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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第13章

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145/230

13-13 ゲームアプリの拡散

俯瞰視点です。

今回は短めです。

 カルロス侯爵の元々の統治星系、クラタ―ロ。

 この星系にて、ある携帯端末アプリが学生の間で広まりつつあった。


 『カリアティからの脱出』という名前のそのゲームアプリは、横スクロール型のシューティングゲームのようなもの。

 画面上の宇宙船を操作して進んでいくのだが、普通のシューティングゲームと違うのは弾を撃って敵を倒していくのではなく、ひたすら敵の攻撃を躱すという内容だった。

 このゲームはいくつかの難易度が設定されていて、難易度に応じてその敵の数や、敵が撃ってくる弾の数が異なるという。


 話題になった理由の一つは、その特徴的な操作方法。

 アプリが出来た当初は、画面上に表示された操作ボタンを押すことで操作していたらしい。

 話題が広まったのは操作方法が変わってからだ。


 携帯端末の中には、画面が縦向きか横向きかを判別するジャイロセンサーが内蔵されている。

 このゲームアプリはこのジャイロセンサーをフル活用し、端末そのものを傾ける事で自機を操作するというものだ。

 加えて、このアプリでは二人協力プレイというモードが存在している。

 このモードでは、アプリをインストールした二台の携帯端末をリンクさせる。

 そしてお互いの携帯端末の傾き度合いで自機の動きが変わるというものだ。


 例えば二人が同じ方向に端末を傾ければ、一人プレイ以上に速い動きができる。

 あるいは、一人が間違った操作で自機を弾へ突っ込ませるのを、もう一人が反対に傾けてブレーキを掛けると言ったこともできるのだ。

 これにより大きくプレイの幅が広まる事になり、学生の間で広まる切っ掛けになった。


 街中で子供が集まって皆で携帯端末をぐるぐる傾けて遊ぶ光景が、学校や街中のあちこちで見られるようになった。その光景が一種奇妙で、あれは何をしているのだと周りの興味を引き、更に輪をかけて話題性が高まっていった。


 そしてもう一つの話題性の理由は、そのストーリー性である。

 このゲームアプリでは、オープニングとクリア後のエンディングでそのバックストーリーが語られるようになっている。

 そしてある難易度を初回クリアすると上の難易度が解放され、上の難易度をクリアする毎に、より詳しいバックストーリーが語られていくようになっていた。

 

 最も易しいEASYモードでは。

  オープニング:

  『住んでいたコロニーに、帝国軍が兵士を連れて攻め込んで来た。

   君は宇宙船で脱出を試みた!』

  エンディング:

  『帝国軍から逃れ、トラシュプロスへ無事脱出成功!』

 と、非常に略されたストーリーが表示されていた。


 次のNORMALモードでは

  オープニング:

  『廃棄されたコロニーにとある事情で住んでいたが、帝国軍が突然やってきて

   コロニーに武装した兵士を突入させてきた。

   君は、宇宙船を駆って脱出するんだ!』

  エンディング:

  『帝国軍の追手を掻い潜り、協力者のいるトラシュプロスへと無事脱出した。

   さあ、帝国へ反抗だ!』

 と表示された。


 その上のHARDモードでは、オープニングは更に詳しいストーリーが語られた。

 『廃棄されたコロニーに住んでいたが、ある日。

  帝国を揺るがす秘密がこのコロニーに残っている事を発見した。

  それを知った帝国軍が、武装した兵士で攻め込んで来た。

  君は生き残るため、残されていた古い宇宙船で脱出する。

  帝国軍の攻撃を掻い潜り、レジスタンスのいる『トラシュプロス』まで脱出せよ!』


 このHARDモードは難しく、クリアしてエンディングを見る者が現れるまでに時間を要した。

 だがやがてこのHARDモードを、ある配信者が協力プレイモードでクリアし、その者によってプレイ動画とHARDモードのエンディングが配信された。

 エンディング自体は、NORMALモードとそう大きく変わらない内容だった。

 『帝国軍の攻撃を掻い潜り、コロニーの包囲網を突破して。

  君達は、無事に外惑星トラシュプロスへと脱出した。

  そこで匿ってくれるレジスタンスと無事合流が出来た!

  さあ、これから反撃だ!』

 ただ一つ違うのは、最後に『MARVEROUSモードにて、真実が語られる』との一文があったことだ。


 これ自体も話題には上ったが、続けてこの配信者が翌日に公開した、アプリの最上難易度MERVEROUSのオープニング動画の齎した衝撃はそれを上回るものだった。


 オープニング動画の最初に『真実の物語』と題字が流れ……。

 そこで語られたのは、帝国の最辺境、クーロイ星系での出来事。


 帝国歴308年11月29日。クーロイ星系の第三コロニー『3区』に、巨大な氷の塊と思われる天体が衝突した。そして住民が全滅したと発表され、3区コロニーは閉鎖された。

 だが実は、このコロニーで生き残っている者達がいた。

 やがてその生存者達の中に一人の女の子が生まれる。

 『メグ』という名前のその女の子は、3区に残されていたラジオ放送設備で、存在証明のため、自らの歌を発信する。

 だが廃棄されたコロニーに生存者がいる事を知った帝国軍が、武装兵士をこのコロニーに攻め込ませる。奇しくもそれは、3区への天体衝突で行方不明となった者達を追悼する式典が行われた、正にその日だった。

 メグとその仲間たちは、生き残るために宇宙船で脱出しなければならない。


 君達は、彼女達を助けに来た宇宙船のパイロットだ。

 彼女達を守るため、帝国軍の追手から逃れよ!

 だが、君達の船には武装など無い。軍艦が撃ってきても反撃することはできない。

 ひたすら敵の攻撃を掻い潜りながら、包囲網を突破せよ!


 この様なストーリーが全編をアニメーションCGで、そして『星姫』という歌手名で拡散した最初の歌『星の祈り(仮)』をBGMに語られるものだったのだ。


 MARVEROUSモードのそのオープニングから、このアプリが実際のクーロイの騒動をテーマにしている事が明らかになった。

 では、この『真実の物語』として、エンディングでは何が語られるのか。

 そこに興味を持った者達によって、このアプリそのもの、そしてMARVEROUSモードのオープニングは

クラタ―ロ星系から他の星系へとあっという間に拡散されていった。


 アプリが拡散していったことで、その後もHARDモードをクリアする者が続々と現れた。

 だが、MARVEROUSモードはなかなかクリアする者が現れなかったが、配信者たちによる攻略動画がアップされていき、段々と道筋が見え始めていた。

 画面いっぱいに敵の弾が飛んでくるようなゲームモードで、パッと見てどうやって弾を躱すのか分からない程だったが、どうやら弾に当たらない飛行ルートが僅かながら存在するようだった。

 そうした配信攻略者達の手によって、徐々にMARVEROUSモードは攻略されつつあった。


 そうした攻略動画と共に、アプリとオープニング動画は帝国全土へと拡散しつつあった。

余談ですが、本文中、アプリのオープニングやエンディングの記載が

 EASY、NORMALでは「君は~」

 HARD、MARVEROUSでは「君達は~」

となっているのは、一人プレイか協力プレイかで

若干フレーバーテキストに違いがあるためです。


例によって、章終わりの人物紹介の投稿がこの後あります。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここでまさかの章区切りとは、このリハクにも読めなんだ!
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