第十八話 戦いの代償
敵将マルカを討ち取った後、俺はチャクの元へ向かっていた。さっきまでは目の前の敵だけに意識を集中していて気づかなかったが、周りには敵の死体だけでなく味方の死体もかなりあった。
(作戦のためとはいえ、これだけの味方を俺は見放した。…やっぱりツライな…。)
心の中が罪悪感でいっぱいになった。
少ししてチャクの姿が見えてきた。
「お、アスト君!戻ってきたか!」
「遅くなり申し訳ありませんチャク大隊長。」
「遅くなんかないさ。しっかり作戦を成功させてくれて本当、ありがとう。」
チャクは生き残った兵士に集合をかけた。集まったのは100人ほどだった。三分の一しか生き残れなかった、という現実を突きつけられた。
「全員集まったな。ではこれより砦に戻る。いいか、くれぐれも油断はするなよ。どこに敵がいるか分からないからな。」
砦に着いたのは出発してから3時間ほど経った頃だった。
「イガリオ総司令官、ただいま戻りました。」
「チャクか!…苦労かけたな。無事戻ってくれてとても嬉しいよ。」
これで全部隊が揃ったため、イガリオは各指揮官を集め、今回の被害状況や敵軍の状況を確認した。
「今回の戦いで我々の軍は1500人ほどが犠牲になったか…。」
イガリオが暗い声で言うと、
「1500人も犠牲になったと考えるより、犠牲者を1500人に留めたと考えたほうがいいと思います。」
とチャクがイガリオをフォローする。
「そうだな。あまり考えすぎるのも良くないよな。敵軍の損失は各々の話を聞くと3000人から4000人といったところか。こんなに奮闘してくれたこと、改めて感謝する。」
一人で休んでいると、後ろからイガリオが向かってきた。
「アスト君ちょっといいかな?」
「イガリオ総司令官、どうしたんですか?」
「感謝を言いに来たんだよ。今回の戦いの一番の功労者はアスト君だからね。」
「そうですか。ありがとうございます。でも自分が上手く作戦遂行できたのは味方の人達の支援があってこそでした。自分は今回の戦いで一番活躍したとは思ってません。」
「フフフッ。そうか。いや、立派なもんだね。アスト君は本当に18歳かい?俺が18歳の時なんていかに手柄を自分のものにするかしか考えてなかったのに。」
「18歳ですよ、本当に。ていうか、イガリオ総司令官って意外とずる賢いところあるんですね。」
「辺り前だろう。ずる賢くなきゃ総司令官は務まらねぇよ。ま、話はこれくらいにするか。ゆっくり休めよ。」
イガリオはそのまま元いた場所へ戻っていった。