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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第16章

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16-03 初めての変装、惑星へ降りる日

主人公視点

「ここ数日で状況が動いたから、マーガレットさんに伝えようと思ってね」


 クセナキス星系に来て何日か経って、セルジオさんが私達の所に来た。

 アイちゃんとクレトさんも一緒。

 

「その前に。これ、この間のお礼」


 そう言って、セルジオさんが私に小さい箱を渡してくる。

 淡い色の包装紙に包まれて、リボンが掛けられている。


「お礼って、別にいいのに」

「マーガットさんのお陰で、父さんと仲直りできたんだ。

 これは僕の気持ちだよ。受け取って」


 そうまで言われると、受け取らざるを得ないね。


「開けていいの?」


 セルジオさんが頷くので、リボンを解いて開けてみると……何かの小さな機械。

 構造的には、丸い筒に不規則に突起がついていて、筒が回ると側にある金属片を押し上げる?


「メグ……横についているツマミを、右に回してみて」


 横で見ていたセイン小父さんが言う。

 言われた通りに、機械の横についているツマミを右に回すと、ギギギッって音がする。

 手を離すと、ツマミがゆっくり左に回る。ツマミがゼンマイに繋がっているのか。

 それでツマミと同時に筒も回って、長さの違う金属片が筒の突起で押し上げられて、戻る時に……こんな風に音が鳴るんだ。

 突起の位置と間隔を調整して、こうして音楽が流れるのね。

 おそらくこの横のレバーを動かせば……筒が回ってる間はレバー押せないのか。

 筒が停まってる時にレバーを押せば、奥に見える別の筒に入れ替わって、違う曲が流れるんだね。


「面白い仕組みだね。これ何っていう機械?」

「……オルゴールっていうんだ。

 興味の持ち方が僕の予想と違ったけど、喜んでくれたなら良かった」


 ちょっと耳を赤くしながら、セルジオさんが笑った。

 グンター小父さん、どうしてセルジオさんの後ろで彼を睨んでるの?

 そんな小父さんをナナさんが横で睨んでるけど。



「第四皇子って人は、クーロイから帰る事になったらしい」


 セルジオさんが説明する。

 公開聴聞会っていう名前の、クーロイに来ていた第四皇子?の弾劾は終わったみたい。


 でも帝国の皇帝との交渉はこれからが本番らしい。

 ケイトお姉さんやマルヴィラお姉さんが宇宙軍に追われていたのは大丈夫だけど、私達を逃がす手引きをしてくれたカルロス侯爵って人は、皇帝が帝都に連れて行ったらしい。

 ランドルさんやナナさんの上司という、ラズロー中将って人も一緒に連れて行かれたそう。


「お姉さん達が大丈夫になったってことは、私達はお姉さん達に会いに行ける?」

「表向き、私達共和国使節団はあちらの騒ぎとは無関係って状態なのよ」


 アイちゃんは首を振る。

 お姉さん達に接触する表向きの理由がないってことね。


「それにメグさん達はまだ、あの人達と接触させるのは危険なのよ。

 どこに帝室側のスパイが居るか分からない状況だから、メグちゃん達の正体が向こうに知られてしまう危険があるし」


 ……そうか。私達の存在を皇帝側が消そうとするかもしれないか。


「コロニー暮らししか知らないメグを、惑星上に連れて行きたかったんだが……無理そうか」

「残念ながら、ね」


 グンター小父さんの言葉を、アイちゃんは否定する。


「変装しても駄目なんですか? ほら、あの話もあるし」


 セルジオさんが言うその言葉に、アイちゃんが顔を顰める。


「あの話ってなんだ?」


 ライト小父さんが、すかさず突っ込む。


「……トッド侯爵から、古い通信記録装置を入手したって話が来ているわ」


 思い出した、あの暗号解読の為にお願いしたやつ!

 私達の船の装置は外せないから、同じ仕様の古い機械がクーロイのジャンク屋街で探してほしいってお願いしたんだった。


「あれが届いたのか」

「トッド侯爵の方で入手したそうなんだけど……果たして使い物になるかわかる人がいないの。


 メグちゃん達なら調べられるかとも思ったんだけど、国交のない相手に技術を売る事は出来ないって帝国政府からは通達されているから、こっちに持ち込めなくて」


「つまり、食料とかここで消費する物だったら良いけど、機械とかそう言うのは駄目ってことか。

 この船に無理に持ち込もうとしたら検問で引っ掛かると」


 ランドルさんの言葉にアイちゃんは頷いた。


「預かってもらって、後で調べる人を手配するのは?」

「帝都に行けば知ってる人もいるかもしれないけど、向こうに知られるリスクも増える。

 それに、もう一度クーロイで探さないといけないとしたら、時間もかかる」


 私の疑問にランドルさんが答えを出す。


「やっぱり、装置が使えるかどうか誰かが確かめないといけないんだよ」


 セルジオさんがそう結論づける。


「そうだな。私達の誰かが現物を調べて確かめるしかないだろう。

 誰が行ってもリスクがあるが……やはり、マーガレット君しかいないだろうな。

 我々の中で、向こうに顔が知られていないのは君だけだ」


 ドクが言う。


「でもメグは、声を知られている。声紋分析されればバレるぞ」

「ライト君。そこは、変声器を身に着けてもらうしかあるまい」


 ドク、変声器って何?


「喉に巻いて声の調子を変えるものだ。

 喉の形を無理やり変えるから最初は苦しいが、声紋パターンも変わるので声紋分析も通るだろう。

 僕は喉のやけどの時に声を出そうとして使った事がある……声帯そのものがやられてて駄目だったけどね」


 クレトさんが説明してくれた。


「はぁ、やっぱりそうなるのね。メグちゃん達にリスクを負わせたくなかったんだけど……」


 アイちゃん、私達を心配して、黙っててくれたんだね。

 気遣いは嬉しいよ。有難う。




 アイちゃんとクレトさん、セルジオさんは一度私達の船を出て行って、二時間くらいして戻って来た。


「メグちゃんには、当日は私達の軍服と同じものを着てもらうわ。

 それとこの(かつら)と、これが変声器ね」


 アイちゃんはそう言って、持ってきたアイちゃん達と同じデザインのツナギと、黒い髪の毛の束、黒い金属の輪っかをものを私に渡す。


「鬘って?」

「……そうか、そこからなのね」


 はあ、とアイちゃんは溜息を吐いた。


「鬘は自分の髪の上に被って、髪型や髪の色を変えて楽しむためのファッションアイテムなの。

 普通なら内側がヘルメットみたいになってるんだけど、この鬘は全部が人の毛と変わらない素材で出来てて、自分の髪と一緒に()き込んで使うの。

 スキャンしても鬘だってわからない優れものよ」


 アイちゃんはそう説明する。


「梳き込んで使うなら、外すときはどうやるんですか?」


 ナナさんが質問する。そうか、梳き込むならそう簡単に外れないね。


「専用のシャンプーで髪を洗うと外せるのよ。だから、出発当日に付けるようにしてね。

 で、こっちが変声器。

 中の構造は風邪用の治療ユニットと同じだから、これもスキャンに掛からない」


 治療ユニット?


「風邪を引いた時に喉に直接薬を入れる仕組みの機械だよ。3区には無かったけどね」


 セイン小父さん、説明有難う。

 つまり風邪薬の代わりに、声を変える薬が入っているのね。


「変装するのも初めてだし、惑星上に出るのも初めて――じゃないか。

 一応、採掘場も惑星上だったね。

 でも、何だか……ワクワクする」


 グンター小父さんが、頭をポンポンしてくれた。


「この一年でだいぶ大人びてきたが、メグはまだまだ知らないこと、経験してないことは多い。

 危険はない訳ではないが、楽しんでくるといい」

「そうだね。マーガレットさんが楽しめるといいな」


 有難う、小父さん、セルジオさん。


 


「出発は二日後。セルジオ君が買い出しと街の視察で、随行員や護衛含めて十人ほどで外出するわ。

 メグちゃんは随行員の中に入るの。

 当日の段取りについてはまた連絡するわ。それじゃあね」


 アイちゃんが、最後に連絡事項を告げる。


「私も姉さんも一緒に行くから、何かあったら頼りにしてくれ」

「僕の事も、頼りにしてくれると嬉しい」


 クレトさんとセルジオさんもそう言って、アイちゃんの後ろについて去っていく。

 後ろ姿のセルジオさんの耳が赤いのはなんで?




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― 新着の感想 ―
セルジオくん、どうにも好きになれないんだけど、メグのことが好きならこれからずっと出てくるよね、きっと うーむ、出てきたら流し読みするか
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