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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
第2章

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2-02 管理エリア奥の探索(1)

 以前管理エリアを探索した時にマンサさんのIDで通れなかった扉がいくつかあったけど、警備ロボットの認証チップを使った装置を使うと扉が開いた。

 今回開けた部屋に残されていた制服を見ると、階級章が下士官室のものより印が多かったから、階級が上の士官の部屋だったみたい。

 部屋に残っていたお酒は下士官室のものより上等だったようで、セイン小父さんがホクホク顔をしてた。


「ウィスキー、ブランデー、焼酎……グンターもライトも喜ぶな。」


「小父さん達はいつもお酒を美味しそうに飲んでるけど、それってそんなに良いの? だったらアタシにも飲ませてよ。」


「子供が飲むものじゃない。」

「まだメグさんには早いです。絶対駄目です!」


 小父さんにもニシュにも叱られた。

 なんでも、お酒はアタシみたいな未成年が飲むと悪影響があるから、帝国法でも固く禁じられているらしい。ちぇっ。

 因みに、マンサさんのIDで入れた下士官室も、この装置で扉が開いた。



 管理エリアの左奥の、向かい合わせの扉の所に行く。

 片側はニシュの居た軍の偉いさんの住居。今回試すのはその向かいの扉。


「あ、ちょっと待ってください。

 扉を開ける権限はありませんが、安全確認の権限は私も持っています。この扉は区域間の隔壁を兼ねているので、開ける前に向こう側の空気の有無を端末から確認しますね。」


 ニシュがそう言って、扉を開ける前に横の端末を操作して向こう側の状態を確認する。


「……向こう側も空気清浄装置は動いているようで、漏れも無いし大丈夫みたいです。」


 ニシュがOKを出してくれたので、装置を使って扉を開ける。

 開けると直ぐに扉の向こうの通路に電灯が灯った。見ると扉から真っ直ぐ通路が伸びていて、途中左壁に3つ、右壁に4つ扉が付いている。右側の奥から3つが左側の扉とそれぞれ向かい合わせになっている。

 また通路の奥には、ことさら丈夫そうな扉が1つ。

 管理エリアの入り口みたいに警備ロボットがいるわけではないみたい。


「管理エリアって、何をする場所だったんだろうね。」


「いや……コロニーの維持管理は私たちがグンター達から引き継いでたけど、管理エリアは入った事が無いな。管理エリアで軍が何をしていたかは私もグンターやライトも知らないんだ。

 マンサ小母さんは軍属だったから、ひょっとしたら何か知っていたかもね。」


「扉を開けて、調べてみるしかないね。右側から見ていく?」


「セキュリティレベルが高いエリアみたいだし、何か変な装置が動いて無いか調べてから行こうか。」


 セイン小父さんと念のため警備センサーの類が無いか確認したけど、赤外線や音波センサーなんかは何も無かったので通路に入る。

 最初の右側手前の扉には、『会議室/食堂』と書かれたプレートが掛けられている。入ってみると、20~30人が座れそうな大きなテーブル・椅子が置かれていて、奥にドアがある。

 奥のドアのプレートには『厨房』って書いてある。ドアを開けると、大きな台所という感じの場所だった。厨房の奥にも扉があるけど、扉の方向から考えると、通路の右側二番目の扉じゃないかと思う。


「厨房って聞いて期待したけど、保管庫には何も残ってないね。レーションすら無いよ。」


「ワインセラーにも酒は残ってない。事故の時に軍がみんな持って行ったのかな?」



 厨房奥の扉を開けて通路に戻る。向かいの扉には『放送局』って書いてあった。

そこを開けるとそこには事務机が6人分くらい置かれていて、それぞれに端末が備え付けられている。部屋を入って左奥の壁に扉が2つ。右側の壁にはいくつかポスターが貼られていて、奥の壁には『AM3区(クーロイ星系3区コロニー放送センター)1027KHz』と書かれた大きなプレートがある。

 左奥の扉にはそれぞれ『第1スタジオ』『第2スタジオ』とある。


「これは……AM3区の放送局か。てっきりあの事故で無くなったものと思ってたけど、こんな所にあったんだな。」


「AM3区?」


「コロニー内にニュースや音楽を電波で流すAMラジオの放送局だよ。

 奥のプレートに書いてある『1027KHz』っていうのがここの放送用電波の周波数だね。

 各コロニーにこんなAMラジオ放送局があって、3区のラジオはAM3区って呼ばれていたんだ。事故の前は1区や2区のラジオも聞けたんだけど、今はそっちも流れてないみたいだね。」


 あれ?

 コロニー内には各扉の操作端末だけじゃなくて、あちこちに情報端末もあったよね?


「あちこちに端末があるのに、どうしてわざわざ電波で流してたの?」


「事故の前はみんな何かしら仕事をして忙しかったから、作業をしながら聞き流せる音声放送の方が良かったんだよ。。

 それにAMラジオなら受信機は簡単に作れるし、遠くまで電波が届きやすいから船外活動中でも聞けた。ノイズが入りやすいのが欠点だけどね。」


 スタジオはどちらも同じ様な造りで、扉側にコントロールルーム、その奥に収録室があった。スタジオが1つだと番組の入れ替え時に放送が止まっちゃうから2つあるんだってセイン小父さんに教えて貰った。

 放送設備の詳しい調査は後にして、他の部屋を見て回ることにする。



 通路を更に奥に進んだ、右側3番目の部屋には『整備室』って書いてあった。中に入ると、手前に機械修理用のスペースがあって、工具や部品類がたくさん棚に入ってた。その奥には宇宙服の予備が棚に幾つか入ってて、部屋の一番奥には船外に出るハッチと思われる頑丈な扉がある。

 ここも、詳しい調査は後にしようという事になった。


 整備室の向かいの扉には『武器庫』と書いてあった。中は整備室と同じような造りになっていて、一番奥にはやっぱりハッチの様な扉がある。機械修理スペースの代わりに武器の保管場所らしい棚がいくつも並んでいた。

 ただ、武器は全く置いてなくて棚は空っぽだった。事故の時に軍が全部持って行ったんだと思う。



 通路一番奥、右側の扉の中はトイレだった。中で男性用と女性用に分かれてて、女性用は個室が並んでた。セイン小父さんが男性用のトイレを一応見て回ったけど、普通のトイレだったみたい。


 その向かいの部屋は『トレーニング室』と書いてあった。中に入ると、バーベルやトレッドミルなどの体を鍛えるための器具が色々置いてあって、奥にもう一つ扉がある。

 奥に入ると、中は天井も壁も床も白いだけの何もない部屋だった。扉の操作端末の横にもう一つ端末があるくらい。

 その端末を調べてみると、部屋の中の重力を無重力状態から通常の倍の重力まで変えられるみたい。あとは天井や壁に外の宇宙や、どこかの惑星上の映像なんか投影することもできるみたい。


「ここは重力トレーニングができる部屋か。」


「重力トレーニング?」


「人が住んでる星は、通常より重力が強かったり弱かったりするんだよ。軍なんかではそういう重力に慣れるトレーニングをすることがあるって聞いたことがある。

 それにここだと無重力状態も作れるから、船外活動のために無重力下での動作訓練なんかもできるね。」


 アタシの場合は、無重力に慣れるためと言って、ライト小父さんにいきなりコロニーの外に連れ出されたからなあ……。あの時はとっても怖かった。こんな部屋が住居エリアにもあったら、事前に練習できたのに。




 そして最後に通路奥の扉。他の通路の扉は装置なしでも入れたけど、ここは改めて認証が必要だった。

 作った装置で認証が通ったので開いてみる。


 ここは今までの部屋より大きく、奥の壁から左右の壁にかけて、壁の中ほどに細長く窓があって外の宇宙空間が見える。左壁の方の窓から、この星系の二連恒星、大恒星イーダースと小恒星リュンケウスの光が差し込んでいて、反対側には惑星オイバロスの一部が見えてる。

 そして窓の上には大きなモニター画面。

 部屋には端末に囲まれたシートベルト付きの座席が7つ、全て奥の窓へ向けて設置されている。


「何だろう、この部屋。」


「部屋というより……宇宙船のブリッジみたいだね、ここ。

 小さい時にアニメで見た宇宙戦闘艦の艦橋がこんな感じだったような。」


「多分、セインさんの言う通りかも知れませんね。」


 セイン小父さんの感想に、ニシュが答える。


「ニシュはここの事知ってるの?」


「ここのコロニーを運んでくる時、コロニー全体を1つの宇宙船として自力で航行してきた、と前の御主人様が言っていたような……メモリーの残滓がうっすらと残っています。」


 別の場所でコロニーを建設して、宇宙船としてここまで動かしてきたってこと?

 他にも分かんない事はまだ沢山あるけど、セイン小父さんと相談して、今日の探索はここで打ち切ってグンター小父さんとライト小父さんにも相談することにした。

 調べるなら全員でちゃんと調べた方が良いしね。


いつもお読み頂きありがとうございます。

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