表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第11章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/236

11-06 色々と買い出し

 車はアイちゃんの運転で走り出す。


「皆さんは、それぞれの座席のシートベルトを締めて下さい」


 セルジオさんの指示で、私達はシートベルトをカチッと嵌める。

 私達の乗った車は暫く町中を走っていく。

 後ろを着いて来ていた筈のクレトさんの車は、私達とは途中で分かれて、昨日降りて来た上の道――後で聞いたら、ハイウェイって言うんだって――へ上って行った。


 私達の車の行く手に大きな建物が見えて来た。


「このショッピングモールで色々と買い出しをしてから、皆さんを船へお連れします」


 セルジオさんはその建物を指差しながら説明した。


「ショッピングモールって、何」

「食料品とか服、それに家具とか、生活するのに使う物を売っている店がこの建物に集められているんですよ」


 私の横に座るナナさんに訊いてみると、この建物の中に色んな店が入っているみたい。


「買うって、どうやってだ。儂等は金なんぞ持ってないぞ」

「私とセルジオ君がそれぞれ決済カードを持っているから、支払いはこっちでするわ。あんまり高い物は買えないけど、何日分かの食料品と、必要なら服とか色々見て回ってね」


 グンター小父さんの疑問には、アイちゃんが運転しながら答えた。

 車はその建物の中にある駐車場に入って行く。らせん状の登り口をグルグルと上って行って、上の方に作られた駐車スペースの一画にアイちゃんは車を停めた。


「私がメグちゃんとナナさんを案内するから、セルジオ君は他の男性の方々を案内して差し上げて。皆さんは、余りバラバラに動かない様にお願いするわね」


 私とナナさんは、アイちゃんが案内してくれるらしい。

 案内役からあまり離れて動いちゃ駄目ってことね。


「えー、逆じゃ駄目なんですか」

「女性には女性の買い物があるのよ」


 セルジオさんがアイちゃんに不満を漏らしている。



 私とナナさんがアイちゃんに連れられてやって来たのは、何か小さい物が一杯置かれているところ。


「ここがドラッグストアね。この店は、薬とか救急用品の他にも色々売ってるわ」


 店の中を色々見て回ったら、風邪薬とか胃腸薬みたいなちょっとした薬、包帯とか絆創膏なんかの応急処置用のものはあった。

 船に積んでた応急処置セットの中に足りない物があった筈だから、買い足そうと思って幾つか買い物かごに入れる。


「ねえ、アイちゃん。船外作業用の応急処置セットみたいなのは、ここに無いの?」


 そう言うと、アイちゃんは困った顔をした。


「ここの店には、宇宙に出て作業をする人は来ないと思うし……それは後で船に届けるわ」


 アイちゃんの答えで気付いた。そうか、ここはコロニーの中に住む人用の店なのか。


 ドラッグストアでは、他にもシャンプーやリンス、化粧水なんかの消耗品と、アイちゃんやナナさんの薦めで他にも色々と必需品を買い込んだ。

 支払いは、買う商品をかごに入れたままゲートを通すと、何を買ったか勝手にスキャンしてくれて合計金額が出て来る。本当は店の中で何を買い物カートに入れたかは全部検知されてて、ゲートを通すことで二重チェックと、盗難の防止をしてるらしい。

 支払いはアイちゃんがしてくれた。レジに何かカードを翳すだけで終わり。


 

 ドラッグストアを出てから、服とかを見に行くかアイちゃんに訊かれたけど、必要になったらまた来ればいいから、次に行ったのは食料品屋。

 店の名前はなんとかスーパーマーケットって言ってたけど、覚えられなかった。

 売ってるのは主に食材と冷凍食品、加工済のおかずやデザート類。


「合成肉だけじゃなくて、ちゃんと豚肉、鶏肉があるのですね……魚も……」


 ナナさんから前に聞いたのは、クーロイで生産してるのは一部の野菜と合成肉だけで、後は隣の星系から輸入してるって話だったはず。このコロニーは帝国からかなり離れてるから、合成肉以外の肉があるのが、ナナさんには驚きだったみたい。


「野菜や果物も惑星上で栽培しているし、家畜も惑星上で飼育しているのよ。牛は乳牛しかいないから、牛肉は滅多に出回らないけどね」


 惑星上で食糧生産をしてるっていうのがアイちゃんの説明だった。

 ちなみに私達が3区で食べてた冷凍食品――ケイトお姉さん達の差し入れのうち、魚と鶏肉は本物だったけど、他の肉は合成肉で、豚肉とか牛肉は無かった。あれって輸入品だったのね。


「作物の栽培も家畜の飼育も出来るのに、どうして惑星上に人が住めないのですか?」


 ナナさんがアイちゃんに訊いてくれた。


「惑星上は……実は、重力が重すぎて危険なの。家畜の飼育エリアだけは重力軽減してるんだけど、それも徐々に重くして、重力に適応できる種を作ろうとしてるのよ」


 人が住めない位の重力って……。

 アイちゃんの説明は続く。


「作物を作るのはロボット操作でできるけど、家畜の世話はどうしてもロボット任せに出来ない部分があって、人がやってるわ。重力軽減してあるとはいえ、かなり体を鍛えないとできない仕事よ。だから、普通に生活する人達が下に降りるのは無理ね」


 惑星上は重力が高すぎて、人が行くには危険なんだ。


「一体、惑星上はどのくらいの重力なの?」

「指数で言うと、惑星上は1.97になるわ」


 私の質問に対するアイちゃんの回答に、ナナさんも私も絶句した。

 3区での設定重力指数は0.89だった。重力トレーニングで1.3にしたら動けなかったから、1.97となると色々危険そう。それは確かに、人が住める重力じゃない。


「食料生産も命がけなんだね」


 私がポツリと漏らすと、アイちゃんは頷いた。


「このコロニーでは小さい頃から少しずつ荷重を増やすトレーニングをするの。それでも惑星上で作業できる人は少ない。大変な仕事よ」


 3区でもそうだったけど、食料の無駄遣いは出来ないね。


「子供は遠慮しないでしっかり食べなさい」


 冷凍食品を中心に買おうとしたら。アイちゃんに窘められた。


「そうです。メグちゃんって唯でさえ普通より小さいのです。明らかに栄養が足りてません」


 そう言ってナナさんも頷いてる。

 言われたので、キャベツとか人参、タマネギといった野菜類、あとは豆と、豚肉や鶏肉、魚と、アイちゃん達に薦められるままに買い込んだ。

 ライスは冷凍を買ったけど、生米はアイちゃんに薦められても買わなかった。

 だって、炊くのに時間も掛かるって言われたらね。


 それからアイちゃんに尋ねて、調味料の置いているエリアに移動する。

 調味料はこのコロニーに来るまでに結構使ったので、塩や砂糖、胡椒、それから味噌や醤油を選んでると、後ろから声を掛けられた。


「カレールーとかウスターソースも減って来てるから、買い足してくれ」


 ライト小父さんだ。そう言えば、その辺りも減ってたね。


「あれー? お姉さん達は服とか見てると思ったのに」


 この声はセルジオさんか。


「貴方達だって服とか見ないの?」

「船で過ごすのにあんな服着てどうする。むしろ作業着とか工具の店が見たいんだが」


 アイちゃんの疑問にはグンター小父さんが答えた。


「じゃあセルジオ君、食材が結構な量になるから、買ったら車まで運んでよ。その間に私達は服とか身に行くから」


 アイちゃんはこういうけど、私はナナさんに視線を向ける。

 ナナさんは私の視線に気付いて、彼女は首を振った。


「私達も普通の服はもう要らないよ。小父さん達と作業着と工具を売ってる店に行きたい」

「そうですね。あの家で過ごす訳でも毎日出かける訳でも無いですし」


 私とナナさんの答えに、アイちゃんはちょっと考える顔をした。


「……そっか。私達は普通にコロニーで生活してるけど、貴方達は船の暮らしが日常なのね。じゃあ、ここで買い物したら一回車に戻ろうか」


 食料品の買い物は結構な量になって、皆で手分けして車まで運んだ。

 本当は車に積むのも自動化できるけど、ここのコロニーでは持って運べる物は自動化せずに持ち運ぶように設計されているんだって。住む人が怠惰になると、わざわざ危険を冒して食料生産に従事する人が減ってしまうのが怖いんだそうだ。



 それからまたしばらく町中を走って、ホームセンターって看板が出ている大きな店にやって来た。

 中は広くて、一杯並ぶ棚に作業用工具やDIY用の材料だけでなくて、文具、ちょっとした収納や水回りの便利道具など、色んな物を売ってた。

 小父さん達も目を輝かせて、みんなバラバラに店の中に散って行った。


「えー! ちょっとおじさん達、勝手に動かないでくださいよ!」


 セルジオさんは小父さん達を追いかけて行ったけど、会計カウンターの近くで待ってた方がいいんじゃないかなあ。

 私も幾つか買うために店の中を進む。

 私が行く方向にナナさんとアイちゃんが付いてくる。


「ナナさんは、自分の物は買わないの?」

「私は、ホームセンターには特に用事は無いかな」


 ナナさんは特に買う物は無いって言ったから、私は壊れた工具の補充と、作業用のツナギや作業靴、それからフライパンとか鍋を買い足した。

 私がツナギを選んでたら、自分も欲しくなったのか、ナナさんも真っ赤なツナギを自分用に買っていた。


 小父さん達も、自分達の作業で使う工具の買い足しとか、持ち運ぶ用の工具ポーチ、自分の体形に合うツナギや作業靴なんかを買い揃えてた。


「なんで、ホームセンターの買い物が一番時間かかるかなあ」


 セルジオさんはぼやいてたけど、この店が私達の必需品を一番多く置いているからだよ。



 自動レジで決済して、買ったものを運ぼうとするとクレトさんがやって来た。


「船の中に入れなかったから、服は近くのコンテナに入れて来た。ここの荷物も多そうだから、トラックに積み込んでくれればまた船まで行くよ」


 さっきの食材もあるし、ここはクレトさんの申し出に乗っかろう。

 トラックを荷物ヤードに付けてくれているみたいなので、店のレジで手続きして台車を借りる。すると、勝手に台車が私達の所にやって来た。

 台車に荷物を載せると、台車はトラックまで勝手に運んでくれた。



いつもお読み頂きありがとうございます。


ブクマや評価、感想、いいねなどを頂けると執筆の励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ