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第九話 "剣聖審議会"の真相 2

「まず最初に言っておきたいんだが、俺はレイナが『剣聖』の称号にふさわしい人物だと思っていた。」


「え?」


「知っていると思うが"剣聖審議会"は私を含め10人のメンバーで構成されている。そして最終的には多数決で『剣聖』にふさわしい人物かどうか決めるんだ。」


イガリオは一呼吸し、また話し始めた。


「一年前の"剣聖審議会"でレイナが議題に上がり、俺は嬉しかった。実力も十分、第一線で活躍もしている。俺はレイナが『剣聖』に相応しいと主張した。」


険しい表情をしているイガリオを見て俺は何も言えずにいた。


「だが、ある一人の学者が唐突に『剣聖』の称号に女は相応しくないと言い出した。そしてそれに便乗するように他の学者も同じことを言いだしたんだ。」


「なんでそんなこと…」


「学者ってのは自分の研究分野に関しては価値観が凝り固まってしまうものだからな。これまでに『剣聖』の称号は男にしか与えられていないこと、『剣聖』の力を知らしめるには女より男の方が効果的であるということ、このことを考慮すると女であるレイナは相応しくないという考えが学者達の中で一致したんだろう。」


「くっ!………」


 俺は無意識に拳を握りしめていた。


「そして他に出席していた大臣なども俺の意見より学者達の意見を尊重した。ふっ…その時俺は己の無力さを呪ったよ。」


「イガリオ総司令官…」


「そして多数決で俺を除き全員が『剣聖』の授与を反対した。」


イガリオは座っているイスに深く腰掛け、


「これが一年前の"剣聖審議会"の内容だ。」


と話し終えた。


「そんなことがあったなんて…それなのにイガリオ総司令官を責め立ててしまって申し訳ありませんでした。」


「何も謝ることはない。実際俺はあの時話の流れに逆らえずに何もできなかった男だ。責められて当然だよ。」


「いや、そんなことになれば誰だって逆らえませんよ。逆に最後の多数決で一人賛成したんですよね?本当に立派だと思います。…上から目線の発言でしたね、ハハッ。」


「優しいねアスト君は。なんだか心がスッキリしたような気がするよ。もしかしたら心のどこかでこのことを誰かに話したかったのかもね。」


「お時間をいただきありがとうございました。そろそろ部屋へ戻ります。」


「そうか。ゆっくり休めよ。」


「はい。失礼しました。」


 翌日、イガリオはレイナを部屋に呼んだ。


「なんでしょうかイガリオ総司令官。それといつになったら部屋を片付けるんですか。そろそろ我慢の限界なんですが。」


「片付けの話は後でしよう、な?今は早く話したいことがあるんだ。」


「では早く話してください。」


「あぁ。 話は一年前の"剣聖審議会"のことだ。」


「…!」


 レイナは明らかに驚いた表情をした。


「今日呼び出したのはそのことについてレイナに謝罪したかったからなんだ。」


レイナは反応できずにいた。イガリオは構わず話を続けた。


「レイナ、君は一年前の"剣聖審議会"の話の内容を知っていたね?そしてその苦悩を抱えたままこれまで働いてた。それを俺は見て見ぬふりをしていた。…本当にすまなかった。」


イガリオは立ち上がり、頭を下げた。


「な、なぜ今になって謝罪なんか…」


「実は昨日アスト君が俺の部屋に来たんだ。そして一年前の"剣聖審議会"について問い詰められたんだ。どうしてレイナ将校が『剣聖』として認められなかったのか、てな。」


「アストが?」


「そうだ。そして俺はアスト君に押されて洗いざらい全て話した。その後、俺はレイナに謝罪しようと思ったんだ。」


「…今さら謝られても」


「当然許してもらうために謝罪したわけじゃない。ただこれまでのことを反省していると伝えたかったんだ。」


「そういうことなら…分かりました、その気持ちは受け取っておきます。」


「ありがとう。」


 イガリオはイスに座り直した。


「しかし、アスト君には驚かされるばかりだ。あんなに人のために行動できる人はそういない。」


「そうですね。まさかアストがそんな話をしたなんて…」


「それにしても、中々お似合いじゃないか?アスト君とレイナ。『剣聖』と『最強の女剣士』、肩書きまでお似合いじゃないか。」


 イガリオがからかうとレイナの顔か真っ赤になった。


「ふ、ふざけないでください!さっき謝ったばかりなのになんでそんなことを言うんですか!」


「ハハハッ、ごめんごめん。ちょっとからかっただけじゃないか。そんなに怒らないでくれ。」


「ったく、すぐに調子に乗るのはあなたの悪い癖です。直してもらいたいです。」


「性格はそんな簡単には直らんよ。」


「はぁ…もういいです。話は終わりましたか?それなら私はもう仕事に戻りますが。」


「そうだな、話は以上だ。悪かったな時間取らせて。」


「では失礼します。」


 レイナが部屋から出ようとした時ドアが荒々しくノックされ、そのまま一人の兵士が入ってきた。


「どうしたそんなに慌てて。」


「コルズ皇国で兵士が招集されているという情報が潜入している兵士から届きました!戦争の準備をしていると思われます!」


 イガリオとレイナはお互いに目を合わせた。



次回から戦闘パートです。

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