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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第4章

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4-05 物資の受取り作戦

投稿が遅くなりました。

今回は何度か視点が切り替わります。

(セイン視点)


 シャトル発着場からゴミ捨て場にかけて事前に設置した監視カメラ群の映像を、グンター、ライトと私の3人で手分けして確認する。カメラは順調に動いているし、ゴミ捨て場にも異常はない。

 時間的には、そろそろシャトルが来る頃だけど……と思っていると、発着場のカメラが、軌道ケーブルに反射するシャトルの前面灯の白い光を映し始めた。メグへの暗号通信回線をオープンする。


「そろそろシャトルが到着するよ。メグ、準備はいいかい?」


『了解。こっちは準備できてるし、ニシュも問題ないよ。』


「うん、それじゃあ、後はケイトさんから合図が来たらお願いだよ。私達がそっちを手伝えなくてごめんね。」


『こっちは狭いんだから、しょうがないじゃない。いざとなった時の為にニシュが居るんだし、小父さん達は気にしなくていいよ。

 じゃあ足音が聞こえてきたから、一旦切るね。』


 メグが通信をOFFにした時、監視カメラの映像はシャトルが発着場に停車し、中から警備達が降りてくる所を映していた。

 いつもは警備達の後にロボットが降りてきてゴミコンテナを運び、その後で回収業者達が降りて来る。今回はいつもと違って警備達の後にロボットが、その次に20人ほどの集団が降りて来る。ロボット達はすぐにはコンテナを降ろしに行かずに、集団が降りてから、発着場から1台のコンテナが自走してくる。

 『荷物がシャトルを降りた』とメグに文字メッセージを送る。

 

 メグは大丈夫だろうか。何度も確認をして、いざという時の為にニシュも居るから、問題ないだろうと言われているけど。

 それに、ケイトさんと今回は話せないのは残念だ……。



*****


(ケイト視点)


 VIPルームでの打ち合わせ後、何度かメグちゃん達と話し合いを重ね、結果をトム氏の使いにフィードバックすることで、手筈が整いました。

 3区のゴミを最終処理――再利用可能品を細かく仕分け、再利用不可分を裁断した上で小さく固め、恒星へ射出投棄する形に成型――する装置の小型化試作品を持ち込みます。普通は工場1棟分の大きさの最終処理設備が、コンテナ1台分に小型化され、かつ自走できるようになっています。


 今回、成型後の射出パレットを格納するスペースに、カメラ4基と外殻修理剤を入れているので、指定の場所にこの自走式最終処理装置を設置し、デモンストレーションをしている間に抜き取って欲しい、というのが今回の受け渡し内容。

 メグちゃん達を人目に晒さないため、普通に『はいどうぞ』と受け渡しすることは出来ません。そこで格納スペースの底に扉を設置し、指定場所に止まって装置を動かし始めたら、メグちゃん達に床下から抜き取って貰います。


 今回、私とマルヴィラは回収業者としてではなく、処理装置の誘導などの手伝いや、その他企業側の3区でのサポートを依頼された形で来ています。

 ですから、今回はメグちゃん達と会って取引をすることは出来ません。

 私とマルヴィラの役目は、自走式処理装置の設置位置をメグちゃん達が指定した場所に合わせる事。格納スペース底の扉の四隅とメグちゃん達の待機場所の四隅に、それぞれ極微弱な電波を出すセンサーを設置し、私とマルヴィラが装置横でそのセンサーの情報を元に処理装置の操縦者に位置修正情報を送るのです。操縦者や、この装置を持ち込む企業のメンバーの一部はトム氏の協力者だそうです。


 一部ということは、そうでないメンバーもいる訳です……。


「ケイト。いい加減、こんな遊びを止めて帰って来なさい。

 うちの会社に入っていれば、こんな真似をしなくても安泰なんだからな。」


 3区へ向かうシャトルの中でそう話しかけてきたのは、私の2番目の兄、ライアンお兄様です。兄姉の中で上から3番目に当たります。


 この試作機を持ち込んだのが御父様の会社、エインズフェロー工業だったことは、シャトルに乗って初めて知りました。ライアンお兄様は開発部門の責任者として参加しているようです。

 私が御父様の会社に入らず独立する事を理解して頂けなかった兄姉の中でも、ライアンお兄様は強硬な意見をお持ちです。


「我々も仕事で来ていますので、この場でその様な話をするのは控えて頂けますか。」


「話し合いをする前に、お前がこんな辺鄙な星系に飛び出していったからじゃないか。マルヴィラ、ケイトを引き摺ってでも連れて帰ってこい!」


 面倒なことになったとマルヴィラと顔を見合わせていると、ライアンお兄様の後ろから誰かが近づいてきます。


「部長、お知り合いとの旧交を温めるのも結構ですが、あまりシャトルの中で騒がないで頂けますか。自治政府側の視察団の方々の印象が良くないですよ。」


 近づいてきた人の宇宙服には、お兄様と同じ御父様の会社のロゴが書かれています。お兄様の会社の人が、お兄様を諫めに来てくれたようです。


「……この仕事が終わってから、連絡する。」


 そう言い残してライアンお兄様は、会社の人と戻って行きました。



 シャトルが3区に到着してから、まず警備の人達が降りていき、その後しばらくして、政府の視察団やお兄様の会社の人達が降りていきます。私達は彼らのすぐ後ろを降ります。シャトルから自走式処理装置が走って来るのが見えました。

私とマルヴィラはこの処理装置の誘導係をお兄様の会社側から依頼されている形になっているため、処理装置の前に回って、ゆっくり目印の方へ誘導していきます。センサーから送られてくる情報は宇宙服内部のディスプレイに表示されるようにしているので、それを見て微調整をしながら誘導します。


 操縦士の方は私から送る情報をもとに、指定の場所に処理装置を設置させます。装置の自走が止まると、ロボットは装置のゴミ取り込み口の近くに古いゴミコンテナを設置します。

 これからは会社の人達が視察団にプレゼンする時間ですから、私とマルヴィラは装置の後ろの方、射出パレット格納スペースの方まで下がります。

 プレゼンがスタートし、一通り装置の説明がされた後で実演が開始されます。ロボットがゴミコンテナの入口を開け、装置の取り込み口がその入口の中へと伸びていきます。そうして装置が動き始め、ゴミを取り込んでいく音がしてから、私は足の爪先で床を3回叩きます。

 さあ、メグちゃんの出番ですよ。



*****


(メグ視点)


 ケイトお姉さん達の合図があるまで、私達はゴミ捨て場の床下に待機してた。

これは今回の事で無理矢理作ったスペース。十分な広さを確保できなかったので小父さん達は遠慮して貰って、私とニシュだけが入った。


 じっと待っていると、コンコンコン、と床が小突かれる音がした。これがケイトさんの合図の筈。

 それじゃあそろそろ、こっちも動きますか。


 宇宙服のライトを点けて、上に繋がる扉を開ける。扉を開けると30㎝位先に処理装置の格納スペースの床面に作られた扉。位置もこっち側の扉にぴったり合っている。

 こっちと装置の間の隙間から外を覗くと、明るくなっているゴミ捨て場の光と、両側の割と近い所に立っている人の足が見える。あれがケイトお姉さんとマルヴィラお姉さんかな?


 格納スペース側の扉には円形のハンドルが付いているので、それに手を掛けて回して扉を少し開け、様子を窺うけど、向こう側も真っ暗なのでこのままでは様子が分からない。思い切って扉を開けて中に入る。

 格納スペース内をざっと見まわしたところ、ペレットが出て来るだろうダクトと、その壁の両側の上隅にある小さなダクト以外は中に何もない殺風景な場所だった。

 私が入ってすぐにニシュが上がって来た。

 

 私はすぐに作業に入る。

 壁のダクトの下側の壁を調べて、事前にケイトさんから聞いていた場所を探す。壁に1か所柔らかい所があったので押してみると、カチッと音がして周囲の壁が前に倒れる。その壁の奥に隠し棚があり、ここにカメラ4基と外殻修理剤があった、


 ニシュは念のため、ペレットが出て来るダクトの中や上隅のダクトを確認してたけど、右上のダクトで何かを見つけたみたい。そこに手を突っ込んでいる。

 しばらくしてニシュが何かを掴んで床に降りてきた。私の宇宙服のバイザーに顔を付けて話しかけて来る。



「これが覗いてたので、捕まえました。」


 見ると楕円形の形に8本の脚が付いたロボットで、背中側はカメラの収まった透明なドーム型になっている。ロボットは脚をわちゃわちゃ動かして暴れてるけど、ニシュはカメラのドームをしっかり掴んで離さない。


「取り敢えず、それ、止めておける? バッテリー抜けば止まるんじゃないかな。」


 ニシュにしてもロボットにしても、内蔵バッテリー外せば動けなくなるからね。

私がそう言うと、ニシュはその8本脚ロボットの下側にねじ止めされている蓋を取り、刺さっていたバッテリーを強引に抜き取った。するとロボットの脚の動きが止まる。


「これで、大丈夫でしょう。さあメグさん、急ぎましょう。」


 それから私達は、棚の中のカメラと外殻修理剤を床下に運んだ。それから隠し棚を元通り閉め、さっき床下から見たお姉さんの居ると思われる側の壁をコンコン、コンコンと叩いて、床下に戻った。


 床下に戻ってから、私は宇宙服内部のディスプレイから『作業完了、但し確認事項あり』ってメッセージを小父さん達に送った。

 『何があった?』ってメッセージがすぐに返ってきたので、『覗き見してるロボットを捕獲した』って返しておいた。

 その後も数度小父さん達とメッセージを交わした後、シャトルが去るまで待機することにした。



*****


(ケイト視点)


 床下のメグちゃんに合図を送ってから20分位経って、格納スペースの中からコン、コンコンって壁を叩く音がした。


「マルヴィラ、何かあったみたいだけど、そろそろ視察は終わりそうね。」


『こっちは特に大したことは……あ、ちょっと待って。そっちに行く。』


 装置の反対側にいるマルヴィラに無線で受け渡し完了の符丁を告げると、向こうからこっちに来ると連絡がある。何か問題があったのかしら?


 マルヴィラがこちらに来ると、手振りで無線を切ってくれと合図がある。無線を切るとマルヴィラが宇宙服のバイザーをくっつけて来る。


「中で小さいロボットが覗き見てたから、捕まえてすぐバッテリー抜いたんだって。それ以外は問題ないみたい。」


 小父さん達からのテキストメッセージを受け取れる様に、小型のディスプレイをセインさんに持たされていた。でも私は色々応対もあるので、マルヴィラの宇宙服の内部にディスプレイを仕込んでいました。彼女はそのメッセージを受け取ったみたい。


「有難う。詳しい話は連絡員が接触してきたら探ってみる。」


 それだけ伝えると、マルヴィラは元の持ち場に下がって行きました。



 視察の最後に出来上がった射出ペレットを見るため、お兄様の会社の人達が格納スペースを開け、ペン先くらいの小さなパレットが格納スペース内のダクトから次々と出て来る様子を視察団に見せていました。

 私達はそれを離れた場所で見ながら、先ほどのロボットの件を確認していると、私達の後ろから誰かが歩いて来るとマルヴィラが言います。


 振り返ると、そこに居たのはお兄様の会社のロゴが入った宇宙服の人ですが……襟元には例のマークがあります。トム氏の連絡員でしょうか。バイザーはスモークが掛かっていて、顔は良く見えません。手にはアタッシェケースを持っています。

 相手が紙を渡して来ます。その紙には無線の周波数と暗号パスワードが記載されています。周波数を合わせてパスワードを設定すると、無線で話しかけてきます。


「あまり私が顔を晒すのはまずいので、申し訳ありませんがスモークを掛けてさせて貰っています。」


 この声は多分、VIPルームで会ったトム氏でしょうか。



いつもお読み頂きありがとうございます。


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