表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シルバーナイト!  作者: 三流
シルバーナイト アウェイクニング・オブ・ニュー・パワー
32/55

チャプター13 

 圧倒的な無力感。絶望的な力の差。


 シルバーナイトを与えられて強くなった気でいた。何だってできると思ってた。


 でもそんなことはなかった。突き付けられた現実の恐ろしさに眩暈がする。それでも止まることは許されない。彼らは死んでしまったのだから。


 真っ暗な空間の中で目を覚ますと、人の形をした銀色の光が健斗の顔を覗き込んでいた。おぼろげな銀の光を放ち、その輪郭は時折揺ら揺らと揺れ、まるで蝋燭の火のように淡く輝き、暗闇を照らしていった。


 おまえは誰だ?


 健斗からの質問に銀の光は答えない。


 ここはどこなんだ?


 やはり答えない。


 健斗はらちが明かないと思って光に背を向けようとして、銀の光に肩をつかまれて、向き直った。


 なんだよ?


 銀の光は健斗から顔をそらさず、ただ無言で両腕を広げた。


 瞬間、暗闇の世界は消え失せ、燃え盛る街のど真ん中に彼はいた。何が何だかわからずきょろきょろしていると、遠くから笑い声が聞こえた。その後に耳をつんざく爆音が鳴り響き、人々の悲鳴があちこちで上がり、バタバタと倒れて動かなくなる。


 健斗は倒れた人々を助けようとしたが、体が凍り付いたように動かなくなってしまった。ウンともスンと言わない体に呪いの言葉を吐き、何とか体を動かそうと悶えたが、最後の一人が倒れて動かなくなっても結局彼の体は動かなかった。


 何もできなかった悔しさと無力感に涙を流し、うつむいて身を震わせてすすり泣いた。気が付くと、元の真っ暗闇の空間に戻っていた。


 顔を上げて前を見ると、目の前で銀の光が淡い光で照らしながら彼を覗き込んでいた。


「俺は結局何もできなかった」


 銀の光が言った。


 その通りだ。


「この世界は綺麗事を言っているだけでは何も変えられないことに気が付いてしまった。ずっと目をそらしていた自分は大それたことをできるような力なんてないことを突き付けられてしまった」


 そうだ。


「忘れるな。俺はあの日何一つ成し遂げられなかったことを。大勢を見殺しにしたことを。誓え。どれだけ傷つこうとも進み続けると。屑どもを殺し続けることを」


 当然だ。


「忘れるな。私こそが罪人である」


 銀の光はそう言い放ち、爆発した。目も眩む閃光をまき散らし、あまりの光に目を瞑り、目を開けると見知った天井が見えた。


 目が覚めてしばらく放心していたが、自分が自室にいることは分かった。とりあえず立とうとして、自分の腹に何か重いものが覆いかぶさっていることに気が付いた。


 なんだろうと思い覆いかぶさっているものに目を凝らして確かめようとして、それがもぞもぞと動き、目が合った。


「あー…えっと」

「――――――――ッ!」


 呆けた顔でこちらを見る赤毛の女は健斗が声をかけようとするよりも早く立ち上がり、大声を出しながら部屋を出て行った。


「おとーさああああん!!()()()()()()()!起きた!健斗起きたよぉおおおおおお!」


 部屋の外に出て行ったジェシカはすぐにアルバートとジェシカと同じくらいかもう少し下くらいの少女を引き連れて戻ってきた。


「気分はどうだ?」


 アルバートはベットの横へと歩み寄って、健斗の顔をペタペタと触り、覗き込んだ。


「僕はどれくらい寝ていたんだい?」

「まるまる二日」

「そうか…そんなに」


 健斗はベッドに沈めていた体を起こし、ベットに腰掛ける形に体勢を変えた。そんな健斗にジェシカは水の入ったコップを手渡した。コップを受け取り、水を一気に飲み干した。カラカラだった喉が潤い、靄がかかった頭がクリアになっていく。


 コップをジェシカに渡し、健斗はジェシカとアルバートを見て、それから居心地が悪そうに立っている少女を見た。


「君は…」

「健斗、彼女は」

「いいよアルバートさん」と少女はアルバートを遮った。少女は健斗に顔を向け、なんて言おうかわからないとでもいうように口をもごもごと動かした。ジェシカとアルバートも黙った。健斗は少女の気のすむまで口を挟まなかった。


 そんな健斗を見て少女は観念したかのように溜息を吐き、ぶっきらぼうに自分の名を告げた。


「あたしは…あたしは細内杏(ほそないあんず)

「僕は上井健斗だ。よろしく」


 自己紹介を終えた杏はそれっきり口を閉じてしまった。


「彼女が倒れた君を助けてくれたんだ。君を送還する際に君も来てくれと頼んだら快く承諾してくれたよ」

「そうか…。君が助けてくれたんだね。どうもありがとう」


 健斗は杏に礼を告げると、杏はバツが悪そうに頬をかき、速足に部屋から出て行ってしまった。


「出てっちゃったねぇ~…」

「ねぇ健斗。体に異常はない?痛みは?」

「?そういえば」


 ジェシカに言われ、健斗はかけ布団をはいで服をまくり上げた。火傷の跡がいくらか残っているが怪我は完治していた。


「うん。痛みはないよ。特になんともなさそうだ。しいて言うなら寝すぎて体がだるいってくらいかな?」

「そう…」


 怪訝そうな顔をするジェシカに健斗は礼を告げた。


「ありがとう。僕が寝ている間に回復魔法かけてくれたんだね。おかげで怪我も完治だ」

「ちがうの」


 ジェシカはフルフルと頭を振って否定した。


「?違うって」

「私回復魔法かけてないの。2日前、健斗が杏ちゃんに抱えられて戻ってきたときにシルバーナイトを外して治療しようとしてたんだけど」

「もうその時にはほとんど傷が癒えていたんだ」

「だから私何もしてないんだ」

「ふぅ~ん…」


 自身の身に起きた不可思議な出来事にまるで関心がなさそうな様子の健斗に、二人は心配になって声をかけた。


「健斗大丈夫?なんか無理してない?」

「起きたばかりということはわかっているが、2日前のロサンカは君にとって大きな事件だったはずだ。大きなショックを受けただろう。私たちのことは気にするな。だから君が思っていることを教えてくれないか?」


 健斗はきょとんとして二人の顔を見ていた。少しばかり悩むように小首をかしげて、やや間をおいて口を開いた。


「うん。そうだね。ショックだったよ。でも、もうどうしようもないことさ。そんなことで悩んでいる時間があるなら、犠牲になった人たちの死を無駄にしないように動かなくちゃ」


 健斗は銀色の瞳で二人を見つめた。ギョッとした二人の反応に少し疑問を覚えたが、気にせず口を開いた時には瞳の色は元に戻っていた。


「本当に死んでしまった彼らのことを思うならばこそ、僕らにできることをしなくちゃならないんだ」

「…そうか」

「うん…ごめんね」

「君が謝ることないさ。私たちが急ぎすぎたのだから。謝るなら私たちのほうさ」

「あはは。あ、じゃあさ、もし僕に悪いって思ってるならさ、何か食べるもの無いかい?おなかすいたな」

「わかった!じゃあ今から何か作ってくるね!」

「寝起きなんだし無理しなくていいよ」

「なんの!」


 ジェシカはパタパタと小走りで部屋から出ていった。ベットの上の自分にまだ寝ていたほうがいいと言って出て行くアルバートの背中を見送ってから、健斗は両手で顔を覆い、深い溜息を吐いた。


 それから1時間ほど経過し、ジェシカに飯の用意ができたといわれるまでベットの上で横になっていた。


 ジェシカに手を引かれてダイニングルームへ移動する際ちらりと時計を見ると、11時を少し過ぎたところだった。ダイニングルームに入るとアルバートが席について飯をかっ食らっている最中だった。


「あ、ちょっとおとーさん!何もう食べてんのよう!健斗が来てからって言ったじゃない!」

「いやほら、健斗の目が覚めるまでろくすっぽ飲み食いしていなかったから腹が減ってしょうがなくってな。そんな時に目の前でうまそうに湯気が立つ飯を出されちゃあ食べるしかあるまい」


 アルバートは悪びれもせずに肩をすくめた。


「も~信じらんない!いくらおなかすいてたからって食べたらだめでしょ!」

「まあまあジェシカ。別にいいさ。正直変に気を使われるよりよっぽどいい」


 怒るジェシカをなだめながら健斗も席に着き、あらかじめよそってあったシチューを啜った。暖かいシチューは寝起きの体にじんわりと染み渡り、体の中にたまっていた疲れが凝りほぐされていくような気がした。


 ジェシカはアルバートを睨みつけながら自身も席について、ぷりぷり怒りながら飯を食らい始めた。


「あれ?そういえば彼女は?」


 ある程度腹が満たされて健斗は食事の席に杏の姿がないことに気が付き、ジェシカに疑問を投げかけた。


「あ~あんまおなか減ってないんだってさ」

「この2日間で彼女あまり食べてなくてな。もしかしたら警戒されているのかもしれん」

「そっか…」


 それっきり三人は黙りこくって黙々と自分の分の飯を食べた。ジェシカとアルバートは時折食事の手を休めて健斗に何か言おうとしたが、彼のことを考えたら話しかけないでそっとしておいてやったほうが良いのではないかという結論になりそのまま黙々と飯を食った。


 二人の心遣いに感謝しながら健斗は飯を食い終え、そのまままっすぐ訓練室へと足を運んだ。とにかく体を動かしたかったからだ。


 重力室に入り、重力を5倍にして力尽きるまでひたすら体を動かしまくった。汗が顎からしたたり落ちて足元に垂れ、次第に水たまりが形成されていった。


 ふらふらになって重力室から出て訓練室に戻って涼んでいると、訓練場の扉が開かれ杏が顔を出してきょろきょろと中を見回した。


「や、さっきぶり」

「うぇっ!」


 声をかけられた杏はぎょっとして健斗を見て反射的に顔を引っ込めようとしたが、思いとどまってすんでのところで体を止め、おずおずと中へ入ってきた。


「君も体動かしたくなったのかい?」

「違うよ。…あんたを探してたんだ」

「僕をかい?」


 すたすたと近寄ってきてやや離れた位置に腰を下ろした杏に、健斗は体を動かして向かい合うように姿勢を変えた。


「それで?話ってのは何だい」


 単刀直入に聞いていた健斗に杏はあーっとかうーっとか言うばかりでなかなか言葉を発しようとしなかった。健斗は彼女が何か言うまでずっと無言だった。辛抱強く何かを言うのを待ってくれている健斗の態度を見て、彼女もようやく話す決心がついたようで、深く深呼吸してからその重い口を開き始めた。


「アルバートさんから聞いた。あんた捨てられたんだってな」

「ありゃま。開口一番ずいぶん踏み込んだこと聞いてくるなぁ」

「で、どうなの?」

「うん。その通りだよ」


 健斗は特に否定せず肯定した。


「怒ってないのか?捨てられたんだぜ?」

「そりゃあ怒っちゃいるけど、今はそんなことにとらわれていられるような状況じゃないからね」


 実際その通りだし、何より口では怒っていると言ったが特に胸の内に怒りがわいてこないことに驚いた。正直誰から言われなければ思い出しもしなかっただろう。


 別段気にした様子もない健斗に何か思うことがあったのか、杏はぎゅっとこぶしを握りこんだ。平気かという健斗に手を振って、彼女はぽつりぽつりと語り始めた。


「…あたしはさ、こう見えて結構強いって思ってた。いや、思い込んでた」

「うん」

「魔族の大群だって支部長だって、最近よく見るようになった魔獣とだって傷一つ負わずに勝ててたんだ」

「うん」

「2年間、2年間だ。その間ずっと憎しみにとらわれたまま遮二無二殺して回ってたんだ。一度として負けずにな」


 次第に熱を帯びてくる彼女の口調の変化に、それでも健斗は深く追求せずに相槌を打った。


「途中何度か復讐なんてやめてどっかに逃げてしまえばいいなんて思ったこともあったけど、そういう時は最後に見た友達やあたしのことを心配してくれた姫様の顔がパって頭の中に弾けるんだ。そのたびに負けてたまるかってより怒りを強くして突き進んだ」

「そっか…、君は強いんだね」

「違う!あ、あたしは強くなんかない!強くなんてなかった!」


 そう言ったのを皮切りに彼女の口から2年間ずっと抑え続けてきた感情が堰を切ったように言葉があふれ出た。


「2年前のあの日も!2日前のあの日も!あたしは何もできなかった!燃え盛る街並みを前にただ茫然と立っていることしかできなかったっ!」

「それは違」

「違くなんかない!」


 彼女を語気を荒げて否定し、そのまま立ち上がった。思わず立ち上がって健斗をにらみつけるその顔は真っ赤に染まっており、目に涙がたまっていた。


「あ、あた、あたしに力が出てきたのはみんなが死んだ直後なんだ!その時もう二度とこんな風に人を死なせないって誓ったのに!誓ったのに…ッ!うああああああああ!」


 膝から崩れ落ちてぼろぼろと泣きじゃくる杏に健斗はどう声をかけてよいのかさっぱりわからなかった。彼女へ無責任な同情の言葉をかけるのなんて論外だし、自分のような薄っぺらい男が言う言葉など届きはしないだろうから。


 だから健斗は彼女が落ち着くまで背中をさすってやることにした。わんわん泣く女相手にこんなことしかできない自分の不甲斐なさに思わず唇を噛んだ。


 だがそれが功を奏したのか、次第に落ち着きを取り戻した彼女は目元をぐしぐしとぬぐい、消え入るような声で礼を言った。


「落ち着いたかい?」

「うん…」


 泣き止んだ杏は気恥ずかしそうに鼻をこすった。


「ごめん…なんか抑えられなくなっちまってさ」

「いいんだよ。こっちこそごめんよ。君の思いを考えもしないで適当なことを言ってしまって」

「やめてくれ。あたしがただ単に、その…ちょっと抑えが利かなくなったってだけだったんだから」

「抑えがねぇ」

「うん、いつか話すけど、国王に使い捨てにされたときにちょっとした人間不信になっちまってさ、それ以来人と関わり合うなんてなかったから、あんたらと話して気がゆるんじまったんだろうな」

「いいじゃない。僕らは、いや、あの二人はあんな国王なんかとは違う。だから信頼してあげてくれよ。そのほうが彼らも喜ぶ」

()()?」


 疑問の声を上げる杏に健斗は苦笑いを浮かべた。


「彼らだよ。僕のことはあまり信頼しないほうがいい」

「何でさ?」


 怪訝そうな杏の視線から目をそらし、健斗は溜息を吐いた。


「僕はね、現実を楽観視していたんだ。どうにかなるんじゃないか、きっとうまくいくだろうって。根拠なんて何もないのにも関わらず。なまじ、活動をしてから一回もこけてこなかったからそれも増長した原因なのかもね」


 自嘲気味にそうつぶやく健斗に彼女は口を挟まずに耳を傾けた。


「その結果がロサンカさ」

「何言ってんだよあんた。あんなの幹部が来た時点でどうしようもなかっただろ?言っちゃ悪いけど今のあんたじゃ結果は変わらなかったさ」

「否!絶対に何か変えられたはずだ!何か手はあったはずだ!俺だけ傷つくだけの結果にできたはずなんだ!無かったなんて言うのはあり得ない!アルの言うとおりに撤退を選択していればもう少しましな結果になったはずだ!俺は選択を間違えた!そのせいでたくさんの死ななくていい人たちが死んだ!結局俺は何もできなかった!」


 血を吐くような後悔の叫びだった。健斗は手で顔を覆い、深くうなだれた。まるで懺悔でもするかのように。


「俺は罪人だ。俺は愚か者だ。こうなることはわかっていたにもかかわらず目を背けていた奴は君のような良い人に信頼される価値は無い。だからさ…彼らだけでも」

「あんたはさ」


 健斗の言葉をさえぎって杏は口を開いた。


「あんたはさ、選択を間違えたって言ったけど、うん、たぶんそうなんだろうな」


 顔を上げてこちらを見つめてくる健斗に杏は続ける。


「でもね、あたしは見てたよ。棒立ちで何もできなかったあたしと違ってあんたは炎の中で倒れるまでずっと生きてる人たちを助けて回ってた。何もできなかった奴が罪人なら何もしてなかったあたしの方が罪人になるじゃん?」

「それは…」


 言いよどむ健斗に杏は微笑みかけた。


「なんかさ、あたし達ってなんか似てるな」

「俺たちが?」

「あたしもあんたも国に捨てられて、どん底まで落ちてそこから必死になって這い上がろうとしてる。ほら同じじゃない?」


 彼女にそう言われ少しだけそのことについて考えてみた。そうすると、うん、確かに似ているような気がしてきたぞ。


「はは…確かに」

「ふふ…」


 二人は静かに笑いあった。笑いながら、健斗は前にもこんな風に笑いあったことがあったことを思いだした。その時も女と一緒に笑いあったな。彼女は元気だろうか。


 杏とともに訓練室を出ようとして立ち上がったところで、訓練室に備え付けられてある小型の設置型ゴーレムから至急作業場に来るようにと連絡があった。


 二人はすぐさま部屋を出て作業場へと急いだ。作業場についた二人は作戦卓にいる二人に声をかけた。その時二人は健斗の顔が先ほどよりも幾分かよくなっていることに気が付いた。


「へいアル!どうしたんだ?なんかあったのか?」

「ああ、アイフ王国に潜ませてあるドローンから得た情報によると」

「これから二日後にロドニーに勇者一行が殴り込みをかけるんだってさ!」


 杏の表情も和らいでいることから、きっと二人で話し合ったのだろう。これは何も言わないほうがよさそうだと判断した二人はそれゆえ特にそのことに言及しないで話を進めることにした。


「ぬっ!マジで!?」

「おいおいおい勇者連中ったってまだ1年訓練したくらいで実践になれたばかりの奴らなんだろ!?大丈夫なのかよ!?」

「王国としては、というよりあの国王はだな。幹部を倒せれば良し。最悪被害だけ与えられれば生きていなくてもいいんだろうな。まあ使い捨てだろう。死んだところで再召喚すればいいだけなのだからな」


 アルバートの考えを聞いた杏は激しい怒りを隠しもしないで怒鳴った。


「あの糞王またそうやって何の関係もないやつを無駄死にさせるのか!畜生!あたしたちはそんなことをさせるために犠牲になったんじゃない!」

「まあまあ落ち着き給えよあんずちゃん」

「これが落ち着けるか!」


 なだめようとするジェシカをはねのけて国王へ呪いの言葉を吐きまくる杏に、アルバートは真剣な表情で語りかけた。


「私としても君たちの同胞をみすみす殺させるつもりはない。だから私たちもその作戦に便乗しようと思う」

「というと?」

「勇者一行はアイフ王国に正面から突入するようだ」

「うわ!そんなの死んで来いって言っているもんじゃないか!」

「で、私たちは彼らが暴れまわっている間に国内に侵入。最短距離で一気に幹部に強襲を仕掛ける。そうすれば勇者たちのところに幹部が行くこともない。何より勇者を撃つのに手いっぱいでこちらに邪魔が入ることはないわけだ」

「どの道僕らに取れる手段なんてそれくらいしかなさそうだしね」

「上等だぜ。一人ならともかく二人掛りでなら何とかなるかもしれないしな」

「決まりだな。では各自準備を整えよう。作戦開始は二日後だ」


 アルバートがそう宣言してその場は解散となった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ