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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第9章

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9-10 追悼式典、その長い一日(5)

視点を変えながら話は進んでいきます。

(ケイト視点)


 3区での式典中、どうにかして抜け出そうと思ったけど……警備隊はともかく、時々近衛隊が周囲を巡回していて、なかなか抜け出せない。

 そうこうしている内に時間が過ぎていく。


 焦る中、いきなり宇宙服の中に隠したディスプレイに、テキストメッセージが飛び込んできた。


『2分後に、軍の突入隊がこの会場に突入予定』


 ……ピケットさんかしら。それともレイエスさん?

 私が抜け出すタイミングを指示するよう、ピケットさんが手配してくれたみたい。これに賭けてみましょう。


『10秒前。揺れに注意』


 しばらくしてもう一度メッセージが飛び込んできた。

 タイミングを合わせて……えいっ!


 ジャンプした途端。いきなり式典会場が揺れる。

 見ると、コロニー外殻を突き破って何かが飛び入ってきた。あれが、軍の突入部隊!

 周りは皆、揺れに崩れ落ちたり倒れたりしている。今のうちに式場を後にして、メグちゃんの所に行かなきゃ!



 ゴミ捨て場のコンテナエリアに入って行った。ここは警備隊があまり居ないエリアだと、こっそり行政長官が教えてくれた、

 この中の入り組んだ通路の先に、目的のコンテナ……いつもメグちゃん達と会っていた会議室へ続く、床の隠し扉がある場所がある。

 誰も着いて来ていない事を確認してコンテナの中に入り扉を閉め、床の扉を開けて中に入る。

 エアロックは切られていて、そのまま奥の会議室に入ると、以前のように会議テーブルや椅子は置いておらず殺風景な部屋になっていた。


 式典用の回線から聞こえるのは、参列者達がパニックを起こして逃げ惑うのを軍の突入部隊が追いかける様子や、警備隊と突入部隊の諍い。それから行政長官が拘束され、指示系統を失った自治政府スタッフが混乱している様子。


 追手はまだ来ない様ね。

 私は入った事の無い会議室奥の扉を開け、管理エリアに向けて走り出した。



 会議室から管理エリアへは真っ直ぐ通路が続いていると聞いていたのだけど、さっきの突入部隊の影響からか、壁や瓦礫が通路に散乱して走れない。

 それでも瓦礫を避けたり乗り越えたりしながら管理エリアに向かっていると、回線の向こうは混乱が収まってきた様子。

 聞こえる様子では……突入部隊の手によって参列者達は会場に戻され、マスコミの記者たちは機材を没収され……そして、会長や事務局メンバーが突入部隊に拘束された様子。


 ごめんなさい、会長、みんな。

 今は、まだ……。



*****


(??? 視点)


「こちらサードフライ。

 第1小隊および第2小隊。状況を報告せよ。」


『こちら第1小隊、F通路を進行中。

 瓦礫が多く、迂回路を探しながら進行中であり、まだ目標地点まで三分の一。』


『こちら第2小隊、K通路を進行中。

 瓦礫の少ないエリアに到達。これから進行速度を……な、なんだああ!!!』


「第2小隊、どうした!」


 通信の先からは、瓦礫が崩れる様な大きな音がする。


「第2小隊、応答せよ!

 第2小隊!」


『……こちら第2小隊。副隊長が代理で応答中。

 足元に仕掛けられた重力パネルが作動し、上から大量の瓦礫が落ちて来た。

 隊の7割が巻き込まれた模様。死者は居ないが、小隊長含め負傷者多数。

 本小隊は作戦続行不可能。救援を求む。』


「くっ……。了解した。後詰を救援に向かわせる。

 第6小隊、第2小隊の救援に向かえ。

 第3、第4、応答せよ。」


『こちら第3小隊。コロニー外殻の外側を進行中。コロニーの半分の地点には到達したが、デブリがこちらを狙って飛んでくる。

 遮る物が無く、危険なためこれ以上は進行不可能。

 こちらの位置をレーダーで察知してデブリを飛ばして来るものと推測。

 回避不可能。撤退の許可を求む。』


『こちら第4小隊。第3小隊と反対側の外殻を進行中だが、こちらも同じく、隊員を狙ってデブリが飛んでくる。

 進むほどデブリの飛来する頻度が上がり、これ以上は危険。進行不可能。

 撤退の許可を求む。』


 ……くそっ。奴等、中々やるじゃないか。

 捕まえて、きっちり報復してくれる!


「第3小隊、第4小隊。共に撤退を許可する。

 最大限安全に留意しろ。」


『こちら第3小隊、了解。ただ今より撤退を開始する。』

『こちら第4小隊、同じく了解。撤退を開始する。』


「第5小隊、状況はどうか。」


『こちら第5小隊。N進路を進行中。

 こちらも通路に瓦礫が多く進行速度が遅いが、前方から足音を計測。

 距離は我々の先25~30m、音から対象は1名。恐らく最優先対象者と思われる。

 瓦礫の撤去速度を上げる為、大型武器および火器の使用許可を求む。』


「こちらサードフライ。

 第5小隊、大型武器および火器の使用を許可する。

 ただし、くれぐれも最優先対象者は生かして捕えよとの命令だ。気を付けて使用してくれ。」


『第5小隊。了解した。

 対象者確保のため、瓦礫の撤去速度を上げる。』


『こちら第1小隊。応答願う。』


 ん?

 第1小隊からも連絡が入った。


「こちらサードフライ、第1小隊、応答せよ。」


『こちら第1小隊。

 F通路で落石の罠に遭遇。回避はしたが、道が塞がり通れなくなった。

 横道を通って別の通路で目標地点へ向かう。

 移動速度を上げる為、大型武器と火器の使用許可を願う。』


「こちらサードフライ。

 第1小隊、大型武器および火器の使用を許可する。

 迅速に、目標地点へ向かえ。ただし最優先対象者を見つけたら、生かして捕えよ。

 火器で殺害しない様、充分に留意せよ。」


『第1小隊、了解。』



*****


(???視点)


 俺達は明かりを点けずに、暗視ゴーグルで前方の様子を静かに伺う。


「ターゲットの様子はどうだ。」


「通路の奥へと歩いています。瓦礫が多くて、走りづらいのでしょう。」


「ここからターゲットの場所まで、どれくらいで行ける?」


「およそ25m。大斧で瓦礫を吹っ飛ばしながらなら、1分。」


「……ちょっと待って下さい。

 ターゲットの更に向こう側、ここから50mくらいの場所に電波探知で反応有り。

 向こうからも誰か来るようです。」


「向こうとの接触前に確保せよ、との命令だ。

 仕方ない。

 ダレス、ターゲットの狙撃準備。」


「構わないので?」


「殺すなとの命令だ……足を狙え。

 お前のタイミングで撃て。

 総員、ダレスの狙撃を合図に、ターゲットまで全速突破開始。」


「「「「「了解。」」」」」





*****



(主人公視点)


「マルヴィラお姉さん、ケイトお姉さんが1人でこっちに向かってる。たださっきの衝突で瓦礫が散乱して、一部通路が塞がってるみたい。

 お姉さんの場所はそこから一本左に入った、並行の通路の先だよ、」


『わかったわ。

 ニシュ、急ぎましょう。』


 もうちょっとしたら、お姉さん達合流できるか……。


『メグ、外から来る連中にはデブリを飛ばして撃退した。

 もう少し様子を見るが、しばらくして戻ってこなければ、そちらに戻る。』


『俺の方もだ。奴等はゴミ捨て場の所の艦に戻っていった。

 こちらももう少し様子を見る。』


「小父さん達、お疲れ様。」


 グンター小父さんとライト小父さんの方は大丈夫みたい。


「マーガレットさん!」


 准尉さんが慌ててる。


「このM通路の向こう側で、何か今動いた気がする。

 あちら側にカメラとか無い?」


 准尉さんが、別のカメラを見て話しかけて来た。

 調べてみるけど、その光ったというM通路の奥に設置したはずのカメラから反応が無い。壊れたか、壊されたか……。


「セイン小父さん、M通路の奥で何か動いたらしいんだけど、そっちにカメラ付きのロボットいる?」


『M通路……その通路は、さっき仕掛けが潰された。

 裏で仕掛けをさせていたロボットが巻き込まれて損傷してしまって、そっちを探れない。恐らくだが、追手がその通路に居ると思う。

 マルヴィラさんも、充分気をつけて。』


『セインさん有難う。』


『……繋がるかしら。

 メグちゃん、聞こえる?』


「ケイトお姉さん!」


 やっぱりケイトお姉さんだった!


『今そっちに向かっているわ。

 メグちゃん達の脱出先の情報を預かっているの。』


「今、マルヴィラお姉さんとニシュがそっちに向かってる。

 丁度、脱出先の事でお姉さんに話をするために行ってたの。」


『ケイト、今そっちに行くわ。

 後ろから追手が来ているみたいだから、ケイトも急いで。』


『メグちゃんもマルヴィラも、元気そうで良かったわ。

 ……後ろ、静かだけど、追手が来ているのね。

 それじゃあ、急ぎま……』


 チューーーーン! 

 突然、聞きなれない音がケイトお姉さんの通信から響く。


『……ぐ、うっ!』


『ケイト!?』

「ちょ、今の、お姉さん!?」



いつもお読み頂きありがとうございます。


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