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シルバーナイト!  作者: 三流
シルバーナイト アウェイクニング・オブ・ニュー・パワー
35/55

チャプター16

 ワイバーンから放たれた咆哮は空気をびりびりと震わせ、心の弱い者が聞いたらすぐさま恐怖に支配されて尻尾を巻いて逃げ出すほどの迫力があった。


 しかし対峙する二人はその咆哮に一切動じることなく真っ向から迎え撃った。


 エレメントウェポンは薙ぎ払われた尾をジャンプしてかわし、尻尾を踏み台にしてワイバーンの巨体を飛び越して反対側に着地した。


「うがああああ!」


 一方シルバーナイトは迫りくる尻尾を真正面から受け止め、そのまま尻尾を抱え込んだ。


「グラアアアアア!」

「ぐがあああああ!」


 心底不愉快だと言わんばかりにワイバーンはシルバーナイトを睨みつけ、振り払おうと尻尾に力を込めるがシルバーナイトも負けじと全身に力を籠めて抵抗する。


「どこ見てやがるこのノロマ!」

「グルア!?」


 エレメントウェポンはシルバーナイトにくぎ付けとなったワイバーンのがら空き背中に氷剣と雷剣をそれぞれ突き刺した。


「おるああああ!」


 不意に生じた痛みによって力が緩んだワイバーンの隙を見逃さず、シルバーナイトはワイバーンの巨体を振り回して壁にたたきつけた。


 壁にたたきつけられたワイバーンは血反吐を吐いて怒り狂い、シルバーナイトめがけて火炎を吐き出した。シルバーナイトは側転で火炎を回避しワイバーン向けて走り出した。


 寄ってくるシルバーナイトを近寄らせまいと再度火炎を吐こうとしたが、急にワイバーンはシルバーナイトの別方向へ顔をめぐらして炎を吐いた。


「ゲッ!?」


 ワイバーンの気がシルバーナイトに向いている隙に接近しようとしていたエレメントウェポンは放たれた火炎を危うく回避して距離をとった。


「隙ありだおらあああ!」

「グギャア!」


 火炎が放たれないと見るや一気にワイバーンとの距離をつぶしたシルバーナイトはその勢いのまま強烈な右ストレートを放った。その威力はワイバーンの巨体が一瞬浮き上がるほどの威力。


「いまだ畳みかけろ!」

「おおおおおおおお!」


 痛みに悶絶しているワイバーンにシルバーナイトは顔面に連打を、エレメントウェポンは胴体に様々な属性の剣を突き刺しまくった。


 エレメントウェポンはワイバーンから繰り出された足でのひっかき攻撃をかわし、そのまま胴体に飛び乗った。


「飛ばねぇのならこの翼はいらねぇよな!」

「ギャアア!」


 エレメントウェポンは右手で右翼をつかみ、左手に持った雷剣で掴んでいた翼を切り飛ばした。血しぶきをあげて身をもだえるワイバーンの背中に雷剣を突き刺してエレメントウェポンはその場から飛び離れた。


 シルバーナイトは時折放たれる噛み付き攻撃や火球を丁寧に回避しながらリズミカルにワイバーンの顔面を執拗に殴り飛ばしていた。


「ギャアアアアアア!」


 憤怒に我を忘れたワイバーンは翼を切り落としたエレメントウェポンを無視して目の前にいるシルバーナイトに狙いを定めて怒りの火炎を放った。


「やべっ!」


 近距離ゆえすぐには回避が間に合わなかったシルバーナイトは両腕をクロスさせて火炎を防ごうとした。


「任せろ!」


 しかしエレメントウェポンが彼の四方に氷剣を出現させて火炎を完全に防いで見せた。


「そんなこともできるのか!」


 シルバーナイトは炎を完全に防いで見せたエレメントウェポンに感嘆の声を上げた。


 まさかあの距離で放った渾身のブレスが防がれるとは思ってもみなかったワイバーンは驚愕のあまりブレスを放った姿勢のまま固まってしまった。シルバーナイトは大口を開けたまま固まっているワイバーンの口内に拳を突き込んだ。


「ガアッ!?」


 シルバーナイトは突っ込んだ拳を反射的に閉じられた顎から素早く引き抜いた。そのままシルバーナイトはワイバーンに背を向けた。


「グラアアアアア!」


 ワイバーンは無防備に背を向けたシルバーナイトの姿を好機と見てその背中にもう一度ブレスを浴びせようと口内に炎をためた。


 その瞬間ワイバーンの頭部が大爆発を引き起こし、血肉を四散させて壁に新たに血痕を増やした。頭部を失ったワイバーンはよろよろとふらついた後、地響きを立てて倒れ伏した。


「お、おいシルバーナイト!お前いったいなにしたんだ!?」

「ん?」


 出口に向けて歩を進めていたシルバーナイトに追いついたエレメントウェポンはワイバーンにいったい何をしたのか問いただした。


「ああ、これだよ」

「それは?」


 シルバーナイトはエレメントウェポンに向き直り、ゴルフボール大の球体を取り出し彼女の顔の前で振って見せた。


「ジェシカ特性のグレネードさ。威力は今見た通り」

「すげー!いいな~それ!」

『今度杏ちゃんにも持たせてあげるよ』

「やったね!今言ったこと忘れんなよジェシカ!」

『怪我は無し…いいぞ!扉前に魔族兵の反応だ!タイミングよく蹴破って驚かせてやれ!』

「「了解!」」


 二人はアルバートに返事を返し、そして同時に扉を蹴破った。





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「んお!?なんかすごい音がしたなぁ」

「またフィーア様が部屋に人間連れ込んでワイバーンに処刑させてるんだろ」

「ようやるぜ」

「また死体処理しなきゃなんねぇのか。こんな時に何でそんなことしてんだか」


 扉の前に待機していた魔族兵たちはぶつくさ言いながら部屋の鍵が開かれる時を待っていた。謎の爆発音が部屋の中から聞こえてしばらくしてガチャリと鍵が開かれる音を聞いた彼らは億劫そうに扉に近寄り、一番前の魔族兵がドアノブに手をかけた。


 その瞬間に扉が内側から蹴破られ、扉の前に立っていた魔族兵が扉とともに吹っ飛んだ。


「な、何だ!?」

「ワイバーンか!?」

「違うわいバーカ!」

「雑魚にゃあ理解できねえよ!」

「ぎゃあ!」


 蹴り飛ばした勢いのまま部屋の外に出た二人は瞬く間に魔族兵を殺し、一気に駆け出した。


「ぐえっ!」


 扉と一緒に吹っ飛んだ魔族兵にすれ違いざまに杏が炎剣を一閃、一切スピードを緩めることなく殺害した。


「手際いいもんだ!」

「そんなこと褒められてもうれしくない!」

『そのまままっすぐ行って右に曲がってまっすぐ進めば王の間だよ!』


 二人は言われたとおりに右へ曲がると目の前にアイフ王城で見たのと似たような意匠の大きな扉があるのが確認できた。


『そこが王の間だ!不意打ちは期待できん!突っ込め!』

「準備は!?」

「できてるよ!」


 シルバーナイトとエレメントウェポンは疾走の勢いを緩めることなく王の間の扉を蹴っ飛ばし、その勢いのまま中へと侵入した。


 王の間はやはり広く先ほどのワイバーンとの戦闘をしていた部屋と同等の広さがあった。内装は悪趣味極まりなく、部屋のあらゆるところで人骨でできたオブジェクトが飾ってあり、その薄暗い部屋も相まってさながら魔女の部屋を連想させた。


「まったく、これから忙しくなるって時にやってくるとは…、いや待てよ、むしろ向こうが陽動で君たちが本命なのか?」


 そしてその部屋の主であるフィーアは王座の上でふんぞり返ったまま侵入者である二人に目を向けた。


 まずエレメントウェポンを見て、それからその隣で油断なく構えているシルバーナイトを見て少々意外そうな顔で首を傾げた。


「おや?確か君はロサンカで灰になったものとばかりに思ったんだが、おかしいな?本気じゃなかったとはいえ確実に仕留めたものと思ったんだが…」

「お前の魔法が貧弱だっただけだ、迂闊だったな、そのせいでお前は死ぬ羽目になるのだから」

「フゥ~…、まあいいか」


 シルバーナイトの挑発に耳を貸さず、フィーアは気だるげに息を吐き、立ち上がった。


「シルバーナイトとエレメントウェポンがまさか繋がっているとはね。ま、所詮雑魚が群れただけのこと。手を組んで私と戦おうという魂胆だろうが、それがいかに無意味か死をもってわからせてやろう」


 獄炎は拳を握りこみ、油断ならぬ構えをとった。瞬間、空気をびりびりと振るわせるほどの闘気が放たれた。その威圧感は先ほどのワイバーンの比ではなく、冷や汗が湧き出、心臓が早鐘を打った。


 すさまじい威圧感にそれでもシルバーナイトは目を背けることなく真っ向から睨みつけた。初めて会ったときは手も足も出なかった。心すら折られたが、今は違う。心は新たに鍛えなおされ隣には心強い味方がいる。


「準備は?」


 シルバーナイトはエレメントウェポンに問いかけた。


「2年前からできてるよ!」


 エレメントウェポンとシルバーナイトは左右から同時にフィーアに向かって躍りかかった。








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