第十六話 『剣聖』の実力
前線部隊が苦戦を強いられている頃、奇襲部隊は敵大将マルカの部隊を発見した。
「やっと見つけたぜ。皆、戦闘準備をしろ。いいか失敗は許されない。絶対に作戦を成功させるぞ。」
チャクが部隊の気を引き締める。
「アスト君、俺が話したこと覚えているな?」
「味方のことは気にせずに作戦の成功だけを考えろってことですよね。大丈夫です。もう覚悟はできてます。」
「頼もしいね。よし!皆、準備はいいか!これより作戦を実行する。行くぞ!」
一斉に敵部隊に突撃していく。敵が異変に気づき、陣から外の様子を伺い、奇襲部隊を視認する。
「なっ!?敵か!?おい!やばいぞ!敵が…」
いい終わる前に俺は敵の首を斬った。
「なんて速さだ…」
チャクはその一瞬の出来事に驚く。
「は、早くマルカ様に伝えろ!」
「殺される!」
敵も続々と奇襲部隊に気付き、すぐに混乱状態になった。俺は目の前の敵に神経を集中させる。
<静光飛水>
最小限の動きで、次々に敵を斬っていく。無駄が一切ない動きは美しさを感じさせるほどだった。
「あの剣術…まるで川の水みたいにしなやかな剣術だ。」
「見とれてる場合じゃねぇぞ!あいつを援護するんだ!」
味方も次々と敵部隊に雪崩れ込む。完全に攻め込まれたところの敵は戦意を喪失していた。
「マルカ様!敵襲です!」
「何!?どういうことだ!」
「ど、どこに潜んでいたのか…完全に隙をつかれました!早くここから逃げる準備を!」
「チッ!ちゃんと警戒していなかったのか馬鹿野郎!」
マルカと兵士は急いで逃げる準備をする。
(一体どれほどの兵力だ?そもそもどこに隠れてやがった!これもあのイガリオの作戦か?クソッ!)
準備が整い、急いでこの場から去ろうとした時、後ろで人が倒れる音がした。マルカは咄嗟に振り向き剣を抜く。その瞬間目の前に剣先が映る。
「ッッッ!!!」
間一髪マルカは剣で受け止める。
「誰だてめぇは!」
マルカの言葉に俺は一切耳を貸さず追撃する。
<幻雷燈霧>
超高速で弧を描くように斬りつけ、周りの敵は悲鳴を上げる間も無く絶命する。マルカは辛うじて攻撃を防いだ。
「思ったよりもやるな敵将マルカ。」
「ほ、本当になんなんだよお前!……!まさかお前が新しく誕生したっていう『剣聖』か!?」
「ご名答。」
俺は再びマルカに攻撃を仕掛ける。マルカはなんとか攻撃を受け止めるが、それも長くは続かず持っていた剣を弾き飛ばされる。
「クッ!なんて強さなんだよ…!」
「あなたも中々強かったですよ。」
「……フッ、俺を殺したところで代わりなんてまだまだいる。そして化け物じみた強さのやつもな。」
「俺よりも強いんですか、その人達は?」
「いずれ分かるさ。」
マルカは不気味にニヤつく。俺はそのままマルカの首を切り落とした。そして声高々に
「敵将マルカ、討ち取ったり!!!」
と叫ぶ。残りの敵は指揮する者がいなくなりバラバラに逃げ帰る。
チャクの元にマルカを討ち取ったと報告が入る。
「やってくれたか!狼煙をあげよ!作戦は成功したと知らせるんだ!」
狼煙が上がり、味方部隊に作戦が成功したことが伝えられた。