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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第11章

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11-05 船に戻りたい

 目が覚めたら部屋が明るかった。

 昨日夜中に目が覚めた時は、真っ暗だったのに……と思って、ベッドサイドに付いていた照明のスイッチを押すと、更に部屋が明るくなった。あれ?

 起きて見ると、窓の外から光が差し込んできて、それで部屋が明るかったみたい。

 照明を消してベッドから降りる。


「んーーー!」


 何となく、そうしたくなって、腕を目一杯上に上げて伸びをする。

 そのまま、朝起きてからの声出しルーティーンを一通りやる。

 これをしないと一日元気が出ないからね。


 因みに昨日お風呂から出て着ていたのは、柔らかい素材のピンク色の寝間着だった。

 お風呂で逆上せて、よく分からないまま着替えて寝ちゃったから、どんな色とか模様とか見てなかったのだ。


 これはこれで可愛いけど、このまま外に出るのもどうかと思うし、昨日と違う服に着替えた。

 今日はネイビー地に黒や灰色、緑のひし形が並んだ模様?のシャツと、切り替えから下がプリーツになってる膝上のネイビー色のスカート。

 スカート短くない?って思うけど、一応中はパンツになってて、動いても中は見えない。

 でもスカートの下は素足スースーするので、ひざ丈のグレーのハイソックスを履いた。


 昨日着てた服と一緒に、宇宙服の下着もアイちゃんが持ってきた下着も、後でまとめて洗っちゃおうと思って、昨日アイちゃんが服を持ってきた袋に入れる。

 袋は一旦部屋に置いておいて個室を出る。

 隣のナナさんの部屋からは、物音も寝息も聞こえない。もう起きてるかな?


 下のリビングに降りてみると、中尉さんとナナさんが既に起きてて、昨日アイちゃんが置いて行ったボックスを開けて食べてた。テレビは昨日見た様なニュース?が映ってた。


「マーガレット君、おはよう」

「メグちゃん、おはよう!」


 二人は私に気付いて声を掛けてくれる。

 中尉さんは白シャツにジーンズ、黒ジャケットという服装。

 ナナさんはキャメル色のVネックのロングジャンパースカートに、上はインナーとして七分袖の黒シャツ、脚も黒ストッキングを履いてる。腰の高い位置を紐ベルトで締めているのが何か良いな。


「中尉さんにナナさんも、おはよう! 二人共、服が似合ってるね」


 朝の挨拶をしながら、私は自分の分の弁当を冷蔵庫から出す。


「あら、メグちゃん、有難う! メグちゃんも、そのアーガイル柄のブラウスが可愛いね」


 このひし形が並んでるの、アーガイル柄って言うんだね。


 朝食ボックスの中身は、卵を挟んだバゲットに、甘いマフィンが二個、そして昨日も食べた野菜サラダ。野菜サラダはここで初めて食べたけど、なんかシャクシャクして変な感じ。

 でも私は食べた方が良いって、小父さん達もナナさんも言う。


 朝食を食べてる内に、段々と小父さん達も起きて来た。


「おはよう」


 セイン小父さんはグレーのトレーナーに緑のチノパンと、一応着替えて来たみたい。


「うーっす」

「ふああ……おはようさん」


 ライト小父さんとグンター小父さんは一緒に起きて来たけど、二人は昨日と同じ黒ジャージ。

 さては、そのジャージを着たまま寝たな?


「後で洗濯するから、二人は食べたら着替えてね」

「あいよ、わかった」


 ライト小父さんは答えて、グンター小父さんも頷いた。



 食べた後、中尉さんや小父さん達から洗濯物を受け取って、ナナさんとランドリーに向かった。

 ランドリールームにあったのは、小さめのドラム式洗濯機が一台だけ。

 見た所3区や管理エリアにあった物と同じような感じだから、全部まとめて放り込めば勝手に洗って干してくれる感じかな?


「全部一辺に入れるだけの大きさじゃないですし、ここにモードボタンが付いていますから、種類ごとに分けて回してくださいね」


 ナナさんに考えを読まれたのか、釘を刺されてしまった。


「あっちじゃ纏めて入れてたのに」

「3区だと、洗う物の種類が限られていたじゃないですか。アイーシャさんが持って来てくれた服は、宇宙服やその肌着と比べて傷みやすいのですよ」


 そうナナさんに諭されたので、洗濯物を傷みやすさで仕分けする。

 確かに3区での洗濯物はツナギと宇宙服用の肌着がほとんどだったね。


 仕分けの結果、バスタオルやローブなどのタオル地のもの、中尉さんや小父さん達の黒ジャージや宇宙服用の肌着、アイーシャさんの持って来てくれた衣服類、私とナナさんの下着類と、合計四回動かすことになった。

 面倒だなって思ったけど、帝国に戻って普通の生活を送るようになったら皆こうしているんだから、一個一個覚えて行かないとね……って、ナナさんに教えられた。


 3区に居た時と同じで、洗濯機に入れておけば自動で洗ってくれるんだけど、特殊な空気で洗ってた3区と違って水洗いの後で乾燥に掛ける為、洗濯が終わった後の服は熱い。

 熱を早く和らげるため、中尉さんや小父さんの服はリビングで広げて発散させた。

 自分やナナさんの服とか肌着は、リビングに広げて小父さん達に見られるのは恥ずかしいから、二階の私達の部屋に持って行って広げた。


 私達が洗濯している間、中尉さんと小父さん達はずっとリビングでテレビ放送を見てたみたい。

 私とナナさんが洗濯機を四回回して、自分達の個室で洗濯物を広げてる時、チャイムが鳴る音が聞こえた。

 作業を終えてから下に降りると、アイちゃんとクレトさんが来ていて、小父さん達と話をしている。


「アイちゃん、今日は何?」


 私が話しかけると、アイちゃんは話を止めてこっちを見た。


「色々と買い出しに行かないかしら。昨日はとりあえずの服を持ってきたけど、食事もそうだし、暫くここで生活するなら色々買い揃えた方が良いと思って」


 アイちゃんに続いて、ライト小父さんがこっちを向く。


「買い出しは必要だと思うが、俺達を船に戻してくれって話をしてた。この家に居てもやる事が無くてな」


 グンター小父さんやセイン小父さんも、ライト小父さんに同調して頷いてる。


「それは私も思ってたところ。昨日分の洗濯はしたけど、後は掃除くらいかな」


 私もそれに頷く。

 この普通の家は興味深いし、お風呂も良かったんだけど……。

 管理エリアのあの船でトレーニングしたり、食事作ったり、メンテナンスしたりっていうあの生活に比べると、やる事がないのは確か。


「姉さん。言った通りだったでしょ」

「……そうね」


 アイちゃんとクレトさんは顔を見合わせて言い合う。


「昨日持ってきた服は、そのまま貴方達に進呈するよ。今日は、食料品と追加の服とかの買い出しをして、そのまま貴方達を向こうの宇宙船に届けるから。それでいい?」


 クレトさんの首にかけてるタブレットから、そんな言葉が流れる。


「戻してくれるなら嬉しいが、いいのか?」


 グンター小父さんが言う。

「貴方達の宇宙船をコロニー側の港に移すためにこっちに居て貰ったけど、一日ここで過ごしてみてから、船に戻るかどうか希望を聞くように言われてたの。私としてはメグちゃんに普通の家の暮らしを体験して欲しかったし、こっちに暫くいてくれるかなと思ったんだけどね」


 議長さんは、船に戻してくれるって言ってたけど。アイちゃんは、私達がもう少しこの家にいるんじゃないかって思ってたみたいね。

 ここの家の生活体験は、アイちゃんなりの気遣いだったのかな。


「船の暮らしが当たり前になってたなら、すぐに飽きるよって私は言ってたんだけどね。船はもう港に上げてあるし、エネルギーと水の供給ラインも繋ぐ用意があるから、戻りたければ買い出しの後で向こうに行くよ」


 港の中なら恒星光発電も出来ないし、動力はどうするのかなと思ったんだけど、コロニーから供給してくれるなら安心だ。

 クレトさんの説明に頷いた。


「それじゃあ、俺達は向こうに戻るが……中尉さんと准尉さんはどうする」


 ライト小父さんは、一緒に居た中尉さんと、私の傍にいるナナさんに問いかける。


「そうだな。ここに居ても身体が鈍りそうだし、私も船に戻りたい」

「私も船に戻ります」


 二人もやっぱり船に戻るみたい。


「私も戻るけど……時々、お風呂に入りにこっちに来てもいい?」


 一度あのお風呂の良さを知ってしまったら、これっきりなんて寂しい。

 でも船には設置できないしね。

 私の言葉に、小父さん達もウッと声を詰まらせてたのが可笑しかった。

 小父さん達も、お風呂には入りたかったんだ。


「フフフッ。それは構わないわ。ただ、港と町の間の移動は、私達の運転する車じゃないと駄目だから、こっちに来たい時は連絡頂戴ね」


 アイちゃんもクスクス笑いながら答えた。

 小父さん達が可笑しかったのはアイちゃん達も同じらしい。


 アイちゃん達は窓の一杯ついた沢山人の乗れる箱型の車と、運転席以外に窓が無い大きい箱型の車の二台で来ていた。

 来るときから増えたのは昨日貰った服くらいだけど、来た時に着ていた宇宙服が嵩張るから、それも含めて荷物は窓の無い方の車に全部載せて、私達は窓の一杯ついた方の車に乗った。

 クレトさんは窓の無い方の車に乗って、先に船へ荷物を運ぶらしい。


 アイちゃんは窓のある車を運転するんだけど、そっちにはアイちゃんの横に一緒に乗ってきている人が居る。男の人っぽいけど、アイちゃんやクレトさんよりは背が低いみたい。ライト小父さんと同じくらいかな?


「ほら、貴方も自己紹介なさい」


 アイちゃんの運転席の横に座っていたその人は、車の中で立ち上がってこちらを向いた。

被っていた帽子を取ると、下に隠れていたブロンド色の髪が目立つ。

 顔立ちからして、意外と若い?


「僕は、セルジオ・アコスタです。今日は買い出しのお手伝いをさせて頂きます。宜しくお願いします」


 セルジオさんは、そう言って私達に頭を下げた。

 でも、アコスタって……。


「お察しの通り、僕の父は皆さんが昨日会った評議会のアコスタ議長です。あっ、でも監視とかじゃなくて、買い出しの為の案内と手伝いの為に来ただけですから、そんなに構えないでください」


 私達の疑いの目を受けて、セルジオさんは慌てて言う。

 アイちゃん達と比べて年齢は結構若そうだし、単なるアイちゃん達と同じ仕事をしているのかもしれないけど、昨日の議長さんの息子だってだけで警戒してしまうのは仕方が無いと思う。



いつもお読み頂きありがとうございます。


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