4. アルシャも立派な聖女に成長したみたいで、お母さん嬉しいわ~
その後、しばらくは村での平和な生活が続きました。
もともと危険は少ない村です。
そのうえ村には私とお母さん、2人の聖女がいるのです。
妖精さんの祝福を受け。
畑の植物は普段より多くの実りを見せ。
モンスターの侵入はおろか、近づくこともできない強固な聖結界が張られて。
「いつもありがとね」
『アルシャのためなら頑張るよ~』
『毎日たのしいの~』
妖精さんは、もはやフレンドリーになりすぎて、「祈り」という形を通さなくても色々とやってくれます。
緑豊かな村の中をニコニコ無邪気に飛び回りながら。
楽しいという感情が、見ているだけで私にも伝わってくるようです。
自然が豊かでどこよりも安全。妖精に祝福された村。
秘境にある神秘の村として、密かに行商人や冒険者の間で有名になっていったのでした。
◇◆◇◆◇
「聖女様が2人になって、村が更に活気づいてきましたね~」
「あら? 私では力不足だった、とでも言うのかしら~?」
私は、お母さんと村長に連れられ村を巡回中。
「アルシャも立派な聖女に成長したみたいで、お母さん嬉しいわ~」
「お母さんと比べると全然だよ~」
「それでも、その歳でそれだけの妖精が見えてるなんて。
本当に将来有望よ。
妖精は、その人間の心の清らかさを見抜く。
アルシャはよっぽど妖精に愛されてるのよ~」
「お母さんほどじゃないよ~」
人の振り見て我が振り直せ。
心の清らかさと言えば、帝国には悪いお手本がいっぱい居たからね。
お母さんの回りには、ふよふよと発光する七色の光が浮遊しています。
私にはボヤっとして見えない、お母さんにのみ姿を見ることが許された妖精さん。
「何にしてもアルシャ。
あなたはもっと立派な聖女になっていくわ。
お母さんが保証してあげる」
私の頭を撫でながらお母さんは言いました。
「清く正しい心を持って」
――そうすれば、あなたは世界中の妖精から愛される聖女になれる
帝国のわがままにより、引き離された時を埋めるように。
私はお母さんとの語らいを楽しんでいました。
『アルシャ、毎日楽しそう~』
『みんな幸せそうなの~』
帝国で聖女としてこき使われていた時からは、考えられないノビノビとした生活。
しかし、この平和な時は長くは続きませんでした――