表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

第五話 レイナ将校と"剣聖審議会"

「レイナさんっていつもああいう感じなんですか?すごい怖かったです…」


「ん?あ、あぁ、まぁあんな感じだな。それよりアスト君も戻っていいぞ。」


「え?あ、はい。分かりました。」


俺は何かイガリオが話を隠しているように感じたが、それ以上聞くことはせずに部屋へ戻った。


「お、戻ってきた。」


「お疲れアスト君。どんな話だったの?」


 今回の話を二人に言えるわけもなく、上手く誤魔化した。


 一週間が経ち、国王護衛任務の日がきた。集合場所の王宮の間には今回、護衛任務を任せられた実力者約50名が揃っていた。リーダーであるレイナがこの場を取り仕切る。


「全員集まったな。今回の任務は非常に重要だ。失敗は許されない。これから任務内容の最終確認を行う。」


今回の任務は三つの部隊に別れる。一つ目の部隊は索敵役、二つ目の部隊に国王が同行、三つ目の部隊は殿役を担うことになっている。俺は一番重要な二つ目の部隊に分けられている。

 任務の最終確認が終わり、いよいよ一部隊目が出発した。少しした後国王を乗せた馬車と共に二部隊目が出発した。


(こんなに緊張するのは久しぶりだな。気を引き締めていこう。)


後ろを確認すると三部隊目もちょうど出発したところだった。

 アルメシア王国までは3日ほどかかる。その間一瞬たりとも油断はできない。時間が経ち日が暮れてきたころ、今日泊まる宿が見えてきた。任務がバレないように今回は一般庶民が利用する宿に泊まることになっていた。

 宿に着き、国王と数名の兵士が宿の中に入っていった。残りの人は周辺の警戒を交代で行うことになっていた。


「予定通り周辺の警戒にあたれ。他は休憩だ。ただし目立つようなことはするな。」


レイナが指示をだした。俺は近くの食堂に足を運んだ。


「いらっしゃい!」


 元気なおばちゃんの声が響き渡った。俺はカウンターに座った。


(何食べようかな。うーむ、魚というよりは肉の気分だな。)


「おばちゃん、鳥の照り焼きを。」


「はい、まいどありがとね!」


料理を注文した直後隣に男が座ってきた。


「やぁ、あんたアストだよな?」


「え?あなたは一緒に護衛任務をしてる…えっと…」


「ノルバトだ。いやぁずっと『剣聖』の称号を与えられたあんたがどんな人か気になってな。一度話してみたかったんだ。」


「すいません名前覚えられてなくて。」


「ん?ハハハッそんな些細なこと気にしなくていい。意外と細かいこと気にするんだな。」

 

 そこに頼んだ料理がきた。焼き立てでとても美味しそうだった。


「お?旨そうだな。俺も早く頼むか。おばちゃん魚の塩焼きとビールお願い!」


「はいよ!」


「ビールなんか頼んで大丈夫なんですか?」


「一杯ぐらい平気だ。それより聞きたいことがあんだよ。」


(一杯なら平気って…まぁ本人が言ってるならいいか。)


「なんですか?」


「あんたまだ学生だった時に一度兵士として戦争に参加したろ?その戦争の時一人で百人ほどの敵分隊を壊滅させたって話は本当か?」


普通は軍事学校の生徒には招集はかけられることはないが、その時力を見込まれた俺は特例で兵士として招集された。


「えぇ本当ですよ。でも正面からではなく奇襲を仕掛けて奇跡的に成功したってだけです。」


(そういえばその戦争の時に初めてイガリオ総司令官と会ったな。)


「謙遜しなくていい。奇跡で百人の部隊なんか壊滅させることなんてできねぇよ。紛れもなくお前の実力で壊滅させたんだ。」


そこにおばちゃんがノルバトが頼んだ料理を持ってきた。


「おっとすまねぇな。食べる前に話聞いちまって。」


「大丈夫ですよ。熱いの苦手なので少し冷まして食べようと思ってたので。」


「そうか?それならよかった。」


 そして二人は運ばれてきた料理を食べ始めた。


(うん。美味しい。)


二人とも料理を食べ終えた時、俺は気になっていたことをノルバトに聞いた。


「あの、俺ずっと気になっていたことがあって、レイナ将校って昔からあんな怖い感じでしたか?兵士として招集された時にレイナ将校のことを見かけた時はあんなに怖い感じはしなかったような気がするんですよ。」


「レイナ将校か。あまり話したことないからよく分からないんだよな。でも俺も昔とは雰囲気が違くなったような気はする。」


「やっぱりそう感じますか。」


「あぁ。そういえば噂なんだがレイナ将校の雰囲気が変わったのは一年程前の『剣聖』の称号を与えるかどうかを話し合う"剣聖審議会"の時ぐらいからという話があるな。」


"剣聖審議会"は一年に一度開かれている。俺は一か月前の"剣聖審議会"で称号を与えられることが決まった。


「そんな噂があるんですね。もしかしたらそれが関係しているのかな。」


「まぁあくまで噂だ。そんなに鵜呑みにするなよ。気になるんなら本人に直接聞けばいい。」


「直接は聞きづらいですよ…」


「ハッハッハ。ならそんなに気にすることはねぇ。今は任務に集中することだ。」


そう言ってノルバトは立ち上がり


「それじゃ俺もうすぐ見張り役だから行くわ。いい時間を過ごせたぜ。おばちゃん、お会計を。」


「えぇと、魚の塩焼きが800ルピ、ビールが400ルピで全部で1200ルピだね。」


「はいよ。美味かったぜ。」


と会計を済ませて食堂から去っていった。


("剣聖審議会"か…気になるけど、ノルバトさんに言われた通り今は任務に集中しないとな。)


気持ちを切り替え、俺もお金を払い、食堂を後にした。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ