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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
閑章 廃棄物狂騒曲(ラプソディア・アポリマートン) ~カエサルの物はカエサルに~

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10 ミレーヌ・ヤハタ (後)

 ゴミの処理施設への持ち込みは、翌日も続きました。

 ただ初日のゴミは、艦の中に溜まっていた物、それから0区で発生したデモ隊との衝突等で発生したものが含まれていましたので、翌日のゴミは半分くらいに落ち着きました。

 それでも持ち込む度に、クレーネンさんの小言は頂きましたが。


 クレーネンさんが貨物ヤードに突き返したゴミは、クーロイ星系の回収業者総出で、再利用品の回収をしているそうです。回収した残り滓半分くらいの嵩になってコンテナに戻され、貨物ヤードに置かれているそうです。

 そっちはグループ内の先輩が担当しているみたいで、私は宇宙軍内のゴミの回収と持ち込みに専念させて貰っています。


そうしてゴミの回収業務をしていると、グループ長から電話が掛かってきました。

 

「ヤハタ君。

 急な話なんだが、明日の午後、自治政府からの食糧の持ち込みがある。

 君とクラーヴ君にも、検品に立ち会って貰いたい。」


 クラーヴ先輩は、貨物ヤードでの資源回収等の立ち合いを担当しています。


「ゴミの回収とか資源回収の立ち合いとかは、しなくて良くなったのですか?」


「そちらは我々総務経理では無く、実働部隊に移管するよう指示が出ている。

 移管の手続きは私の方でするので、明日の立ち合いは宜しく頼む。

 夕方からは、その食糧を使って宇宙軍内の慰労パーティーが開かれる予定だ。これは監察官……第四皇子殿下のご指示でね。

 君達も、パーティーに参加して英気を養ってくれ。」


「はあ、判りました。」




 翌日は午前中に実働部隊への引継ぎを行い、午後に駅の奥の桟橋……今朝接舷された、第四皇子殿下の御座乗艦である、重戦艦アストゥラピへの連絡橋の方へ向かいました。

 既にクラーヴ先輩、他の数人の先輩方も桟橋の入口に来ていました。

 そして私が来てから数分後にグループ長がやって来ました。

グループ長が最後らしい。


「これで立ち合いの全員だな。それでは行こうか。」


 グループ長を先頭に、重戦艦内の格納庫へ繋がる連絡橋を進んで行く。

 格納庫入口で軍の身分証をチェックされた後、格納庫に入ると、かなり広いスペースが確保されています。

 格納庫の隅の方には、ここに似つかわしくない物品……テーブルや椅子、空の食器類、ビールなどが積まれています。これは、後で開かれる予定のパーティー用のでしょうか。

 この後、自治政府側がトレーラートラックで食糧のコンテナを直接ここまで運んでくるそうです。コンテナが何台もやって来るので、全部持ち込まれてから中身を確認することになっているそうです。


 やがて、大型コンテナを運ぶ自治政府のトレーラーがやって来ました。

 格納庫内の置き場所の指示やトレーラーの誘導は、この重戦艦の乗組員が行っていますので、我々はその立ち合いと、最後の中身の確認と検品が役割です。

 指示を受けている1台目のトレーラーの助手席には、見覚えのある方が乗っていましたので、側に寄って御挨拶をします。


「クレーネンさん、こんにちわ。

 今日の納品も御担当なのですか?」


 私の顔を見たクレーネンさんが、ドアを開けてトレーラーを降り、私の方に寄ってきます。


「ヤシマさんじゃないの。

 今日持ち込みに来ないなと思ったら、こっちにいたんだね。」


 クレーネンさんはにこやかに話しかけてきますが、どこか表情がおかしいです。何というか……ちょっと引き攣った様な表情です。


「私が来てるのは、コンテナの貨物ヤードまでの運搬指示の為ね。

 私はここに来るのに慣れてるから、これから何台も来るトレーラーの運転手たちに指示するのよ。

 ヤシマさんは、こっちの検品の立ち合いかい?」


「ええ、そうです。」


 クレーネンさんは、格納庫の隅に用意されているテーブルや椅子などを見つけます。


「あれが置いてあるって事は、この後飲み会でもするの?」


「多分……慰労パーティーがあるって話が出ているので、その用意だと思います。納品された食糧で飲み食いするんでしょうね。」


 それを聞いたクレーネンさんは、急に声を潜めます。


「ヤシマさんだから言うんだけどさ……。

 理由は言えないんだけど、パーティーは出ない方が良いよ。

 これ、他には内緒にしといて。」


 え?


「それじゃあ、まだ納品があるから、また今度ね。」


 彼女は私に挨拶して、何か書類を持って誘導員の方へ行ってしまいました。

 彼女が『パーティーには出るな』と言った真意は分からず、釈然としないままグループの所に戻ってきました。

 気づくと、どうもクラーヴ先輩の顔色が悪いです。彼女の傍に寄って話しかけます。


「先輩、ちょっと顔色が良くないですよ。」


「あ、ああ、大丈夫……。」


 そういう彼女の顔色は悪く、何やら汗もかいていらっしゃいます。


「グループ長。クラーヴ先輩が調子悪そうなので、医務室へ連れて行きます。

 検品はもう少し先ですよね?」


「ん? ……確かに、あまり体調が宜しく無さそうだね。

 医務室に連れて行ってあげなさい。」


 先輩を医務室に連れて行く最中、先輩が小声で私に話しかけてきました。


「ヤシマさん。検品の後は、多分パーティーにはならないと思う。

 貴女も休んだ方が良い。」


「一体、どうしたのですか?」


 クレーネンさんといい先輩と言い、パーティーは出るなって、どういうことなのでしょう。


「さっき持ち込まれたコンテナだけど……。

 どう見ても、昨日貨物ヤードでゴミから再利用品を回収した残り滓のコンテナだった。

 私が昨日コンテナに付けた目印が、そのままだったから。」


 ってことは、自治政府側はゴミの残り滓を持ち込んで、宇宙軍に処理させようとしてるって事!?

 だから、処理施設長のクレーネンさんがコンテナの持ち込みを……。このままいくと検品時にそれが発覚して……パーティーどころじゃ無くなるわね。

 パーティーは監察官……第四皇子の肝煎りで開かれるって事だから、大騒ぎになりそう。

 想像するだに、恐ろしい事になりそう……。だからクレーネンさんは、私に『出ない方がいい』って……。


「ひ、ひとまず、先輩は医務室で休んでいてください。」


 そう言って、先輩を医務室に連れて行きました。何が起きるか想像して、私も気分が悪くなったので、私も医務室で休んでいたのですが、グループ長から電話で呼び出されて格納庫に戻りました。

 結局、コンテナの運び込みが終わる頃に政府の高官がやって来たため、受け取りは先に書類上で済ませたのですが、後で検品した所、45000食はコンテナ3台に全てレーションパックで納品されていたのと、残りコンテナ6台は全て宇宙軍が出したゴミの残り滓でした。

 それを知った殿下が怒り狂い、結局パーティーはお流れに。

 殿下は私達総務経理グループに事後処理を押し付けるよう命令されました。

 押し付けられても、最終処分をどうするか、上の方で政府と話し合ってもらわないとどうしようも無いので、そのままゴミは格納庫に置いたままにしましたが。



 翌日、殿下と政府高官の話し合いの結果、ゴミの残り滓の最終処分と、クーロイで調達できない分の食糧手配は、宇宙軍で行う事になりました。

 つまりこの仕事は総務経理グループに回ってきます。

 案の定、ゴミの方は私の所に回ってきました。

 クーロイ星系で元々出ているゴミの最終処分は、一部が星系の駐留艦隊に委託されているという事で、駐留艦隊に確認しました。

 しかし駐留艦隊は数百人の監視部隊で、輸送船も小型のものしか無く、大型コンテナ5台分のゴミを日々最終処分するのは難しいとの回答でした。

 食糧についても、クーロイ星系で調達できるのは必要量の4割。しかも全てレーションパックになるそうです。しかし、司令部からの命令は『まともな食事を』という事です。

 つまり、ほぼ全量を他所で調達しなければなりません。

 という事は……一番近いハランドリ星系で、ゴミの最終処分と食糧購入の交渉をしなければなりません。クーロイとハランドリ間の通信は宇宙軍自身が封鎖しているので、直接行っての交渉が必要でしょう。


 結局ハランドリ星系に赴く交渉チームが組まれるになりました。

 責任者は参謀グループの副参謀長ですが、メンバーとしてグループ長と数人の先輩、そしてハランドリ星系出身の私も駆り出されました。

 それは、『どこかで時間を取らせるから、一度実家へ帰ってくると良い。』とのグループ長の御配慮でした。


 ハランドリ星系へ移動し、まずは星系自治政府の高官へ交渉の挨拶をします。

 挨拶の後は、そのまま交渉の場に移りました。

 こちらからは、クーロイ星系でのゴミの引き受けと食糧供給を依頼しました。

 しかし我々第7突撃部隊の一部、1000人程の部隊が既にハランドリ星系に駐留し、哨戒活動をしています。星系政府は彼らの食糧供給とゴミの引き受けを行って貰っているようで、そこにクーロイ星系分の引き受けをすれば、単純に今までの3倍となってしまいます。しかも、駐留期間がいつまでになるか、確定した情報はありません。

 流石にそれを追加で無償提供することは出来ない、とハランドリ星系政府から回答がありました。

 しかしハランドリ星系には、小さいとはいえ居住可能惑星があり(今この場で交渉しているのも惑星上です)、人口は数百万規模で、星系政府予算はクーロイ星系の比ではありません。

 一方、クーロイ星系駐留軍の食糧、ゴミの問題は喫緊のものです。つまり、政府側がこちらの足元を見て、突撃部隊の予算からどれくらい対価を引き出せるか、という交渉に入ったのでしょう。

 結局、民間業者へ依頼する際の相場よりも少し色を付けた金額で妥結することになりました。



 交渉妥結後、副参謀長やグループ長、先輩方は、こちらの星系の駐留艦隊との情報共有の会議だという事ですが、下っ端の私にはお休みを下さり、実家に帰る時間ができました。


「帝都で働くんだと言っていた娘が、仕事でこんな田舎に戻って来るなんてね。

 宇宙軍も大変だね。」


 実家へ帰るなり、母がそう言います。

 帝都の大学に進学してから、長期休暇でしかこっちに帰っていませんでしたからね。


「任務の内容は言えないけど、いまこっちの方に赴任してる。

 今日は偶々ハランドリに任務で来てて、少し休みを貰ったから帰ってきたの。」


「ふーん。そうなのね。しばらくこっちに居るの?」


「明後日には、今の赴任地にまた戻る事になるわ。

 今のところは赴任期間がどのくらいになるかわかんないんだけど。

 毎日ゴミ処理の事ばっかりで大変。経理で入ったはずなのにー。」


「仕事で専門外の事ばっかりやらされるなんて、よくある事よ。

 頑張んなさい。

 まあ、この辺の星系はどこも、ゴミの扱いは厳しいからねえ。

 今封鎖されてるクーロイなんかは特に厳しいけど、その政策が良さそうだって、今ではハランドリでも浸透してるわね。」


 ……そうだった。

 そういえば、なんか小さい頃に、そんな政策キャンペーンだったかな? があったよね。


「えーと、何だっけ。なんか標語があったよね。

 最近あまり街で見なくなったけど、小さい頃はあちこちに掲げられてた気がするんだけど。」


「確か……『カエサルの物はカエサルへ』だったかしら。

 不法投棄とか、ゴミの捨て方が駄目な場合は、捨てた人の所に全部突き返すって運動だったわよね。」


「あ……あ、ああ! それよ! それだったのよ!」


「なあに、ミレーヌ。いきなりそんな素っ頓狂な声を上げて。」


 クーロイのゴミの騒動、正にそれよ!

 自治政府がやってたのって、結局それだったのよ!



宇宙軍の中で、少々……いや、かなり、しわ寄せを食らった人の話でした。

閑章はここで終わりです。

本編10章は鋭意作成中です。出来上がり次第UPします。



いつもお読み頂きありがとうございます。


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よろしくお願いいたします。

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