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シルバーナイト!  作者: 三流
シルバーナイト アウェイクニング・オブ・ニュー・パワー
33/55

チャプター14

 解散した後健斗はその日は何もしないで過ごして、次の日から準備を進めた。二日間の間健斗は杏と組み手をしたり、とりとめもないことを話し合ったりした。アルバートとジェシカはロドニー国内やアイフ王国から可能な限り情報を集めにかかった。


 二日間は短く、あっという間に作戦実施日になった。


「そういえば君ってステータスカードは持ってるの?」

「あん?」


 健斗はシルバーナイトを着込み、軽く体を動かしながら杏にふと思ったことを聞いた。


「ああ、あるよ。ほらこれさ」


 そういって杏はポケットからステータスカードを取り出し、健斗に向かって無造作にカードを放り投げた。カードを受け取った健斗は杏に向かって自分のカードを投げ渡した。杏が受け取ったのを確認してから改めて手元のカードに書かれている内容に目を通した。



 名:ホソナイ アンズ

 性別:女

 年齢15


 スキル

 魔法:全属性 魔法耐性 身体防御強化 防具生成 武器生成


 備考:元勇者 復讐者 エレメントウェポン 



「君15だったの!?」

「そうだけど、何だよ?悪いかよ」


 驚愕したように顔を見てくる健斗に杏は苛立ったように眉間にしわを寄せた。


「いやそうじゃなくてさ」

「じゃあなんだよ」

「君2年前にこっちに来たわけじゃない」

「そうだけど」

「つまり君がこっちに来たのは中一くらいの時でしょ」

「だから何なのさ。はっきり言えよ()()

「君の最終学歴中学校中退…」

「――――――」


 杏子は健斗に言われたことがしばらく理解できなかった。呆けたように口を開いたまま何秒か固まり、やっとこさ言葉を発したものの大したことは言えなかった。


「あんただって高校生中退じゃないか…」

「そうだけど…」

「…」

「…」

「「……」」


 二人は微妙な面持ちで顔を見合わせ、まったく同じことを思った。


「この話は止そう」

「そうだな…」

「何をやっているのだ君らは」


 固まって呆けている二人に向かってアルバートが呆れたように言った。


「いや、なんていうかこれは僕らにとってとても重要なことなんだ」

「そうそう。アルバートさんこれはとても重要なことなんだぜ」

「全く、気を張りすぎるのもだめだが気を抜きすぐるのもどうかと思うぞ」


 咎めるアルバートの言葉を聞き流し、健斗は転送魔方陣にかがみこんで作業しているジェシカに話しかけた。


「どう?そろそろ行けそう?」

「あと少しってとこかな?」


 作業の手を緩めることなくジェシカは健斗に顔を向けた。


「あ、あとねさっき王国側の通信を傍受してね、『本日の一二〇〇に勇者をロドニー付近に転送、王国への攻撃を開始する』だってさ~」


 王国の通信の口真似をしながら報告をするジェシカに健斗は頷きかけた。


「じゃ、僕らもそのくらいに王国に侵入するわけか」

「そういうことだ」


 アルバートはそう言って健斗の肩に手を置いた。


「この二日間で何とか王国内に楔を設置することができてな、君たちはそこから一気に幹部を目指してもらう」

「マジか!ちなみにどこらへんだい?国内ってったって結構広いからあんまり遠いと幹部につく前に気づかれちまうぜ?」

「それに関しちゃ心配むよー!何と転送場所は王城内なのです!」

「何と!」

「ほんとかよジェシカ」

「ほんとでございますよあんずちゃん」


 それから転送の準備ができるまで4人は各々のできることをした。そんなこんなで時間をつぶしているとジェシカからお呼びがかかり、健斗はすぐさま魔方陣の真ん中に立って待機した。そのすぐ後に杏が現れ同様に魔方陣の上に立った。


 二人が魔方陣の上に立ったと見るやすぐさまジェシカが魔方陣に手をついた。


「準備はいいか?」


 アルバートはジェシカの横に立ち二人に聞いた。


「僕はできてるぜ」

「あたしは」と杏はそこまで言いかけていったん言葉を切った。瞬間、彼女は光に包まれ、光が消えると服装が変わっていた。彼女は掌に精製した仮面を取り付けて「あたしも準備オーケーだ」と手を振った。


「そういや君と初めて会った時もそんな服着てたけど、そうかスキルで生成したものだったんだね」

「そ、スキル防具生成だ」

「防具生成なのに服ていうのはどうなんですかね?」

「デザインはある程度自由にできるんだよ」

「なぜ黒コートを…?」

「いいだろ別にどんな格好だって」

「( ̄∀ ̄ )」

「全属性魔法もあるけど、武器生成と併用してじゃないとあまりうまく使えないんだけよね」


 にやにやした笑みを浮かべる健斗を無視し二人に抜けて杏は話を続ける。


「ほらねおとーさん!やっぱり私が言ったとおり武器生成だったでしょ!」

「だがそれだと使いずらくないか?」

「慣れたもんさ」


 杏は肩をすくめた。それからいまだにやにやと笑っている健斗に頭突きを食らわせた。


「痛い!何するのさ!」

「うるせぇ」


 ギャアギャアと口論をする杏と健斗を見てアルバートは顔をほころばせた。


「ふふ、この二日間でずいぶん仲良くなったじゃないか」

「そりゃあまあね」


 茶化すように言うアルバートに健斗は頬を引っ張る杏を引きはがしながらそう返した。


「これなら心配いらなそうだ」

「どうだかね」

「不安かい?」

「結構」

「…そうか」

「ああ、誤解しないで。ロサンカのことはまだ割り切れてはいないし、幹部にボロクソにやられたショックは残ってるけど、前にも言った通り止まる気はないよ」

「…無理はするなよ。君だけじゃなくて杏も、魔族どもを倒すことは結構だが命あっての物種だからね。今度こそ無理とわかったら引くんだ。いいね?」

「わかってるさ。今度こそ判断を間違えるつもりはないよ」

「あたしだってまだやることがあるんだ。こんなとこで死ぬつもりなんてないし」

「おーい何時でもいけるぜぇ!」


 ジェシカは二人に抜けて頷きかけ、それからアルバートに顔を向けて指示を仰いだ


「よし!ではこれよりロドニー攻略戦を開始する!ジェシカ!」

「今のロドニーは幹部の庭も同然だよ!だから二人とも無茶はしないでね?約束だよ?もうロサンカの時みたいなのなんて御免だからね」

「当り前さ。俺たちを信じてくれ」

「あったばかりのあたしが言うのもなんだけど、約束する。絶対二人で帰ってくるぜ」


 ジェシカは二人のまっすぐな視線を受けて真剣な表情で頷いた。そして彼女は魔法陣を起動させるために魔力を注いだ。


 魔力を注ぎ込まれた魔法陣はすぐさま光り輝きだした。健斗は収納していた頭鎧を頭に装着した。


「行ってくる」


 健斗はアルバートとジェシカに追そう言った直後、健斗とジェシカは光に包まれて消え去った。






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