第十二話 作戦会議 2
「五つの部隊はそれぞれ千人で編成する。前線の真ん中の部隊はレイナ将校、お前が指揮をとってくれ。左の部隊はヤルマ将校、右の部隊はシリキ将校に指揮をお願いする。」
「了解!」
指名された三人が一斉に返事をする。
「後ろの二つの部隊にはそれぞれリクセン将校とガーク将校に指揮をお願いする。」
「了解しました」
「はい!」
「残りの兵士は私が率いる。砦で戦況を見つつ、前線の部隊の支援に回る。奇襲が成功するまでの間とにかく相手の猛攻を耐え、奇襲まで時間を稼ぐんだ。」
不安な顔をしていた人達もいつのまにかやる気に満ちた顔つきに変わっていた。
「そして今回の作戦で最も重要な奇襲部隊だが、この部隊はチャク大隊長、お前に任せる。」
「私ですか!?いや、指名してもらえたのはとても嬉しいのですが、私では力不足です!」
「チャク、お前はこれまでの戦で冷静な判断や状況分析で数々の部隊を救ってきた。その功績を見込んで今回、奇襲部隊を任せようと思ったんだ。力不足と言っているが、俺はお前より適任だと思ったやつはいない。」
「そこまで私のことを見込んでくれていたんですか…?」
「あぁ、お前の危機管理能力は素晴らしいものだ。だから力不足だなんて思うな。」
チャクは深呼吸をし、
「分かりました。お任せ下さい!」
と決意を固めた。
「ありがとう。そして勘付いていると思うが奇襲部隊にはアストお前も同行してもらう。今回の奇襲ではお前の力が必要不可欠だ。頼んだぞ。」
「はい!」
俺が返事をするとイガリオは少し笑みをこぼした。
「よし、では奇襲部隊についての具体的な説明をする。奇襲部隊は決戦の当日、日が昇り始める頃に砦を出発してもらう。当日になっていれば大体の敵大将の部隊の位置を特定できているからな。そして大将部隊を見つけたら敵大将の首だけを狙って奇襲を仕掛けてくれ。できるだけ短時間で終わらせるんだ。」
チャクは静かに頷いた。それを見てイガリオは
「よし、これで作戦会議を終了する。各自準備を進めてくれ。」
と解散させた。
作戦会議の終了後、チャクが俺に話しかけてきた。
「やぁ、君がアスト君なんだね。私はチャクだ。よろしくね。」
「よろしくお願いします、チャク大隊長。」
「さっきイガリオ総司令官も言ってたけど、今回は君が頼りだ。多分奇襲部隊と言ってもアスト君以外はアスト君の支援に回ることになると思う。だから、アスト君は周りのことは気にせずに敵大将まで突っ込んでいってくれ。」
「そんな、いざとなったら味方のことは見捨てろってことですか?」
「そうだ。助けを呼んでたとしても、味方がやられそうになってたとしても君は気にせず敵大将の首を取ることだけを考えてくれ。」
「自分にはそんなことできません…。」
「いいかい?もし味方を気にしてアスト君が死んでしまったら、間違いなくこの作戦は失敗する。イガリオ総司令官は口に出さなかったが、イガリオ総司令官はアスト君がいるからこの作戦に賭けたんだと私は思う。」
「……」
「戦場では一瞬の油断が命取りだということは分かっているはずだよ。時には非情にならなければいけない時もある。そこを分かってくれ。」
「…はい。そうですね、チャク大隊長のいう通りだと思いました。敵大将の首だけを考えるようにします。」
俺は自分に言い聞かせるように言った。
「辛いこと言ってごめんな。だけど、現実は甘くないんだ。そこは理解してくれ。」
「はい。」
会話が終わると二人とも準備に向かった。
翌日砦前にはすでに五つの部隊全ての陣形が整えられた。奇襲部隊として集められた人達はいずれも経験豊富なベテラン兵士ばかりだった。チャク大隊長は集まった兵士達に今回の作戦を話した。敵もエンリ城から出陣したという報告も寄せられ、いよいよ開戦の雰囲気が強くなってきていた。
少し体調悪い日が続いていました。体調には気をつけたいですね。