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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第11章

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11-07 船に帰って食事会

 荷物はクレトさんのトラックに積み込んで、私達はアイちゃんの運転する車に乗る。

 車はハイウェイに上って、真っ直ぐ宇宙港へ向かった。

 ハイウェイ終わりのトンネルを抜け、検問を通って宇宙港の倉庫エリアに入ると、私達の乗ってきた管理エリアだった船が見えた。

 今までと違うのは、パイプやら太いチューブやらが何本も繋げられている事。

 それから、船の横にコンテナボックスが置かれている。


「先に運んだ荷物は、コンテナに入れているよ」


 クレトさんが、昨日泊まった家から運んだ宇宙服とかの荷物をコンテナに入れてくれてた。

 船のドアロックを解除して、アイちゃんやクレトさん、セルジオさん達も入れて荷物を手分けして船に運び込む。

 私は、船の中で皆に荷物の運び先を指示していく。


「うわあ!」


 セルジオさんが何かに驚く声がした。彼は確か、私の寝泊まりする部屋に荷物を持って行っているはず。行って見ると、充電台にいるニシュを見て驚いたみたい。


「どちら様ですか」


 ニシュが充電台から、セルジオさんを見て言う。

 セルジオさんは腰を抜かしたのか、床に腰を下ろしてニシュを指差して、アワアワ言ってる。


「ニシュ、この人はセルジオさんっていって、荷物運びを手伝ってもらったの。向こうの泊まりから帰って来たから、荷物整理手伝ってよ」


 ニシュに状況を説明すると、ニシュは充電台から立ち上がり礼をする。


「わかりました。セルジオさん、宜しくお願いします」

「あ、は、はい……」


 セルジオさんは、なんだか呆然としてる。

 私はセルジオさんを助け起こす。


「あ、有難う……」

「ここはいいから、セルジオさん、荷物をどんどん運びこんで」


 そう言って、私は彼を部屋から出す。

 しかし、何故セルジオさんはニシュを見てあんなに驚いてたんだろう。



 荷物を全部運び込んだあと、それぞれの部屋で荷物を整理している間、私は食堂にしている会議室で料理を作る。

 荷物運びで体を動かした後なので、今日のメニューはチャーハンとエビチリ、それから春雨サラダ。

 冷凍エビを油通しして、春雨を湯通しながら、チャーハンとサラダに必要な野菜を切りそろえて行く。


「私も手伝うわ」


 春雨を湯から上げ、野菜をだいたい切った頃にアイちゃんも来てくれたので、チャーハンの炒めを手伝って貰う。

 私はその横でエビチリ炒めを作りながら、春雨と野菜にマヨネーズを和えて混ぜて行く。

 エビチリの鍋を揺すりながら、アイちゃんに訊いてみる。


「さっき、セルジオさんがニシュを見て腰を抜かしてたんだけど、なんでだろう」

「……ああ、なるほど」


 アイちゃんは、何か心当たりがあるみたい。


「私達をいろいろ助けてくれた人がいるんだけどね。その人の補佐をしていたのが、ニシュに似たアンドロイドなのよ」


 チャーハンを炒める鍋を振るいつつ、アイちゃんは続ける。


「ドクって呼ばれてるその人の所に、小さいころのセルジオ君が押し掛けてたんだけど、あの人の部屋には機械が多くて、下手に触って怪我しても困るから、クロっていうそのアンドロイドがセルジオ君を見つける度に叱って追い出してたの。だから、すっかりクロの事が苦手になってしまってね」


 ニシュに似たクロというアンドロイド……そのドクって人は、もしかして。


「そのドクって言う人に、今度会ってみたいんだけど。頼んでいい?」

「ドクと話ができるかはわからないわ……。重い病気を患っていて、ドクは今、病院に居るの。それでも良かったら、上に掛け合ってみるわ」


 ドクって人は、話が出来るか分からない位、重い病気なんだね。


「わかった。少なくても、クロってアンドロイドとは少し話がしてみたいの。小父さん達も、多分一緒に行くと思う。ちなみに、ドクってどんな人なの」


 本人と話が出来なくても、少しでも情報を仕入れておきたい。


「ドクはとっても優しい人よ。私達が採掘場から鉱石を運ぶ仕組みを作る時も、色々と親身になって手助けして貰ったしね。ただ、彼は昔の記憶が薄れてて、このコロニーに来るまでの事はあまり思い出せないみたい」


 このコロニーに来る前、ってことは。


「ドクってこのコロニーの人じゃ無かったの?」

「私も、詳しい事はよく知らないの。ただ、十年以上前に保護されたって話ね。メグちゃんは、そのドクのことに心当たりがあるの?」


 チャーハンを炒め終わって、皿に盛り着けながらアイちゃんが尋ねる。

 ドクって言う人は、あの人である可能性が高い。


「うん。もしかしたら……十七年前の3区の事故の事を、よく知ってる人かもしれない」


 私も、春雨サラダを盛り付けながら言う。


「……えっ!?」


 アイちゃんは驚いたのか、盛り付けの手が止まる。


「ニシュに似てるっていう、そのクロってアンドロイドは、その人と一緒に3区を脱出したアンドロイドかなって思う。だから、その事故の事を聞けたらなって」

「……そう、なのね。そう言う事なら、上に話を通しやすいわ」


 アイちゃんは、ドクって人と会うことを、多分あの議長さんに掛け合ってくれるみたい。



 一通り料理をお皿に盛りつけ終わる頃には、小父さん達に中尉さん、ナナさんもクレトさんとセルジオさんも食堂にやって来た。


「今日は運んでくれたお礼も兼ねて、食べて帰ってよ」

「いいんですか? 僕は今日だけですけど」


 セルジオさんは遠慮しようとしてる。


「メグがそう言うなら、構わんよ。お前さんの分も用意があるみたいだしな」


 ライト小父さんがいいよって言ってくれた。

 アイちゃんとクレトさん、セルジオさんの分も用意してるし。


「遅くなりました」

「ひっ」


 遅れてニシュがやって来た時に、セルジオさんの顔が引き攣ってた。


「セルジオ君は、ニシュは苦手かね」


 グンター小父さんもその様子を訝しんでセルジオさんに尋ねる。


「ああ、いや、その……ちょっと僕が苦手なアンドロイドによく似てて」


 セルジオさんは、やっぱりニシュも苦手そう。


「そのクロってアンドロイド、そんなにニシュに似てるの?」

「あ、アイーシャさんから聞いたんだ。そっくりとまでは言わないけど、なんか似ててさ」


 セルジオさんは、ニシュから目を逸らして言う。




「おかわり頂戴!」


 食べ始めると、セルジオさんは味が気に入ったのか、チャーハンをすごい勢いで食べてお代わりを頼んでくる。二杯目を入れて渡すと、また勢いよく食べていく。


「アイちゃんとクレトさんは、おかわり要る?」


 アイーシャさんとクレトさんに訊いてみると、二人とも首を振る。

 輸送船の時はよく食べてたし、おかわりするかと思って訊いたんだけど。


「今日はまだ、そんなに体動かして無いからね」


 輸送船に乗ってる間は二人とも結構食べてたけど、今日は車を運転して私達を案内したくらいだから要らないみたい。

 首を横に振ってるから、小父さん達も、中尉さんやナナさんも要らないみたい。


「チャーハンとサラダおかわり!」


 そんな中、セルジオさんだけはまたおかわりを頼んでくる。


「セルジオ君、ちょっとは遠慮っていう物を考えなさい」


 アイーシャさんがセルジオさんを嗜める。


「いや、人が作ったご飯って久し振り過ぎて、こんなに旨いなら食い溜めしようかと」


 食い溜めって……。


「お前、一体どんな食生活してんだよ」


 ライト小父さんがセルジオ君に尋ねる。


「小さい頃からずっと、三食全部工場の弁当かケータリングだったんだよ。お父さんは仕事でずっと家にいないし、お母さんは小さい頃に亡くなって。高校出て軍学校に入っても殆どが工場の弁当だから、人が作る食事って何年振りだろう」


 レーションパックで生き延びてた私の様な状況じゃないけど、それでもなかなか荒んだ食生活だったみたい。


「学生の時に友達と買い食いとかしなかったのかよ」


 グンター小父さんが彼に突っ込む。

 アイちゃんとクレトさんの表情がちょっと曇ってるのが気になる。


「お父さんの後を継げるように、小さい頃から勉強と運動の家庭教師が付いてて、学校以外で友達と遊ぶ暇なんか無くて」


 そういうセルジオさんは、何か諦めた顔をしてる。


「そ、それはなかなか、大変だな……」


 中尉さんも絶句してる。軍の人から見ても変なんだ、セルジオさんの状況。

 そんなに人の作る料理に飢えてるなら、おかわりは少しくらいは良いのかな。


「だからさ、時々こっちにマーガレットさんのご飯食べに来ていい?」


 目を輝かせてセルジオさんは言う。

 ……さっきまでのしんみりした雰囲気を返して。


「駄目」

「えー、どうして」


 私の拒絶にむくれるセルジオさんの頭を、アイちゃんが手ではたく。


「アンタねえ、今日買った食材はこの人たちの食事用で、この食事は彼女達の好意なの。その好意に付け込んでたかるんじゃない!」

「……はーい」


 叱られてシュンとなるセルジオさん。

 でもなんか……これからもちょくちょく顔を出しそうなんだよなあ。この人。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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