0.プロローグ
「し、信じたのはお前だ!信じたくせに文句なんていうんじゃねえ!!」
放課後の校内に男の怒りが響き渡る。
怒号を飛ばした男は手を固く握っており、襲い掛かってきそうな形相で俺をにらみつけていた。
何故?
何故俺は怒られている?何故この男は俺に怒っている?失ったのは俺なのに。
困惑している中、ふと男の言った言葉を口に出した。
「信じたくせに?」
「そうだ!信じるっていうことは裏切られることも覚悟の上だったはずだ!なのにいざ裏切られた途端に責めるなんておかしいじゃないか!!」
何を言っているんだこいつは。だからって裏切ることが許されるわけないだろう。
そう言おうとしたところで言葉に詰まった。この男の言葉に、ほんの少し納得してしまったからだ。
“信じるということは裏切られることも覚悟の上だったはずだ。”
この言葉が脳から離れない。何か言おうとすると、この言葉が邪魔をして思考が固まらなかった。
数秒の沈黙の後、
「もう、いい。」
と言い残すことが限界だった。
あの後、俺はすぐに教室に戻り、荷物をもって下校した。その間、男は廊下に立ったまま動かなかった。
男はどこまで本気で言っていたのだろうか。あんなに怒ってるんだ、噓ってことはないだろうけど。心のどこかで本気で言ってないと思いたかった。
「テレビや動画みたいに字幕でもついていたら助かるのに。」
そんなしょうもないことを呟き、少し小走りに学校を後にした。
どうもみなさま 見ていただきありがとうございます。
こちら初なのでまだ至らない点ばかりですが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。