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第5次コペンハルゲン星系の戦い・3章

ウェルキン艦隊に迫る多数の熱反応。

その正体は、帝国軍の人型戦闘機動兵器、戦機兵ファイター《セグメンタタ》である。

地球時代の中でも古代に栄えた文明、ローマ帝国の軍隊の兵士が着用したロリカ・セグメンタタと呼ばれる鎧を意識してデザインされたこの兵器は、赤い装甲に身を包み、さらにその上からコックピットのある胸部には銀色の装甲がさらに追加で装備されていた。

およそ80機にもなるセグメンタタの部隊は、背中のスラスターを全開にして真空の宇宙空間を自由自在に飛び回りながらウェルキン艦隊に殺到する。

しかし、軍事上の常識として戦機兵ファイターは戦艦を沈められない、というものがある。セグメンタタの両手に握られるビーム突撃銃から放たれるエネルギービームは、戦艦の副砲並の火力を有するが、戦艦の装甲とは戦艦の主砲に耐えられるように設計されているものなのだ。そのため、セグメンタタの攻撃で戦艦を仕留めるのは極めて難しいと言わざるを得ない。

しかし、まったく方法が無いわけでもない。機関部や艦橋、主砲など戦闘継続を困難にさせるようなポイントを集中攻撃するのだ。

とはいえ、それも容易な事ではない。戦艦には対空戦闘用のビーム砲群が多数設置されており、そこから放たれる弾幕を回避しながら攻撃する必要があるためだ。

更に言えば、当然ウェルキン艦隊にも戦機兵ファイター部隊は多数配備されている。軽く見積もっても80機いるセグメンタタの倍の数はいるだろう。それが出撃して格闘戦ドッグファイトに陥れば、数に押し負けて全滅するのは時間の問題。


結局、ろくな致命傷を与えられないままセグメンタタ部隊はウェルキン艦隊への攻撃を残念して後退する。

しかし、この小賢しい攻撃で一気に火がついたウェルキン艦隊の各艦は速力を上げて、逃げるセグメンタタを、そしてその先にいる戦艦エレファントを目指して進軍した。


「帰艦するセグメンタタを回収しつつ、後退するぞ!敵艦隊を本隊のいる宙域まで引きずり込む」

エレファントの艦橋でネルソンが指示を飛ばす。


それを聞いたエレファントの副艦長ヴィクトリア・グランベリー少佐は「え?」と声を上げる。

「退くんですか?」


「元々この艦だけで倒せるとは思っていないさ。敵の注意を引いて基地から引き離せればそれで良い」


「・・・何だかまどろっこしいですねぇ」


「ふふ。確かにそうだが、こっちの方が数が不利だからな」


エレファントは帰艦するセグメンタタ部隊を収容しつつ後退を始める。

これを一気に沈めてやろうとウェルキン艦隊は、まるで獲物を狙う狼のように押し寄せた。

しかしネルソンはただ後退したわけではない。後退しつつ熱反応型の宇宙機雷を散布したのだ。エレファントの後退針路をそのまま通る事で、ウェルキン艦隊はエレファントを見失わないようにしていたのだが、その針路上に機雷を散布する事で少しでも時間を稼ごうとした。


「敵艦隊、速力が低下!艦隊の前面に戦機兵ファイターを展開しています。おそらく機雷掃討を始めるものと思われます!」

索敵オペレーターが嬉しそうな声でそう報告する。


機雷というのは当然、戦艦を沈める程の火力は無い。しかし破壊力だけなら戦機兵ファイターよりも優れていた。そのため、これから艦隊戦を挑もうとしているウェルキン提督が機雷で貴重な艦艇に損傷を与えて戦力を低下させるような真似をするはずがない。そう考えたネルソンの読みは見事に的中した。


「これでしばらく時間が稼げるな。・・・旗艦ロンドンとの通信はまだ繋がらんのか?」


「も、申し訳ありません。一向に応答が無く、」


「・・・呼び続けろ」


ネルソンにとって1番の懸念は、本隊の置かれている状況だ。

連合軍の囮艦隊を今も追い回しているのだとしたら合流するのに余計に時間が掛かる恐れがある。

それにもしも囮艦隊を撃退できていなければ最初に懸念していた挟み撃ちに追い込まれてしまう。

そのための時間を稼ぐために、戦機兵ファイターによる奇襲を仕掛けたり、宇宙機雷を散布したりとした。

しかし、これ以上は危険が大きい。敵将にこちらの意図を悟られてしまうとネルソンは考えているのだ。


「本隊の位置は分かったか?」

あまり間を置かずにネルソンは再度問い掛ける。


「い、いいえ。まだです」


「そうか・・・」


ネルソンのやや落ち着かない様子に兵達は不安を覚える。

それに気付いたグランベリーはネルソンに近寄って耳打ちをした。

「ちょっと。艦長がそんなしけた顔しないでよね。皆が動揺するじゃないの」


「ん?あぁ、すまん。だが、落ち着かなくてな」


その時だった。通信オペレーターが声を上げる。

「帰艦ロンドンより通信有り!」


ようやく本隊との通信が回復し、その電波の発信源から本隊の座標を特定する事に成功した。艦橋にいる皆は喜びの声を上げるが、次の瞬間には開かれた通信回線からパーカーの怒声が鳴り響く。


「ネルソン艦長!独断専行しておきながら、おめおめと逃げ帰って来るとは何事か!」


「そ、その件について後ほどゆっくり話し合いましょう。それよりも敵の陽動部隊はどうしましたか?」


「巡洋艦を1隻沈めてやったら早々に逃げていったわ!」


「それは良かった。では、すぐに本艦と合流して敵の本隊を叩きましょう!」


「分かっている!」


これでパーカー艦隊が一ヶ所に集結すれば、戦艦3隻となる。

対するウェルキン艦隊は戦艦2隻に巡洋艦2隻。

戦力的にはほぼ互角と言って良いだろう。



─────────────



パーカー艦隊が戦力を集結させた。

その事はウェルキン艦隊でも確認が取れており、旗艦アレシアにいるウェルキンはどうしたものかと思案を巡らせる。

このまま互角の戦力で正面衝突しては味方に多大な損害を強いるリスクが伴う。かと言って今更後退しては今度はこちらが追撃を受けてしまう。


「まんまと誘い出されたか。・・・囮艦隊はどうしている?まさか全滅したとは思えんが?」


ウェルキンの問いには、彼の副官であるクリトニー大尉が答える。

「詳細は不明ですが、1隻撃沈された所で撤退したようです」


「ではすぐに呼び戻せ。敵の背後を突かせるのだ!」


1隻失ったというのは手痛い知らせではあったが、1隻だけならまだ艦隊として機能する。これで敵艦隊を挟撃する条件は整った。こうなればウェルキンの選ぶ道は1つである。


「全艦、このまま前進。敵艦隊を現宙域で足止めし、囮艦隊が戻って来るまでの時間稼ぎを行う!」


こうして両軍は、正面から決戦を挑む恰好となった。

両軍の戦力はほぼ互角という状態ではあったが、戦力の構成そのものには若干の違いがある。その違いをどう利用するかで、彼我の戦力に大きく差を広げる事も逆に縮める事もできる。

そう考えるウェルキンは、囮艦隊はいざという時のための保険程度にしか思っておらず、内心では今手元にある戦力だけで戦おうと考えていた。


「艦隊を戦艦部隊と巡洋艦部隊の2つに分ける。戦艦部隊は正面から。巡洋艦部隊は左から攻撃を仕掛けるのだ!」


帝国軍のドレッドノート級宇宙戦艦は、正面の敵に対して最大火力を出せる設計になっている。つまり帝国軍は艦首を戦艦部隊に向けたままで戦闘を継続するというわけだ。そこへ敵艦隊右翼から側面攻撃を食らわせるのだ。いくら巡洋艦でも2隻による集中砲火を浴びればそれなりにダメージを負うのは必定というもの。


ウェルキン艦隊は迅速な対応で陣形を再編成し、ウェルキンの指示通りに動く。

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