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シルバーナイト!  作者: 三流
シルバーナイト アウェイクニング・オブ・ニュー・パワー
23/55

チャプター4

「じゃ、行ってくるね」

「うむ。気をつけてな」


 健斗はシルバーナイトを着込み、魔法陣の真ん中に立って二人に向かって言った。


「最近魔族たちは魔獣を実戦に取り入れてきてるから、注意してよね!私たちもできる限りのサポートはするから!」


 健斗はジェシカに頷いて答え、光の中へ消えた。アルバートとジェシカは健斗が転送されたことを確かめると、各々の持ち場に着いた。


 光が晴れ、きちんと転送されたことを認識した瞬間には健斗は走りだしていた。前方から自分の匂いを嗅ぎつけた怪オオカミがやってくると通信で教えられるよりも早く察知した健斗は、通信で教えられた時にはもう先陣の怪オオカミの鼻っ柱を殴りつけて殺していた。


≪健斗!早々で悪いがそちらに魔物が≫

「もう()ってるよ!」


 健斗は通信に向かって怒鳴り、襲い来る魔獣を迎え撃つために口を閉じた。そして彼はとびかかる隙を探るように自分を中心に円を描くように取り囲んでいる怪オオカミに近寄らせないように牽制のジャブを出し、全方位に気を配った。


 怪オオカミは威嚇するように吠え、後ろ脚を蹴ったりしているが一向に襲い掛かる気配がなかった。いつもなら仲間を殺された怒りに闇雲にとびかかってきたはずなのに。


 何かがおかしかった。そして健斗は怪オオカミが放つ気に、何か変なものが混じっていることに気が付いた。


 獣特有の純粋な怒りや殺意に加え、そこに知的生命体特有の薄気味悪い悪意のようなものが混じっていたのだ。なぜかわからないが健斗にはそのことがはっきりと分かった。


「なあアル?」

≪健斗どうした?≫


 健斗は通信を開きアルバートに助言を求めた。


「この魔物。なんかおかしい。なんか変だ」

≪変?レーダーからの反応は普段の魔獣の反応と変わらないが?≫

≪あ!待ったお父さん!反応は魔獣だけど、エネルギー反応が普段より高い!≫

≪ぬ?≫

≪つまり強化されてるってこと!≫

「強化…、そうだこの感じ!スキルだ!こいつらスキルでエンハンスメントされてる!」

≪なんだと!≫


 アルバートが驚愕の声を漏らしたのと怪オオカミの一頭がしびれを切らしてとびかかってきたのはほとんど同時だった。


「ガウ!」


 背後からとびかかってきた怪オオカミを回し蹴りで打ち倒し、足首にかみついてきた怪オオカミを引きはがし、別の個体に向けてグレネードと一緒にぶん投げる。


「「「ギャウッ!」」」


 グレネードは爆発し3頭の怪オオカミが爆発四散して絶命して、周囲に焦げた肉片を散らした。


「グラアアアア!」


 残った一頭が押し倒して噛み千切るために繰り出してきた突進をサマーソルトキックで迎撃する。蹴り飛ばされた怪オオカミは頭と体を分離させて宙を飛び、ドサッという音を立てて落下した。


≪終わったな≫

「違う。今のは斥候だ。レーダー見てみてよ。多分こっちに近づいてくるエネルギー源があるはずだ」

≪確かに向かってきてるな。…ムムッ。魔族の反応に交じって魔獣の反応もあるな。でかいぞ!エネルギーだけなら支部長クラスだ!≫

≪あと10秒で接触!健斗構えて!≫


 言われるまでもなく健斗はすでに構えていた。構えた方向からダカカッダカカッと蹄が地を蹴る音が聞こえた。それに伴って木々が揺れ、バキバキと音を立てて折れた。


≪5…4…3…≫


 ジェシカが接触までの秒読みをするごとに地を蹴る音の大きさは上がり、振動が彼を揺らした。


≪1…0!≫


 その瞬間健斗の目の前に巨大な影が現れた。影は木々をなぎ倒しながら彼めがけて突っ込んできた。


「ぐあああああ!?」


 とっさに腕をクロスしてその突進をガードしたが、列車衝突のようなすさまじい破壊力に健斗は後方に弾き飛ばされてしまった。何とか両足に力を入れて減速することができたが、地面にはその威力を物語るようなブレーキ跡が付いていた。


「こ、こいつは!」


 反動から脱した健斗は改めて突進してきたものを見て、絶句した。


 それは4メートルはあるであろう巨躯の牡鹿だった。枯れ木を思わせるようないびつな角。魔獣特有のどこかおかしな目つき。巨躯を支えるための四肢は太く、興奮のためかしきりに後ろ足を蹴っていた。あれに蹴られればシルバーナイトを着ていたとて大きなダメージを受けるであろう。


「でけぇ…!ヘラジカかよ!」


 健斗は衝撃によるズキズキとした腕の痛みを跳ね除けて、巨大シカに向けて油断なく構えた。


≪健斗!敵はそいつだけではない!後続が来るぞ!≫

「わかってる!」


 健斗がアルバートに向けて答えたその時、巨大シカの後方から無数のブラックバレットとブラックグレネイドが彼目掛けて飛来してきた。


 健斗は飛来したそれらを側転で回避。間髪入れずに4匹の怪オオカミが飛び出してきて彼を取り囲んだ。


「はははははは!どうだシルバーナイト!魔獣バフォメットの威力は!」


 勝ち誇るような声が聞こえそちらを向くと、バフォメットト呼ばれた巨大シカがなぎ倒してできた道から魔族兵隊長と彼を守るように囲む魔族が姿を現した。


「んふふ。その様子ではしかと味わったらしいな。えぇ?」


魔族兵隊長は健斗を見て嘲笑った。それに倣って部下の魔族兵たちもゲラゲラと笑った。   


「貴様。お前ごときがどうやってこんなバケモノを従えたんだ?お前ごときが従えられるような存在ではないと思うんだがなぁ」

「な、何を!」


 健斗の挑発にあっさりと引っかかった魔族兵隊長とその部下は、勝ち誇るように笑っていた顔を真っ赤にして怒り心頭でまくしたてるように言った。


「私はスキルテイムを持っている!そのスキルを使って魔獣を従えているのだ!」

≪テイムだと!?そうかテイムか!盲点だった!≫

≪まさかここでテイムが出てくるとはねぇ…≫


 アルバートは驚愕し、ジェシカは呻くようにつぶやいた。


 テイムとは動物を従え、従えた動物を強化することができるスキルである。これをうまく使えば無数の動物をけしかけて相当な被害を出すことができる。


 ではなぜアルバートとジェシカは驚いたような反応をしたのであろうか?


 その理由はテイムというスキルがそれほど強いスキルではないからである。たしかに動物を従え強化することができるが、そもそも人によって従えられる数は異なるし、従える数を増やすにしても強化するにしてもかなりの鍛錬を要するのだ。そのうえ既存の動物では強化したところで大した戦力にはならず、いいとこ移動用の馬にでもかけるのが関の山だった。


 もしも本当に破壊力を求めるならば、それこそ竜種やその竜種を人でも扱えるように品種改良した劣化竜(ワイバーン)などの高い戦闘力を持つ生物を従えるしかない。ワイバーンを従えて戦力にしている国はあったが、そういう国では国内でワイバーンを生産してあらかじめ人に慣れたワイバーンを持っているので、そもそもテイムする必要すらないのである。


 しかもなぜだかわからないがテイムのスキルを持つ人は他のスキルが発現しにくく、それを含めてテイムというスキルは煙たがれてきたのだ。今日この日までは。


「今までテイムを持っているからといって馬鹿にされてきたが!動物だけでなく魔獣も従えることができる今は違う!私はこの力を使って支部長に!否!幹部にまで上り詰めてやろう!」


「そのためにシルバーナイト!」


 魔族兵隊長は健斗に指をさした。


「そのために!お前!私の手柄になるがいい!お前たち!さあ行け!シルバーナイトを打ち倒すのだぁ!」


 魔族兵隊長は指を鳴らした。主の合図に(しもべ)たちは咆哮を上げて一直線に駆け出した。主の敵を打ち倒すために。バフォメットは前足を上げていななき、眼前の敵をにらんだ。


 戦いが始まった。


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