魔王の進軍
その男は誰よりも優しかった。
いわゆるファンタジーと呼ばれる世界。
「弱肉強食」その言葉通り、魔術もあればモンスターも存在する世界での男の在り方は異形だったーー
その男は 他人の思考を読み取り、気持ちに寄り添い共感し、他人か傷つくならと自己犠牲という名の欺瞞を繰り返す内に
「それが自分のするべきことなのだ」と思うようになった。
当然、そんな人間は気味が悪い。理解者も現れず、男はただ一人孤独を嘆いた。
それでも男は人間を嫌うことは出来なかった。
様々な人に歩み寄り、今度こそはと今までの行いを反省し『普通』であろうとした、『人間』であろうとした。
しかし、周りの人間は自然と離れていった。
初めて出来た異性の相手からは裏切られ、友だちには騙され、親には具体的でもない夢幻を言い聞かせられ、先生には責任を押し付けられた。
そうして男の心は壊れた。
その男はこの世全てがどうでも良くなった...
その男は人間を呪い、同時に滅ぼそうと誓った...
なぜ自分がこんな目に合わなければいけないのか...
なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ
っ!!!!!!!!!!
「この世界は滅びなければならない。俺がこの腐った世界に復讐を...」
こうして「主人公」は堕ちていく............。