第三話 新たな生活
兵舎へ着くと今日から住むことになる部屋を見つけ、荷物を部屋に置いた。基本新人兵士は一部屋に3人で住むことになっている。部屋には自分以外誰もいなかった。
(俺が一番乗りか。)
この後に新人兵士のための集会があるが、それまでまだ時間があった。
(暇だな。そこら辺でも散歩するか。)
部屋を出ようとした時、ちょうどドアが開き、茶髪の男が入ってきた。
「ん?あ、君が今日から一緒の部屋の人?よろしくね!俺の名前は…その前に荷物置くね。」
そう言うと男は部屋の端のほうに荷物を置いた。
「改めてよろしく!俺はリゼルっていうんだ。君顔見たことないけど、エレメス軍事学校じゃなくてハースト軍事学校のほうの出身?」
ウェルズヒア王国ではハースト軍事学校とエレメス軍事学校の二つが兵士志願者が通う学校になっている。
「あぁそうだよ。俺はアストっていうんだ。これからよろしくね。」
名前を言った瞬間リゼルは明らかに驚愕した表情になった。
「え!?アストって軍事学校でぶっちぎりの成績を残し続けて『剣聖』の称号も与えられたっていうあのアスト!?」
もうこういう反応には慣れてしまっていた。
「そのアストだよ。」
「マジかよ…噂では何回も耳にしてたけど、いざ目の前にその噂の人がいるってなんか変な感じだなぁ。思ったより体ゴツくないし。」
「ハハッ。筋肉がありすぎると逆に動きが鈍くなっちゃうよ。」
「そ、それもそうか。いやぁそれにしてもこんなすごい人と一緒の部屋なんてなんか緊張するなぁ。」
そこでまたドアが開き、金髪で肩より少し短いぐらいの長さの男が入ってきた。
「お?後一人のルームメイトが来たか!って髪長!
一瞬女かと思ったぞ!?」
俺も入ってきた人を見てみた。見覚えがある顔だった。
「君ってもしかしてフィル君?同じ学校だったよね?」
「え!?ア、アスト君!?もしかしてルームメイトってそこの茶髪とアスト君なの!?」
「おい!そこの茶髪とは失礼だろ!俺はリゼルだ!ちゃんと覚えろよ。」
「ん?あぁごめんなさい。ちょっと取り乱しちゃって。フィルです。これからよろしくねリゼル君。」
「まぁ取り乱すのも無理ねぇか。」
「そんなに身構えないでよ。俺だって君達と同じ新人兵士の身分なんだからさ。気楽にいこう。」
「そ、それもそうだな。よし!アスト、フィル今日から一緒に頑張っていこうな!」
自己紹介を終え、時間を確認すると集会の時間が迫っていた。
「そろそろ集会の時間だから行こうか。」
「ん?もうそんな時間か。広場だったよな集会場所。」
「うん。そのはずだよ。遅れる前に早く行ったほうがいいね。よし、アスト君、リゼル君早速行こう。」
三人が広場に着く頃には、もうすでに大勢の新人兵士の人達が集まっていた。集会時間になると、広場に設置された壇上にイガリオ総司令官が立った。辺りは一気に静まり返った。
「どうも、私はイガリオ総司令官です。まずは危険な役職である兵士に志願してくれたこの場にいる約二千人に敬意と感謝を申し上げる。諸君らは当然知っていると思うが、この国は内陸国ということで隣接している国が六つもある。」
一瞬周りを見るとみんなイガリオ総司令官の話を真剣に聞いていた。
「このような状況の中で我が国は領土が小さく、軍事力は他国に比べて少ないのが現状であり、当然我が国の領土を他国は狙っている。これまでも数多く戦争を仕掛けられてきたが、隣接している国で唯一同盟を結んでいるアルメシア王国の助けもあり、なんとか耐えてきた。」
(確か昔アルメシア王国の王子とこの国の王女が婚姻して同盟関係が結ばれたんだよな。)
「しかし、最近になり、我が国を狙いコルズ皇国とセントラン王国が同盟を結び、非常に危険な状況になっている。このような状況を打破するには諸君らの力が必要不可欠だ。諸君らが活躍してくれることを願い話を終わる。」
話し合えたイガリオ総司令官は足早に広場を後にした。集会が終わり、集まった人達は続々と部屋に戻っていき、三人も部屋に戻った。
話をまとめるのが難しい…