……』
「ひっ……!」
「! この声……!」
……死者の声……。
『大……』
「ばーちゃん!?」
「お婆様!」
『元気にやっとるかい? あんたは夏になるといーっつもスイカの食べ過ぎで腹さ壊してなぁ。毎っ年同じ事するで、ばーちゃん心配で心配で……』
「あなた、そんなにスイカ好きなの?」
「や、やめろよばーちゃん! 何年前の話だよ!」
『里砂さんに迷惑かけてねぇか? おめはやきもち焼きだかんべ、やれ男と出かけるな、やれ目立たねぇ服着ろだの、ひっち面倒臭ぇ事言ってねえか?』
「やめろって!」
「それであなた、私がミニスカート履くとちょっと不機嫌になるんだ……。ふふっ」
「いや、それはその、何と言うか……」
『おらの喪が明けるまでとかかってぇ事言ってねぇで、とっとと子どもこさえろや。嫁さんいるのに風呂場で一人だなんてなっさけねぇ事』
「わー! わー! わー!」
「そ、そうだったんだ……。全然平気な顔してるから、私って魅力ないのかなとか思ってたけど……」
「ち、違うんだ里砂、これは……」
『えぇから仲良うするんだぞー。来年のお盆には孫の顔見せてくれやー』
「ば、ばーちゃん! ……音が、止まった……」
「……あなた」
「な、何だったんだろうな今の! あはははは!」
「……ねぇ。あなたがお婆様に結婚式を見せたいって、仕事も準備も頑張った事、尊敬してる」
「え、あ、う、あ、ありがとう……」
「だから一周忌まで子どもは待とうって気持ちも納得してた。……ううん、納得してるつもりだった」
「え、あの、里砂さん? 何で近づいて……?」
「でも、お婆様もああ言ってた事だし、ね……?」
「う、うん……」
死者から声が聞こえる恐怖……。
そして知られたくなかった事を明かされる恐怖……。
あなたのお宅のラジオが突然鳴り出したら、それは……。
読了ありがとうございます。
死者の言葉が過去を暴き、これからの生活を一変させる。
ホラーですね(にっこり)。
笑ってもらえましたら幸いです。