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シルバーナイト!  作者: 三流
シルバーナイト&エレメントウェポン ウェルカム・トゥ・ザ・ラスト・キングダム 
44/55

チャプター2

 それはバフォメットと名付けられた鹿型の魔獣であった。


 異常な体躯、それを支える逞しく太い四肢、そしてこの魔獣の代名詞ともいえる歪にねじ曲がった大角。


 そんな巨体の新幹線さながらの突進。常人ならばよける間もなく跳ね飛ばされ、全身の骨を砕かれ即死することだろう。


 常人なら。


 バフォメットは目の前の人間を轢き殺せることを疑ってはいなかった。人間など脆いものだ。どうせ今度もそうなのだろう。もし彼が話せていたのならこう言っていたに違いない。


 絶対の自信と慢心が彼にはあった。そしてそれを実現できるに足る力が。


 しかし相手はただの人間ではなかった。目の前の人間は回避するどころかその突進を真正面から受け止めたのだ。


 すさまじい衝突音が響いた。バフォメットは驚愕に目を見開いた。


「バオッ!?」


 バフォメットは困惑の声を発した。人間などたやすく跳ね飛ばせるはずだった。今回もそうなると思っていた。そんな見下していた人間に突進をよけられるどころか受け止められるなど思いもしなかったからだ。


「はは、まさか止められるなんて思ってもみなかっただろ?その顔見りゃわかるぜ」


 シルバーナイトは驚愕して目を見開くバフォメットへ囁きかけた。そう語る彼の足元の地面は突進の威力を物語るように蜘蛛の巣状の罅が入っていた。


「そりゃそうだ。お前らからすれば人間なんて小突けば簡単に死ぬ弱い生き物だろうよ」


 シルバーナイトは淡々と語りながら角を掴んだ。彼が話している間にバフォメットは頭をがむしゃらに振って逃れようとするが、シルバーナイトは微動だにしない。


「舐めるな」


 シルバーナイトの目がギラリと光った。


 シルバーナイトはバフォメットの角を掴む力を強め、あろうことかバフォメットの巨体を腕一本で持ち上げ、ぐるぐると振り回して力任せに放り投げた。


「バオオオオオオ!?」


 4メートルを超える巨体が放物線を描いて飛んでいき、地響きを立てて落下した。


 苦しみに悶えるバフォメットにシルバーナイトはつかつかと歩み寄り、その頭部を踏み砕いた。


「よし」

『油断するな。まだ来るぞ』


 間髪入れずに木々をなぎ倒しながらバフォメットが彼目がけて突っ込んできた。その数5体。


「この前まで一匹倒すのにひーこら言ってたのに、まったくとんだインフレだよ」


 シルバーナイトは愚痴をこぼしながら愚直に突っ込んでくるバフォメットの突進をサイドステップでかわし、その無防備な胴体に右ストレートを叩き込んだ。


「おりゃ!」

「バフォッッ!?」


 打撃を受けたバフォメットの胴体は内部から爆散し臓物をあたり一面にまき散らしながら一撃で絶命した。


「バオオオオオオ!」


 背後からの突進を大きくジャンプして回避。そのままバフォメットの背に着地して、反応されるより前に首の後ろに手刀を叩き込みへし折った。


「「バオオオオオオ!」」


 仲間を殺された怒りで我を忘れた二匹のバフォメットはシルバーナイトを挟み込み、一体は角での薙ぎ払い攻撃、もう一体は上半身を大きく振り上げた両足での踏み付け攻撃を繰り出した。


「はっはっは」


 シルバーナイトは慌てることなくまず角での下段攻撃をジャンプして回避、次に両足での踏み付け攻撃を手から放出した銀弾で押し返した。


「バオオオオ!?」


 銀弾が命中し銀の爆炎にたじろぐバフォメットを横目に、もう一体のバフォメットが繰り出す素早い前蹴りを受け止め、無防備な胸へジャンプパンチを叩き込んだ。


 胸骨があっさりとひしゃげ、バフォメットの巨体は音を立てて崩れ落ちた。


 シルバーナイトはジャンプパンチの反動で宙を飛び、未だ銀弾のダメージから復帰できないでいるバフォメットの頭を踏み砕いた。


 最後に残ったバフォメットはあっという間に仲間を皆殺しにしたシルバーナイトに恐れをなして背を向けて逃げようとした。


 当然逃げられるはずもなく、着地と同時に放った銀弾に頭部を粉々に破壊された。頭部を失った体は一歩二歩と千鳥足のように歩いたが、やがて糸が切れた人形のように倒れた。


「ふぅ…」

『残念ながら一息つく間など与えてくれなさそうだ。君目掛けて向かってくる大量のエネルギー反応があるぞ』

「うん、だろうね」


 シルバーナイトはさも当然といったように鼻を鳴らした。


『2時の方向からくるぞ。接敵まであと5秒』

「あいあい」


 シルバーナイトが構えると同時に木々の陰から魔獣が飛び出してきた。


「こいつは!?」

「ギュアアアアア!」


 飛び掛かってきたのは体長2メートルほどの肉食恐竜、所謂ラプトル言われる種に似た魔獣が飛び出してきた。


 ラプトルは前足のナイフのように鋭い爪で切りかかってきた。


「また変なのが出てきた」


 ラプトルの急襲を慌てることなく叩き落し、こちらに牙をむいて威嚇するその顔面を叩き潰した。


「これじゃあまるでサーカスの見世物小屋みたいだ」


 ラプトルの死骸を眺めながらシルバーナイトはつぶやいた。


 そのつぶやきに反応するかのようにラプトルがわらわらと湧き出し、襲い掛かってきた。


 1匹2匹ではない、数えるのも億劫になるほどの数だった。


「これ確実に意図的にこっちに来てるよね、こいつら」

『うむ、どうやら連中片っ端魔獣をテイムしてこっちに送り込んできているようだ。それで君を殺せると思っているらしい』

「片っ端からか、まったく、迷惑な話だ」


 ラプトルの集団に銀弾を放ちながらそう返した。銀弾を受けたラプトル達は爆散し、血肉を周囲に四散させた。飛び散る仲間の残骸を気にも留めずにラプトル達は狂ったようにシルバーナイトへ向かってきた。


『ははっ違いない。その迷惑な輩の居場所も特定した。そちらへ向かってくれ』

「了解」


 シルバーナイトは淡々と向かってくるラプトルを殺しながら、傍迷惑な送り物をしてくる不届き者のもとへと向かうため移動を開始した。





------------------------------





「ジェシカぁ、あと何体!?」

『今いるのは14匹!さらにそっちに向かっていくエネルギー反応確認!数は20!』

「くそたれ!」


 シルバーナイトと別れてすぐ、エレメントウェポンは魔獣の群れの強襲を受けていた。


 はじめのうちは襲ってくるのはランペイジウルフだけだった。しかし途中からラプトルが混ざるようになり、今ではラプトルとランペイジウルフが同じ割合の混合部隊がひっきりなしに襲い掛かってくるようになった。


「なろーっ!」


 ラプトルの飛び掛かりをかわしながらすれ違いざまに雷剣で首を切り飛ばし、足首に噛みつこうとしてくるランペイジウルフを逆の手に持った炎剣で突き殺す。


 仲間の死骸を飛び越えやってきたランペイジウルフをその後ろから向かってくる集団に向けて蹴り飛ばし、ひるんだ集団にグレネードを投げた。


 エレメントウェポンは結果を見届けずに背後へ振り返り、飛び掛かってきたラプトルを切り飛ばした。


 その直後ずんっと腹に響く音がした。衝撃が走り多数のランペイジウルフとラプトルの血肉が四散した。


 グレネードの爆発で一気に数が減ったが、魔獣たちは仲間の死に一切かまうことなくわらわらとエレメントウェポン目掛け殺到した。


「うがああああ!!!多い!多いよ!」


 エレメントウェポンは襲い掛かって魔獣の多さに堪らず叫んだ。


 その叫びも虚しく、ランペイジウルフとラプトルの集団が合流を果たしてしまった。


「くそ!殺しきる前に合流されちまった!」

『来ちゃったのならしょうがないよ!とにかく落ち着いて一匹ずつやっつけるんだよ!』

「わーってるよ!」


 息つく暇もなく向かってくる魔獣たちと戦闘を開始するエレメントウェポン。


 そこで彼女は合流した魔獣の集団の中にラプトルランペイジウルフの他に新たな個体が混じっていることに気が付いた。


 それは成人男性の胸ほどの大きさの赤黒い毛皮のイノシシだった。それが煌々と輝く瞳でこちらを凝視していた。そんなのが5匹ほど混ざっていた。しかもジェシカは向かってくる魔獣は20と言っていたが目視で見る限り明らかに30以上はいるように見えた。


「のああああ!?で、でかいイノシシ!?ってかなんか多くねぇか!?」

『どうも向かってくる途中で他の群れと合流したみたい…』

「ふざけんな!」


 エレメントウェポンは怒りをあらわに叫んだ。


 その叫びに反応するようにイノシシは突進を繰り出した。助走なしにもかかわらず瞬く間にエレメントウェポンとの距離を詰めた。


「おおう!?」


 虚を突かれた彼女はしかし冷静にその突進をジャンプしてかわし、背中に炎剣を突き刺して焼き殺した。


 それを機に今まで周囲で様子見に徹していた魔獣がたちまち襲い掛かってきた。


 顔面を切り裂こうとする爪を弾き、左右から突っ込んでくるイノシシに両手の剣を投げ眉間を貫き殺し、一纏めになって突っ込んでくるランペイジウルフの集団に雷剣を投げて痺れさせ、その隙にグレネードを投げて爆殺した。


 それでも一向に数が減らないのは定期的にここへ魔獣が補充されているからにほかならない。誰かが確実に意図をもって魔獣たちを送り込んできている。


 一刻も早くそれを止めさせなければ先に力尽きるのはこちらの方だ。


「畜生!なめんじゃねぇ!」


 エレメントウェポンは叫び、両手の剣を投げ両手を自由にし、新たな剣を生成し始めた。


「ジェシカ!場所分かったか!?」

『今わかったとこ!』

「どこ!!?」

『4時の方向!距離200!』

「わかった!こいつら殲滅して一気に突っ込むぞ!」


 そう意気込む彼女の手には闇でできた剣が握られていた。禍々しいオーラを放つその剣にただならぬ気配を感じ取った魔獣たちは一斉に襲い掛かったが、間に合わなかった。


「必殺!」


 エレメントウェポンは闇剣を頭上高く掲げた。


「ダーク!ストーム!」


 そしてそれを思いっきり地面に突き刺した。瞬間膨大なエネルギーが放たれ、闇の嵐が魔獣の大軍を消し飛ばした。


 嵐が晴れると魔獣の姿はどこにもなくなっていた。一瞬だけその場に静寂が訪れた。しかしそれもつかの間。すぐに遠くから魔獣の足音と叫び声が聞こえ始めた。


『エレメントウェポン!敵がこっちに向かって来てるよ!それと魔獣を送ってくる元凶が異常に気付いたみたい!大きく移動されるよりも前に早く移動を!』

「フゥ…、おう」


 エレメントウェポンは通信に短く答え、一息ついてから風のように移動を始めた。


『それにしてもすごいね、闇剣だっけ?一気に魔獣の反応が消えちゃったよ』

「ああ、1ヶ月の修行で何とか安定して出さるようになった闇剣だけど、光もだけど、まだ大雑把にしか使えないな。魔力もすげー減るし」


 木の陰からぬっと出てきたラプトルの首を切り飛ばしながらエレメントウェポンは答えた。


『防具生成の力を引き出せるようにはなってきてるから、あとは武器生成、その中でも闇と光を安定して出せるようになることが今後の課題かな?』

「まあな。現状じゃここぞって時に一発ぶち込むのがやっとだ」

『でもなんかそれ必殺技って感じがしてイイネ!』

「お、分かる?」


 そうこうしているうちに目的の存在が見えてきた。


 目の前に3人の魔族兵が周囲の魔獣の頭の上に手を置いてテイムをしているのが確認できた。そのうちテイムをしている魔族兵の隣にいた魔族兵が彼女の存在に気づき、指をさして何事か喚いていた。


「うわあああああエレメントウェポンだぁ!!!た、隊長、まだなんですか!?」」

「ええいドクターは何をしているんだ!まだ届かないのか!!?」

「待て!待て!…良し!テイム完了だ!」


 隊長と呼ばれた魔族は焦りながらもテイムを成功させ、テイムしたばかりの魔獣に早速命令を施した。


「行けブロウクングリズリー!エレメントウェポンの息の根を止めるのだぁ!」

「ギュアアアアアアアア!!!」


 命じられた魔獣はその5メートル近い巨体を二本足で支え、4()()()()()()()()()()、3つの目を狂気に輝かせながら威嚇の咆哮を挙げた。


「な、なああああ!?」


 さすがのエレメントウェポンも絶句した。


 もう慣れたと思っていた。ランペイジウルフ。ラプトル。ワイバーン。どんなバリエーションの魔獣が出てきても今更驚きはしないと思っていた。しかし今までの魔獣は整いすぎていた。これほど冒涜的な存在を彼女は見たことがなかった。


『エレメントウェポンしっかりして!惚けてる場合じゃないよ!』

「ッ!」


 ジェシカの言葉ではっとなったエレメントウェポンは右手に雷剣、左手に氷剣を生成して握り、構えた。


「こ、こんな!こんなのっ!想定なんてできるかぁ!!!」

「ギュアアアアアアアア!!!」


 エレメントウェポンは叫び、跳んだ。魔獣もそれと同時に跳んだ。


 そして同じ頃、シルバーナイトも同種と、しかも3匹同時に戦いを開始していた。


騎士は狂気の瞳に怯むことなく、逆に相手を睨み返し、両手に銀の光を輝かせながら飛び掛かった。


「「おおおおおおおおお!!」」







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