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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第11章

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11-03 普通の家ってこんな感じなの?

 結局その日は、そのまま議長達の元を辞して家に向かうことになった。


「用意されてる家は、ここからそんなに遠くないわ」


 アイちゃんの先導で、また車に乗ってその家に向かう。

 道順は覚えられないけど、さっきの建物に来るまでよりはゆっくりと走って、周りから少し離れた場所。壁?に囲まれた、門のある建物に着いた。


「庭付きの一軒家か」

「ここは公式なお客様が来た時に宿泊してもらう家なの。外からお客様が来る事は無かったから、余り使ってないんだけどね。掃除はちゃんとしてあるわ。7人くらいなら、一人一部屋使えるわよ。バスルームもトイレも、一階と二階それぞれにあるわ」


 ライト小父さんの呟きに、アイちゃんが答えてた。

 何かリモコンみたいなのをアイちゃんが操作すると門が開き、車ごと中に入る。車は家の入口前に車を停めて、アイちゃんとクレトさんの案内でその家に皆で入る。


 玄関の奥、右と左に扉、正面に二階へ上がる階段がある。

 左の扉を開けると広いリビングダイニングになっていて、扉を開けて正面は大型のモニターとその前に大きなソファーがL字に置かれている。

 右側は大きなダイニングテーブルが置かれ、その奥にはキッチンカウンターがある。大型の冷蔵庫や電子レンジ、コンロなどが一通り揃っていて、キッチンの奥には大きな食器棚もある。


「奥にはパントリーもあるわ。冷蔵庫もパントリーも、今は何も置かれて無いから、後で食事を持ってくるわね」


 アイちゃんが後で差し入れをしてくれるらしい。

 玄関の左側の扉を開けると短い廊下が正面に延びていて、左右に扉、廊下奥にも扉がある。


「左右はそれぞれ個室になってるわ。奥の扉の向こうは水回り……トイレとバスルーム、ランドリーね」


 一階は、さっきのリビングダイニングが広いから、個室は二部屋しかないみたい。

 二階に上がると左右に扉がある。扉の奥はそれぞれ廊下が延びていて、個室らしき部屋が右に二部屋、左に四部屋。右側の奥にもトイレとバスルームがあるそうだ。ランドリーは一階にしか無いらしい。

 でも……バスルームって何? シャワールームは?


「これで、一通り部屋の説明は終わりね。各個室にはクローゼットと机、ベッドがあるわ。情報端末は外してあるけど、今度この家に戻る前には用意しておくわね。それじゃあ、後で食事を持ってくるわ」


 そう言って、アイちゃんとクレトさんは一度帰って行った。


 アイちゃん達が帰った後、私達は相談して部屋割りを決めた。

 一階はグンター小父さんとライト小父さん。

 二階の個室の内、水回りがある右側に私と准尉さん、反対側のにセイン小父さんと中尉さんが使う。

 二階右側のトイレとバスルームは、私と准尉さんで使わせてもらうことにした。

 中尉さんと小父さん達は一階のトイレとバスルームを使う。


 バスルームで使うらしい、体を拭く大きなタオルや小さなタオル、それからバスローブは、それぞれの個室のベッドの上に畳んであった。

 ただ、肌着類はここには置いてなかった。

 私達は、まだ船を降りた時の宇宙服のままなのだ。

 宇宙服を脱げば、私達は宇宙服用の肌着しか着ていない。

 どうしようかと思って個室のタンスを探すと、丈夫そうな素材の黒の上下揃いが置いてあった。


「服とか下着類は、後でアイーシャさんが食事と一緒に持って来てくれるそうです」


 准尉さんが聞いてくれていたらしい。


「マーガレットさん、黒ジャージ……黒の上下は多分部屋着ですから、女の子がこんな格好で個室の外へ出ては駄目ですよ」

「えー!」


 それじゃあ、アイちゃんが来るまでは宇宙服のまま過ごすか。


 個室の中身を一通り確認してから、准尉さんと一階のリビングダイニングに皆で降りた。

 小父さん達は黒ジャージ上下を着てソファーで寛ぎながら、モニターに映る映像をリモコンで切り替えながら見てる。

 中尉さんは、先にバスルームに入って汗を流してるらしい。


 ちらっと准尉さんを見たけど、彼女は首を振った。

 准尉さん的には、私がジャージに着替えて来るのはやっぱり駄目らしい。ちぇー。


 私と准尉さんは、冷蔵庫の中身や食器棚、パントリーを調べる。

 アイちゃんの言う通り、冷蔵庫やパントリーには何も入って無かった。

 ダイニングテーブルの近くに、背丈くらいの細い機械。

 准尉さんが言うには、これはウォーターサーバーらしい。


「キッチンにも水道が付いてるけど、どう違うの?」

「ウォーターサーバーの水はそのまま飲めます。赤いスイッチだとお湯が出る様です。水道水がそのまま飲めるかどうかは、アイちゃんに訊かないとわかりません」


 准尉さんが答えてくれた。

 どうやらウォーターサーバーは、帝国ではどの家にも置いてるものらしい。

 食器棚の中は、色んな種類のお皿やカップが置いてある。大人数用の大きな皿も、一人一人が使う小さい皿やボウルも沢山ある。

 ただ、3区で使ってた食器と違って……。


「どれもこれもちょっと重いなあ」

「食器は全部、ガラスとか陶器ですね。落としたりぶつけたりすると割れますから、気を付けて下さいね」


 扱いに気を付けないといけないのか。3区で使ってた食器は軽くて、落としても壊れなかったのに。どうしてこんな壊れやすい食器を使うんだろう?


 小父さん達は、モニターに映る映像を色々と見ている。

 画面上では農作物の生育状況らしい情報を若い女の人が説明してて、その横に映像やグラフが表示されてる。


「ニュース番組……ってことは、ここにもテレビ局があるんですね」


 准尉さんが呟く。


「テレビ局?」

「ああ……3区では、AMラジオを流していましたよね。あれと同じ様に、住んでいる人達に向けて色々な情報を映像付きで発信するのを、テレビって呼ぶんですよ」


 ラジオ局と同じように、情報を映像付きで流すのか。


「でもラジオは何かしながら聞けるけど、テレビだったらずっと見てないといけないよね」

「そうですね。でも映像が付いてる分、情報が分かり易いですよ。どちらも利点と欠点がありますし、帝国では両方あります。ここは、ラジオはあるんでしょうか」


 そうか、こんなのは帝国でもどこにでもあるのか。

 小父さん達は、管理エリアに居た時は何か作業しながらラジオを聞いてたけど、ここでは何もすることが無いから、ソファーに座ったままテレビの映像をずっと見てる。


 ピンポーン!

 何か音が鳴ったと思ったら、准尉さんが玄関の方へ駆けて行った。

 しばらくして准尉さんが戻ってくると、アイちゃんが大きな箱を一つ、クレトさんが何か大きな包みを二つ持って、一緒にリビングに入ってきた。

 アイちゃんとクレトさんは、揃いの青い上下のツナギに着替えてる。


「食材を持ってくるわけにもいかなかったから、今日の夕食と明日の朝食を持ってきたわ。あとは皆さんの服とかも、取り敢えずの物を用意させて貰ったわよ」


 アイちゃんは箱をダイニングテーブルの近くに降ろして蓋を開けると、色々と調理済みの食べ物が入ったパックをテーブルの上に置いた。

 見ると、鶏肉を揚げたものや、ポテトフライ、鮮やかな緑色の物の上に白いものが乗っている皿、あるいはチャーハン、白いご飯などが種類ごとにパック詰めされている。


 それとは別に、アイちゃんは二十センチ四方くらいの小さい箱を七つ、大きな箱から取り出した。あと、半透明の大きな袋?


「こっちのボックスは明日の朝ご飯用ね。ゴミはこの袋に纏めて入れておいて」


 そう言いながら、アイちゃんはその小さい箱を全部冷蔵庫の中に入れた。

袋は広げてキッチンの横に置いておく。

 クレトさんは、大きな包みのうち一つを開いた。中は四つの小さな包みになっていて、それを一つずつ、小父さん達と、同じく黒ジャージを着て出て来た中尉さんに渡していた。

 アイちゃんはもう一つの包みを持って、私と准尉さんに声を掛けて来た。


「こっちは貴女達の服よ。使う部屋に案内してくれない?」

「二階の右側を使ってるので、そっちに行きましょう」


 准尉さんがアイちゃんに答えて、三人で二階の私の個室に行く。

 アイちゃんが包みを開けると、私達の肌着や下着、それから外行きの服が袋に包まれて入っていた。


「勝手にサイズを測っていて申し訳ないけど、貴女たちのサイズに合わせているわ。こっちがメグちゃん用ね」


 アイちゃんが服を仕分けして渡してくれる。

 渡された袋の表記を見ると、服はブラウスが二着と、ズボンにスカート、カーディガンが二着とワンピース。それに肌着や下着も何着か、それから寝間着かな。寝間着の中身は袋を開けて見ないとわからない。


「カービーさんの分は、向こうで出すわ。貴女の部屋に行きましょ」


 そう言って、アイちゃんと准尉さんは隣の個室に行った。

 今のうちに着替えようか。

 宇宙服を脱いで、宇宙服用の肌着も全部脱いでから、貰った下着と肌着を着る。

 ワンピースの袋を開けて見ると、膝下までの丈がある白いドット柄のグリーンのワンピースだった。ただ、袖が無くてなんだか変な感じなので、上に白のカーディガンを羽織ってみる。


 残りの服も袋から出して部屋のタンスに片付けて部屋を出る。

 アイちゃんが、廊下で待ってたみたい。


「思った通り、メグちゃんに似合うわね。可愛いわよ」

「そうかな? 有難う」


 着こなしってまだよく分からないけど、似合ってるって言われると嬉しいもんだね。

 しばらく待っていると、准尉さんも着替えて部屋から出て来た。

 准尉さんは脛までの長さのグレーのスカートに、上は紺のブラウスを着ていた。


「カービーさんも似合ってるわよ」

「うん、いいと思う」

「そう? マーガレットさんもそのワンピ、可愛いわね」


 准尉さんとお互いに褒め合ったあと、三人で下に降りる。

 小父さん達と中尉さんは……相変わらず、黒ジャージのままだった。


「おお、メグ。着替えて来たのか。似合ってるぞ」


 リビングダイニングに戻った私を見て、グンター小父さんが目を細める。


「有難う、グンター小父さん。でもそれ、せめて部屋に置いて来ないの? 一階でしょ」

 グンター小父さんの横には、クレトさんから受け取っていた包みがそのまま置いてある。


「ああ、後で……」

「ほら、面倒がってないで部屋に置いて来なよ」


 セイン小父さんにせっつかれて、グンター小父さんはよっこらせと立ち上がって、包みを持って部屋に戻って行った。


「しっかしまあ、男性陣は揃いも揃って、あの黒ジャーを着てるなんてね」

「宇宙服だったから、さっさと脱ぎたかったんだよ」


 アイちゃんのぼやきにライト小父さんが答える。クレトさんは苦笑するばかり。

 まあ、小父さん達は面倒臭がりだからね。


 そこに、グンター小父さんがすぐ戻ってきた。

 あれは包みを部屋に置いて来ただけで、まだ開けてもないと見た。


「ともかく、食事と取り敢えずの服は渡したからね。明日はあの時計で十時くらいに迎えに来るわ」


 アイちゃんの指差した先、リビングダイニングの上の方の壁にはアナログ時計が掛けてあった。今は五時少し前くらい。真ん中にPMってデジタル表示もあるから、午後五時か。

 迎えは明日のAM十時くらいね。


「あ、そうそう。ここの水道水って飲めるんですか?」


 准尉さんがアイちゃんに尋ねてくれた。


「飲めない事は無いけど、飲料用ほどの浄化コストを掛けてないから、体質に合わない人もいるかもね。口に入れるならウォーターサーバーの水の方が無難よ」


 そのまま飲んだり料理に使ったりするならウォーターサーバーの方が良いって事か。


「世話になったな」

「有難うございました」

「アイちゃん、クレトさん、有難うね!」


 皆で二人にお礼を言う。

 二人は私達に手を振って帰って行った。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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