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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第7章

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7-09 お姉さんがやって来た!

主人公視点です。やっと……。

 お姉さん達と手紙のやり取りをしながら、採掘場調査の準備をした。

 

 まずは、採掘場とここの間で連絡を取りあうための通信機。

 惑星表面との無線通信だとそれなりに出力が必要で、それに電波が強くて傍受される可能性があるという事で、有線通信機を2台作った。

 これはエレベーターのこっち側と下側の管理端末に接続して、管理用の回線につなげて通信を行うためのもの。軌道エレベーターの管理端末で惑星側と繋がっている事が確認できているから、その回線を流用することで採掘場とエレベーター管理端末の間で通信出来そう。

 あとはその通信回線をいつも使ってる暗号回線で管理エリアまで飛ばせば、管理エリアと採掘場の間で通信できるってわけ。

 通信で使うケーブルは、手持ちの配線では長さが足りない。そもそもここでは配線は貴重品だし、何かあった時のため使い切る訳にはいかない。調査する人に持ち込んで貰うようお姉さんにお願いした。


 他にも幾つか作ったけど、一番時間が掛かったのは料理。

 料理が作れない小父さん達から、私が採掘場に降りる前に料理を作り置きして欲しいと懇願された。

 ……まあ料理の味を知ってしまったら、今更レーションパックに戻るのは我慢できないと思う。それしかないなら仕方ないと思うけど、私も多分無理。

 幸い、ケイトお姉さんがゴミ回収の時に追加で3人程連れて来るようになって、冷凍食品や調味料の差し入れが大分増えた。その差し入れを使って、いつもの食事の時にかなり多めに作って、余った分をもう一度冷凍する。

 作り置きは私が持って行く分だけじゃなくて、小父さん達の分もある。

 小父さん達ってお酒飲むと普段より食べるから、足りるかどうかわかんないけどね。




 そうして準備を進めて、採掘場調査の人が来る当日。

 前の物資補給と同じように、シャトルで大きな機械――ゴミコンテナから使える物を選別・回収する機械が2台運び込まれて来た。

 今回は床に穴を掘って隠れるのではなく、機械から吸い込み口がコンテナに突っ込まれた時に、回収しなかったゴミの残り滓と一緒に、そのコンテナに荷物と共に忍び込む事になってる。

 3人はそのまま、機械が帰って行くまでコンテナのゴミの中に待機して、機械や警備の人達が帰ってから合流するって手筈になっている。


 エアロックに繋がる会議室にコンテナ置場の各所の監視カメラのモニターを設置して、小父さん達やニシュと待機していたら、エアロックに誰か入ってきた様子。

 小父さん達と警戒していたら、会議室の扉がスッと開いた。


 そこに現れた人物に、思わず私は駆け寄った。


「マルヴィラお姉さん!」


「メグちゃん! 久しぶり!」


 ダッシュで駆け寄ってお姉さんに文字通り飛び着く。マルヴィラお姉さんはしっかり抱き留めてくれた。


「お姉さん、来てくれたの嬉しい!」


「……私もメグちゃんに会えて嬉しいわ。

 ケイトも会いたいって言ってたけど、ケイトは今、どうしてもあっちを離れられなくてね。」


 ふと、お姉さんの後ろに見慣れない人が2人いるのに気づいてギョッとした……マルヴィラお姉さんに会えたのが嬉しすぎて、あと2人一緒に来てたのを忘れてた。

 後ろにいた男の人と女の人、どちらも目を丸くしてる。


「えっと、後ろの人達は?」


「そうそう。紹介するわね。

 男の人がランドル・モートンさん、女の人がナナ・カービーさんね。メグちゃんのおばあ様やケイトと一緒に働いている人達よ。

 この2人が、今回採掘場の調査の為に来た方々よ。」


「軍情報部所属、ランドル・モートン中尉です。宜しくお願いします。」

「同じく軍情報部所属、ナナ・カービー准尉です。宜しくお願いします。」


 2人は軍隊式の敬礼をする。

 ランドルという男の人は、ライト小父さんと同じくらいの背格好でブラウンの髪をした若い男の人。

ナナさんという女の人は、赤い髪をショートカットにした、ケイトお姉さんより少し背の高いキリっとした雰囲気の人。でも私を見て微笑んだ顔は柔らかい。


 2人とも、敬礼の後、両手を顔の横に持って来て掌をこちらに向けている。武器は持っていないっていうサインらしい。


「グンター・シュナウザー。元準軍属だ。」

「ライト・ミヤマ。俺も元準軍属。よろしく。」

「セイン・ラフォルシュです。元自治政府所属です。」


 小父さん達も挨拶しているので、私もお姉さんから離れて2人に自己紹介する。


「私はマーガレット・ルマーロ。

 元自治政府職員の父ライノ・ルマーロと、元看護士メリンダ・カートソンの間に産まれた娘です。」


 ニシュから習ったマナーを生かして、きちんと2人に挨拶する……マルヴィラお姉さんに飛びついた姿を見られているから、今更なんだけど。

 2人とも私の挨拶に目を丸くしていた。私の挨拶、何か変だった?




 そのまま、会議室で打ち合わせになった。

 中尉さん――小父さん達がそう呼んでたから、私もそれに倣う事にした――が説明した調査プランでは、まずは管理エリアのコックピットにある航法コンピュータと17年前の記録のプロテクトについて調査。その後、採掘場に降りてエレベーター周辺の調査をした後、その調査の結果を一度3区に持ち帰って、必要な準備をした後に再度採掘場の調査に降りる、と言う内容だった。

 私に期待してるのは、オクタ――蜘蛛型ロボットの遠隔操作による採掘場の周辺調査の協力という事らしい。


 でも中尉さんに准尉さん。

 こちらからも条件を付けさせてもらうね。


「えっと、こちらからも条件を付けさせて下さい。

 中尉さんと准尉さんの管理エリア内での行動は、小父さん達か、私とニシュの帯同をお願いします。

 特にコックピット内に入る場合は、全員の帯同を条件とします。」


「それは当然でしょう。受け入れます。」


 2人は頷いてくれたから、これで懸念していたことの1つは大丈夫そう。


「マルヴィラお姉さんは、下に一緒に降りるの?」


「中尉さん達から説明を受けたけど、私はあのダクトを通るのは無理そうなの。

 3区に残って3人の世話をしながら、ケイトと手紙で連絡を取り合うわ。」


 えー、それは残念。


「世話って言われても、マルヴィラさんに世話されるようなことは……。」


「あらそう?

 メグちゃんが下に降りたら酒のつまみになる物ばかり食べるんじゃないかって、他ならぬメグちゃんから相談を受けたんですけどね。」


「うっ……。」


 小父さん達がお姉さんに言い返されて目を逸らしてる。

 お姉さんが一緒に行けないのは残念だけど、小父さん達を見てくれるなら、小父さん達の事は大丈夫ね。


「貴方達に危害を加える積りは無いが、念のために貴方がたに武器を預けておこう。」


 そう言って、中尉さんと准尉さんは銃をテーブルの上に置く。

 意味が分からなくて小父さん達やお姉さんを見るけど、皆目を丸くしてる……預けられても、どうしていいか分からないんだけど。


「……俺達が持っててもしょうがないぞ。」


「そうは言っても、君達に危害を加える積りがないのを示すには、こうするしかない。」


 グンター小父さんと中尉さんが話してるけど、これじゃ平行線だね。


「……じゃあ、ニシュが持ってて。

 どの道、あなたから無理やり奪うなんてことは出来ないでしょ?」


「メグさんが言うなら、判りました。」


 ニシュが私の後ろから進み出て、中尉さんと准尉さんから2丁ずつ拳銃を受け取る。下に降りて必要になったら、2人に渡せばいいか。

 これでプランについては大まかな所は話せたかな?




「それじゃあ、早速……。」


「ちょっと待って、中尉さん。

 あの機械にずっと潜んで来たんでしょ。

 3人とも、長い事レーションパックだけで我慢してたんじゃない?

 これから軽くスープでも作るから、ちょっと休んでてよ。

 変なもの入れないか気になるなら、後ろで見ててもいいからね。」


 いつから隠れてたのか分からないけど、回収業者さん達が3区に来るよりは長いと思う。

 3人とも疲れが見えるから、温かい食事でちょっと休んで欲しい。


「……確かに。もうレーションパックは飽きたわ。私も手伝うわよ。」


「私も手伝います!」


「大丈夫。お姉さんも准尉さんも休んでてよ。」


 疲れてる人を働かせてもいけないしね。

 



 会議室にコンロと冷凍食材、調味料を持ち込み、その場でミネストローネを作る。

 小父さん達は作れないし、ニシュには中尉さんと准尉さんを見ててもらわないといけないから、手伝いはオクタだけ。

 オクタには調味料を手元に持って来てもらったり、切った材料を別の所に持って行ってもらったり。


 その間、中尉さんはグンター小父さんやセイン小父さんと、准尉さんはマルヴィラお姉さんやライト小父さんと何か立ち話をしてた。

 何を話してたのかは、後で小父さん達やお姉さんに聞かせてもらおうかな。

 一度准尉さんの声で「可愛い……。」って聞こえたのは何だろう。



 出来上がったゴロゴロ野菜のミネストローネを、皆に振る舞う。


「久々の温かいスープは染みるわー。

 3日もレーションパックだけの食事で、じっとして過ごすのは大変。

 メグちゃん、有難うね。」


「正直、とてもありがたい。気遣いに感謝する。」


「とっても嬉しいわ。ありがとうね。」


 マルヴィラお姉さん、中尉さん、准尉さんも感謝してくれる。

 3人とも美味しそうに食べてくれてよかった。


「それで、この後はすぐ、管理エリアの調査に入るのですか?」


「いや……それは明日からにしたい。

 ひとまず、私と彼女が休める部屋を別々に用意してくれると有難い。」


「寝る場所ってこと?

 なら、管理エリアの居住区画に空き部屋があるから、そこを使うと良いぞ。

 マルヴィラさんの分も部屋はあるぞ。」


 グンター小父さんが答えてくれた。

 こっち側に残った部屋からは、使える物は全部外してしまったからね。


「マルヴィラお姉さん、今日は一緒に寝よう!」


「パジャマパーティーってこと?

 勿論良いわよ。一杯お話しましょうね、メグちゃん。」


 やったあ!




 寝る前に一度体を動かしておきたいっていうお姉さんの希望で、トレーニングルームでスカッシュをした。小父さん達は『今日は見てるだけで良い』って言うから、中尉さんや准尉さんも加えて4人で何回か遊んだ。

 中尉さんは体格的にはライト小父さんと同じくらいだけど、小父さんより俊敏でかなり上手かった。マルヴィラお姉さんも大柄な割によく動いて、中尉さんと互角の勝負をしてた。2人共、小父さん達より強そう。

 准尉さんとは私はいい勝負ができたけど、准尉さんの方が体が大きくてカバー範囲が広くて、僅差で負けちゃった。


 夜はマルヴィラお姉さんと一緒。ニシュには通路の見張り――中尉さんや准尉さんが勝手に、特に奥のコックピットに行かないように――をしてもらった。

 お姉さんとはベッドに一緒に入って、いっぱい話をした。ケイトお姉さんの事とか、3区の会の事、お母さんの事……。

 お母さんが亡くなってから、こうして誰かと一緒に寝るなんてこと無かったから……段々お母さんの事を思い出してしまって涙が出てきた。お姉さんはそっと抱きしめてくれた。


「お母さんが亡くなってから、ずっと一人寝で寂しかったのね。

 今日はこのまま居てあげるから、一緒に寝よ?」


「……うん。お願い。」


 お母さんもマンサ小母さんも亡くなって、1人で寝る様になって……こうして誰かに抱かれて一緒に寝るのは本当に久しぶり。


 ああ、そうか。私は……寂しかったのか。


 ベッドの上で、暖かいマルヴィラお姉さんに抱き締められたまましばらく泣いて……いつの間にか、そのまま意識を手放していた。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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