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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第8章

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8-04 いざ採掘場へ

 航法コンピューターのロック解除用のクイズの件でかなり頭を使ったので、一旦休息をとって、採掘場に行く準備とか練習をしようとなった。

 本当はすぐ準備を開始する予定だったけど、かなり重い情報が多かったからね。


 休息を取った後、採掘場へ降りる為の段取りの確認。

 ダクトから荷物を運んだり、人を運んだりする秘密兵器のお披露目と、練習もしてから、明日に備えて早く寝る事にした。

 その日は小父さん達もお酒飲まないでね、と言ったら『そんな気分にもなれん、今日は早く寝る』って言ってたから、大丈夫だと思う。



 翌日、いつもより早起きして、私達が採掘場行きの為に準備していたアレコレを工作室から出して、それを一つの大きな台車に載せる。

 それから他の積み荷……昨日作った冷凍の食事、水タンク、調査用の道具なんかを台車に載せていると、中尉さんと准尉さんが起きて来た。


「何か手伝うか?」


「おはよう、中尉さんに准尉さん。もう終わる所だから大丈夫。」


「結構大きな台車だけど……取っ手というか押し手が付いて無さそうだし、向こうまでどうやって押して行くの?」


 用意したのはそこそこ大きな台車だけど、人が押したりするための取っ手はついていない。

 准尉さんは、これをどうやって動かすのか心配になったのかな。


「この台車は追従モードにすれば、前を歩いて行けば台車が勝手について来るように出来てるの。頑張ってうんしょうんしょって押して行かなくても大丈夫。」


「大きな工場や工事現場でたまに使われている奴だな。そんな便利なものがここにあったんだな。」


「私と小父さん達で作ったの。」


「「え?」」


 なんか2人に驚かれた。


「水処理とか、ゴミの再利用処理装置とか、あちこちを毎日点検して回るのに、山ほど工具を持ち歩くの大変じゃない。私も小さい頃から手伝ってるけど、重い工具なんか持てなかったし。

 だからこんなの欲しいってアイディア出して、皆で作ったの。

 名前は『ツイテクルン』。結構便利よ。」


「へ、へえ……。」


 2人が若干引いてる気がするんだけど。

 やっぱり、名前が変?

 ライト小父さんにも『その名前は変じゃないか』って言われたけど……可愛い名前だと思うんだけどな。



 みんな起きてきて、全員で朝食を食べたら採掘場行きの準備。

 と言ってももうこっちの荷物の準備は終わってるから、歩いてゴミ置き場へ向かうだけ。

 ツイテクルンは私達の準備した荷物を載せた1台と、その後ろに空荷の1台が付いて来てる。空荷の方は、中尉さん達が来た時に床下に置きっぱなしにしてる荷物を載せる為のもの。


 エレベーターへの通路の前にある監視カメラを、またオクタを使ってハッキングしてから、中尉さん達の持ってきた荷物を台車に載せて、皆でカメラの奥の通路へ。


「さて、それではまずは、エレベーターの制御室へケーブルの端を持って行くんだったな。」


「それはセイン小父さんと私が、オクタを使って作業するから。中尉さん達は、他の荷物を小分けに積めるように準備してて欲しいの。

 グンター小父さんとライト小父さんは、例の台車の準備をお願い出来る?」


「ああ、了解だ。」


 こっちが立てた手順はこうだ。

 まず、オクタがケーブルをエレベーターの所まで引っ張っていく。次に、そのケーブルを辿って、ダクトの中に、用意した秘密兵器……ケーブル追従型の小型台車を何度も通す。

 この小型台車は、先に通したケーブルを自動的にたどって勝手に荷物を運ぶよう作った、ツイテクルンの応用型。こっちには『タドルン』って名前を付けてる。

 中尉さんや准尉さん、私とニシュも、ダクトの中をこの台車で運んでもらう。

 荷物を全部エレベーター側に運んでから、ケーブルの先を制御室へ持って行き、制御端末に接続する。このケーブルは、こっち側の端は管理エリアと繋がる通信機に接続する。つまりこのケーブルは、採掘場に降りた私達と、小父さん達で通信するためのもの。

 中尉さんは最初、「荷物を運びにくくなるから」と、小分けにした荷物を人手で運び、最後にケーブルを通すつもりだったらしい。でも人が何度もダクトの中を往復すると、警備ロボットに気付かれた時が危ない。そう思って私達の作ったこのタドルンを見て、中尉さんは意見を引っ込めた。


 オクタを使ってケーブルの先端を、あまり音を立てない様、慎重にエレベーターの方へ持って行く。

 何とか1時間ほどで持って行くことが出来たら、そのままオクタはエレベーター制御室に入り、部屋の電源と端末の電源を入れ、エレベーターのドアを開ける。エレベーター内の照明はOFFのままだ。


 次に、台車を使って中尉さんにエレベーターへ向かってもらう。

 中尉さんの次に准尉さんも向かってもらう。2人には、ダクトからエレベーター内への荷下ろしと、向こう側の警戒をお願いすることになる。


 タドルンは上開きの四角い型に、端に車輪が付いている小さい台車。荷物は小分けにしたものを1台ずつで運ぶんだけど、人が乗る時には間をあけて7~8台が連なって、横倒しになった人を支えて走る。つまり、ダクトの中を寝ながら走ることになる。

 ダクトは時々直角に曲がるので、運ばれる人はただ寝ていれば良い訳ではなく、曲がる時には台車の上で寝返りを打って、通路を曲がる方向に体を曲げないといけない。

 台車が直線と同じスピードで曲がってしまうと、乗ってる人は対応できないから、曲がる時は大きくスピードを落とす。乗ってる人はスピードを合図に対応するのだ。


 昨日の会議の後、狭いダクトの中で曲がる練習を中尉さんと准尉さんにやってもらった。私とニシュは事前に練習しているので、会議室の中に作ったテストコースで、2人の前で実演した。

 その後、中尉さんと准尉さんに交互に練習して貰ったけど、中尉さんはテストコースを2回くらい走ればコツを掴んで、3回目には自力でクリアしてた。准尉さんはちょっと時間が掛かって、10回目でようやくコツをつかんだ。


 その後、ダクト内をタドルンによるバケツリレー形式で荷物を運び、最後にニシュと私が、タドルンでエレベーターに向かう。

 エレベーター側に着いたら、オクタを使ってケーブルの先端を制御室内の端末に接続して、オクタも一緒に下に降りる。


「メグ、気を付けてな。」

「何か問題があったらすぐに連絡するんだよ。」

「何もなくても、1日1回は必ず連絡してこいよ。」

「メグちゃん、無理しないでね。

 中尉さんに准尉さん、ニシュ、メグちゃんを宜しくお願いします。」


「小父さん達、マルヴィラお姉さん、有難う。それじゃあ行ってくるね。」


 中尉さんも小父さん達に話す。


「マーガレット君は責任を持って私達が守る。何かあったら皆さんに連絡する。

 皆さんも気を付けて。

 特にあっち側の変な動きがあったらすぐに教えて欲しい。」


 皆と通信をしつつ、軌道エレベーターの座席に座って、シートベルトを締める。


「下に着くまで多分数時間かかる。

 加速度が落ち着いたら、准尉もマーガレット君も寝ておいた方が良い。

 では、行くぞ。」


 そう言って、中尉さんは壁際のパネルを操作する。途端にエレベーターは下に落ち始める。

 体中の血が頭に集まるような、初めて感じる浮遊感が。

 こ、これ気持ち悪いぃぃぃぃ・・・・・!




 どんどん加速して落ちていく感覚は怖かった。

 勿論体はしっかりとシートベルトで座席に固定されていたけど、怖いものは怖い。

 でもその内慣れてきて、途中で落ちるスピードが一定になって落ち着くと、代わり映えもせずに過ぎる時間に段々退屈になってきた。


「この状態が3時間は続く。2人ともトイレに行って寝ておけ。

 何かあったら起こしてやる。」


 中尉さんが声をかけてきた。見ると准尉さんがちょっとソワソワしてた。

 軌道エレベーターは移動に時間が掛かるから、中にトイレがあるのだ。


 准尉さんはシートベルトを外し、エレベーターの隅にあるトイレへ入って行った。

 しばらく経って、准尉さんが出て来てから私も入った。用を足して席に戻り、シートベルトを締め直したら、そのうち寝てしまった。




 急に上に引っ張られるような感覚があって目を覚ました。

 気付くとまだエレベーターの中だったけど、段々と落下速度が減少してきている。

 もう少ししたら地上かな?

 准尉さんに目を向けると、座席でシートベルトを締めたまままだ眠っている。


「准尉は初めての現場だ。緊張や疲れがあったんだろう。

 下に着いてから起こすから、彼女はもう少し寝かせてやってくれ。」


 後で聞いたけど、准尉さんは、実はタドルンで真っ暗のダクトの中を移動するのが怖かったらしい。それもあって疲れてたんだって。

 帰りにもう一度、あのダクトを通らないといけないんだけどね。


 エレベーターの速度は30分くらい掛けて段々と減速していき……エレベーターはゆっくりと停止した。准尉さんは到着する少し前に目を覚ましている。

 中尉さんは、エレベーターの扉の横に立って警戒する。

 准尉さんと私、ニシュは中尉さんの後ろに移動する。


 扉がゆっくりと開き出す。

 扉の向こうは大きな広間になっている様子。ただ、人もロボットも動いている気配は無さそう。しばらく待って動きが無いので、中尉さんが外の様子を確認し、問題無さそうなので全員で外に出る。

 降りた先は10m×10m、高さ10mくらいの大広間になっていて、エレベーターの扉は広間に面した壁、広間の床から5m位の場所にある。扉の前には踊り場があり、そこから広間の床へ降りる緩やかな大きなスロープが壁に沿って続いている。

 使われていないせいなのか、踊り場からスロープから大広間の中まで、埃が一面薄っすらと積もっている。

 惑星の重力は低いらしく、この場所も上に比べると重力が低い。そのせいか空気が薄くて、宇宙服を脱いでは出られない。


 中尉さん達と話し合い、最低限必要な荷物だけを宇宙服のバックパックに入れる。タドルンは予備の荷物を積むけど、半分位空けた状態にしておいて、台車が私達に着いて来るよう設定する。

 スロープを降りていくと、丁度私達の出て来た扉の真下に大型の扉が見える。あれは大型の軌道エレベーターの扉だと思う。

 その扉に対して広間の反対側に、大型エレベーターの扉と同じ位に大きな扉。それとは別に、スロープを降りた真正面、広間の隅に当たる場所に人が通れる扉がある。

 大型の扉は、採掘した鉱物を大型エレベーターで運び出す為の、機械や台車などが通るもの。小さい扉の先は採掘場を管理する人員が滞在していたエリアだそうだ。

 中尉さん達、事前にここの構造を調べて覚えてきたんだって。


 操作パネルは生きているので、人が通る用の扉を開ける。扉の向こうはエアロックになっていた。

 エアロックの中で、向こう側に合わせて空気が充填され、重力も段々とコロニー上と同じ値に近づいて行く。空気と重力が変わったところで、宇宙服を脱いで向こう側のエリアに入る。

 手前から、人が寝泊まりするための個室が10部屋、工具室、会議室などがあり、一番奥にコントロールルームがあるようだ。

 採掘場では、採掘作業も運び出すのも全てロボットが行うらしい。人がやるには危ない作業だし、ロボットが行う方が効率も良い。人の役目は採掘場がちゃんと動いているか監視したり、トラブルの原因調査したりという仕事で、それでも数人居れば採掘場は運用できるそう。

 だから、寝泊りする部屋が10部屋しかないが、これで十分運用だったらしい。

 個室を覗いたけど、どの個室もベッドは埃が積もってて、ここで寝るには掃除が必要そう。

 工具室は、工具が錆び付いていて使い物にならなかった。

 会議室は、机も椅子も残されてたけど、埃がかなり積もってた。


 コントロールルームの扉を開けると、一種奇妙な光景があった。


 入って左側の壁全体には何か図面が表示されていて、その中を緑や黄色の光点が明滅したり動いていたり、また採掘量を思わせる数値が表示されていたりする。

 その前には、操作端末の付いた机が幾つかあるけど、端末は動いていない。

 しかし部屋の一番右中央には大きな机があり、この机の端末だけは動いている様子。そしてその机の椅子は取り払われ……その椅子のあるはずの場所に、1.5m立方の大きな金属の箱がある。

 その箱からは、先ほどの図面を映しているであろうビデオカメラが1台と、そして端末に繋がる線がいっぱい出ている。


 何か音がしたので見ると、その箱の上が開いてもう1台ビデオカメラがせり出してきて、こちらを向く。そしてその箱から女の人の声がする。


「おや、こんな所に人が来るとはね。

 あなた達は誰? こんな場所に何の用だい?」



いつもお読み頂きありがとうございます。


ブクマや評価、感想、いいねなどを頂けると執筆の励みになります。

よろしくお願いいたします。



『ツイテクルン』や『タドルン』には元ネタがあります。

「かもーん」「ひもーん」で検索してみてください。


正直、このネーミングセンスはどうかと思いますが。

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