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シルバーナイト!  作者: 三流
シルバーナイト ビギンズ
16/55

チャプター15

「ムフフフーン。勇者共も順調に育ってきておるな」

「そのようでございますなぁ」


 ここはアイフ王国王城の王の間。そこで王は玉座にどっかりと腰を下ろして部下からの報告を聞き、満足そうに口ひげをいじりながらつぶやいた。


「そろそろ実践に勇者どもを導入してもよいのではないか?ん?どうだ騎士団長。お前から見てヒカリオサムとタキザワアユはもう使えそうか?」

「そうですね。今回召喚された勇者様は、特にオサム様とアユ様は2年前に召喚された勇者と比べても遜色ない、いやそれ以上の逸材でございます。この一年でその力はさらに高まっており、魔族との戦いに出しても十分と考えております」

「ムフフフーン。それは良いことだ。ちなみにイヌスケとマルオの二人はどうだ?余はあの二人になかなかの素質を感じておるゆえ。どうだ?お主から見てあの二人はこの一年間でどれほど成長したと思う?」


 部座と加間のことを聞かれた騎士団長は一瞬顔をしかめ、その場で唾を吐き捨てたい衝動にかられた。騎士団長はその衝動をぐっとこらえ、先ほどの光と滝沢のことを誇らしく語る顔を無表情に一変させ、淡々と二人の具合を告げた。


「さすがは王様お目が高いですな。あの二人には暴力の才能が有ります。特に勇者カマ殿は素晴らしい。あれほど暴力を行うことに躊躇いが無い者は初めて見ました。あれなら実戦でも相手を殺すことに躊躇いも躊躇も欠片も無いことでしょう。それが何を意味するかも決して考えることは無さそうです。その腰ぎんちゃくのブザ様の負け犬根性も称賛に値します。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あのお二方はすぐにでも使えそうです」

「ムフフフーン。そうであろうそうであろう。お主からそこまで称賛されるとは。やはり余の目に狂いは無かった」


 騎士団長から加間と部座の二人の報告を聞いた王は上機嫌に笑った。騎士団長は対照的にまったくの無表情だ。


「では手始めにこの王都から一番近い占領されている町であるカカの町へ行かせて支部長と戦わせてみろ。十分に育っているならば支部長クラスに苦戦するわけがないであろうからな」

「了解しました」

「ンム。ではこれからの方針はカカの町解放ののち周辺の村々の解放といったものでよいな」

「そうですね。それでいいでしょう。さすがにいきなり幹部は厳しいでしょうし」

「名案が浮かんだら急いで実行だ騎士団。早速勇者たちにこのことを伝え」


 王の言葉は扉が勢いよく開けられた音でかき消された。


「王様!王様!ご報告したいことがございます!」

「なんだ貴様は。今余は重要なことをだな」

「お前ビーンのとこのダッツだな?ここはお前のような下っ端が軽々と入っていいところではない。それになんだお前。大声で喚き散らして。ヘンリー!モント!ここの入り口を守るのがお前らの役割だろ!なぜ通した」


 王の間に飛び込んできたダッツと呼ばれた兵士の後から入ってきた二人の重騎士に向けて騎士団長はそう問いかけた。


「団長俺たち止めたんですぜ」

「でもこいつまるで死んででも中に入ってやるって感じだったんで仕方なく」

「何だと?どういうことだ」


 弁解するように語る二人に重騎士に、騎士団長はいぶかしげな視線を飛び込んできた騎士へと向けた。


「ムフフフーン。騎士団長よ。その者が入ってきた理由を聞いてみろ。余はなんだか気になってきたぞ。自分の身の程を知っている下っ端騎士が、息急き切って王の前まで来るほどのことだ。何かあったのかもしれん。自分の身分を無視してまでここへ入ってきた理由が」

「は、は!ご命令とあらば。おいお前!いったい何を報告したいんだ?答えろ!」

「は、はい!」


 ガチガチに緊張した兵士は息を整えてから、興奮した口調で話し始めた。


「ご、ご報告します!カカの町が魔族兵から解放されました!」

「何だと?」

「バカな!」


 兵士からなされた報告に、王も騎士団長も驚きを隠せずつい声をあげてしまった。


「バカな!あそこには村と違って支部長がいるんだぞ!我々ではどうあがいても勝てないような存在がいる町をどこの誰が解放したっていうんだ!でたらめを言うな!」

「でたらめではありません!」

「ぬ?!」


 でたらめと言われた兵士は語気を荒げて言い返した。まさかこんなに強く言い返されるとは思ってもいなかった騎士団長は一瞬ひるんでしまった。


「でたらめではありません!あいつが!カカの町に派遣されてもう3年くらい音沙汰がなかった友が!ここに来て!言っていたんですよ!魔族兵が支配している町から逃げ出せることはできません!ここへ来たということは魔族からの解放を意味します!」

「た、確かにそうだが」


 すさまじい剣幕でそう断言する兵士に思わず騎士団長もたじたじになってしまった。


「ムフフフーン。解放されたことは喜ばしいことだ。ウム。して兵士よ。いったいどこの誰が支部長含め何十人も魔族がいる町を解放したのだ?余はそこが気になるのだが?もしや野良の転移者か?ならば王国に勧誘したいのだが」


 王に問われた兵士は何とか息を整えようと深呼吸をして、顔を興奮で真っ赤に染め上げながらカカの町を解放した者のことを告げた。


「町を解放したものは、友が、ここに直接報告してきた兵士が言うにはナイトが!()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「何!」

「ナイトだと!」


 王と騎士団長はどよめいた。まさか転移者などではなくまったく名を聞かなくなったナイトの名が出てきたためである。


「バカなことを言うな!ナイトは死んだ!でなければ何故今まで音沙汰がなかったのだ?貴様、まさか余をバカにしているのではあるまいな?」

「そうだ!たとえナイトだったとしてもかなりの高齢になるはずだ!そんな年齢のやつが今更そんなことできるはずがない!」

「いいえ!報告によればナイトはたった一人で魔族兵を殺しまわり、一騎打ちで支部長を殺害したといます!」

「嘘をつくな!どうせ仲間が何人かいたのだろう!」

「本当です!ナイトは一人だったと」

「ええい!もうよい!戯言は聞き飽きた!おい貴様ら!こやつをつまみ出せ!ナイトなどと嘯くこやつはしかる後きょっけ」

「ちょっと待ったあああああああああ!」

「今度は誰だ!」


 声のした方向へ目を向けると、ビリア王女が大股で鼻息荒く入ってくるのが見えた。


「び、ビリア?!なぜお主が」

「王女様!今は重要な話を」

「そんなことどうでもいいのよ!それよりあなた!」


 ビリア王女は王たちのことを無視し、兵士に向かって指をさした。


「お、俺ですか?」

「そうよ!あなたナイトって言ってたでしょ!マジ!?マジなの!マジもんのナイトなの?!」

「は、はい!カカの町から来た兵士が言うにはそうだと」

「おっしゃあああああああ!マジじゃん!うっそ!まさかナイトの活躍を!しかも今起こっている現在進行形!オーイエス!」


 王女は叫びながらガッツポーズを決めた。


「でもチャリオッツナイトか~。もし本物ならかなりの高齢よね」

「いいえ姫様。チャリオッツナイトではありません」

「えっ違うの」

「ほれみろ!やはり嘘ではないか」

「まったくお前は」


 チャリオッツナイトではないと聞くや否や王と騎士団長はそろって糾弾のまなざしを向けた。


「ですから新たなナイトと先ほど申しましたじゃないですか!」

「「「新たなナイト!?」」」


 三人は同時にそう言った。


「あ、新たなナイトって何!は、早く!早く教えて!」

「はい姫様!新たなナイトはシルバーナイトと名乗っていたそうです!」

「シルバーナイト!アーッ!」

「シルバーナイト?」

「シルバーナイトだと!」

「チャリオッツナイトではないのか?!」

「ともかくわたくしが申しあげたかったのは以上です!」


 兵士は興奮や困惑、猜疑にゆがむ三人へ向けてそう締めくくった。




 -------------------------




「アーッ!ナイトよナイト!しかも新しいやつ!あ‘‘あ‘‘あ‘‘あ‘‘!生きててよかった!」

「大げさだなぁビリアも」


 現在ビリアと滝沢は兵士の言っていたカカ町から来た兵士から話を聞くために往生の廊下を移動中であった。どうもその兵士はかなり弱っていたらしく、現在医務室で静養中であるという。


「大げさなもんですか!だってナイトよ!新しいナイト!もう私興奮を抑えきれませんわ!」

「ビリアがちょくちょく話してくれてた人だね。でもその人かなり高齢って言ってたけど」

「新しいナイトよ!その名もシルバーナイト!今からシルバーナイトを見たっていう人のところに行くって言ったじゃない」

「知らないよそんなの。ビリアってば急にきて行くわよって引っ張ってくんだもの。私あんまり興味ないんだけど」

「やっかまし~!とにかく行くの」


 と言いかけてたところで王女は口を閉じた。目の前で道をふさぐ二人組がいたからだ。


「何か御用ですか勇者カマ。勇者ブザ」


 加間と部座はにやにやと笑ながら二人に話しかけてきた。


「へへへ。ほらよく言うだろ王女様?すれ違ったらあいさつしなくちゃな!」

「そうそう!滝沢さん今日もきれいですねwwwwwww」

「うん…ありがと」


 滝沢とビリア王女は顔を見合わせうんざりしたような顔を隠しもしないで加間と部座を見た。加間はこの一年でもとから良かった体格がさらによくなっており、それにともない暴力性も増していた。部座も一年前より体格がよくなっていたが、彼は肉体よりも陰気さが増しており、不愉快さに磨きがかかっていた。



 名:カマ イヌスケ

 性別:男

 年齢18


 スキル

 魔法:闇・炎 魔法耐性 身体強化 身体防御強化 痛覚遮断 


 備考:勇者 暴力主義者 極悪非道 狂犬


 名:ブザ マルオ

 性別:男

 年齢18


 スキル

 魔法:雷 魔法耐性 幻術 身体強化 身体防御強化


 備考:勇者 媚び諂うもの ジレンマに陥り苦悩する幻影 幻惑の稲妻



 これが一年後の二人のステータスであり、それに伴い備考にもいろいろと追加されていた。備考には加間の人間性を表すようなことが書いてあり、そこから彼がいかにして一年を過ごしていたかがわかる。部座も備考に追加されており、特に目立つのがジレンマに陥りというものだ。そのジレンマが一体何を示すのかは本人にしかわからない。ある日を境に部座はステータスカードを他人に見せるのを極端に嫌うようになった。部座の加間への態度や周囲への対応に変化はないが、何かしら心的変化があったのは間違いないだろう。


「へはははは!じゃま!そうゆーことで!俺たちはこれから訓練があるからな!アユちゃんまたね~!」

「デュフフwwwwwww僕たちはこれにて!」


 そう言い残して二人は立ち去った。滝沢と王女は加間と部座の二人が見えなくなるまで眼をそらさなかった。


「ハァ~……マジ最悪。あの二人一年立てば変わるかと思ってたけど、どうやら私はとんだバカだったようね」

「…行こ。ここにいてもしかたないし」

「そうね…」


 二人は歩みを再開した。


「ビリアは一年たてば二人は変わるって言ってたけど、そんなこと言ったら私だってあまり変わってないよ」


 そう言って滝沢は自分のステータスカードを取り出し、手でかざして王女へ向けてプラプラと振って見せた。



 名:タキザワ アユ

 性別:女

 年齢18


 スキル

 魔法:全属性 魔法耐性 身体防御強化 魔術強化 身体強化 身体防御強化


 備考:勇者 訓練された魔術師 高い魔術の才能 オール・エレメント



「十分変わってるじゃない。何よオールエレメントとか高い魔術の才能とか。腹立つわ~」

「そんなこと言ったって知らないよ」


 そんなこんなと雑談しているうちに二人は目的の人物がいる医務室に到着した。


「これは姫様に勇者様。こんにちは」

「ええこんにちは先生」

「こんにちは」

「姫様も件の彼に御用がおありで?」

「ええそうよ」

「わかりますよその気持ち。私もチャリオッツナイトの話は大好きでしたからね。彼の話を聞きましたが、きっと姫様も勇者様も満足できると思いますよ」


 医師は人のよさそうな笑みを浮かべながら彼女たちの目的である兵士がいるベッドまでで案内した。


「お~いグッチ君。本日3度目の面会さ。意識はあるかな?」

「ああ先生、起きてるよ。もしかしてまたかい?」

「そういうことだ。姫様勇者様、こちらの彼がカカの町から来たグッチ君です」

「は?姫?勇者?」


 彼は医師から視線を外しその後ろで立っている滝沢と王女を見た。


「は?王女様?!勇者様?!」

「どうも兵士さん。ビリアよ」

「た、滝沢愛優です」

「どひゃ~!」


 グッチはまさか王女と勇者が自分の面会に来るなど夢にも思わなかったので、驚きのあまり大口を開けて驚いた。


「君が話すのを苦にしないならお二方に君の話を聞かせてあげたいのだが」

「えぇ…?話すのは大丈夫だけど、俺は話すのへたくそだから、そんなんでも大丈夫ですか姫様に勇者様」

「別に構わないわ。そんなことより早く!は、早く聞かせなさい!」

「ちょっとビリア!すみません兵士さん病み上がりなのに」


 滝沢はそう言って王女の非行をわびた。


「そんなあやまらないでください!俺の話で良ければ喜んでしますぜ」


 そういって兵士は今日4度目の深呼吸をして、4度目の話をし始めた。


「え~ゴホン!…俺はしがいない一般兵士です。今でこそ---------------------」


 彼は語り始めた。自分が見た新たなるナイトの活躍のことを。二人は彼が話すことに口を挟まずただ黙って耳を傾けた。彼の話を聞いているとき、滝沢の脳裏にある人物の姿が思い浮かんだ。彼女は苦笑いを浮かべてその姿をかき消した。


 いったいどうして彼のことが思い浮かんだのだろうか?興奮した口調で語る兵士とそれと同じくらい興奮した顔で相槌を打つビリアをぼんやりと眺めながら、()()()()()()()()()()へと思いをはせた。




 ----------------------------




「哨戒との連絡が途絶えた!やつが来たぞぉ!」


 村を占領していた魔族兵たちは獲物を構え、手の空いているものはいつでも闇属性魔法を撃てるように全身に魔力を張り巡らせた。


 しばらくすると彼らの眼前にこちらに走り寄ってくる者の姿が見えた。


「来たぞ!しる」


 こちらに走り寄ってくる者の名を叫ぼうとした魔族兵の男の頭が不意に消失した。倒れ伏す死体のすぐ横に地響きを立てて銀の騎士が降ってきた。


「シルバーナイトだあああああ!」


 シルバーナイトは動揺して叫んでいる魔族兵に躊躇なく殺戮を開始した。物の数分で10人いた魔族兵を殺害したシルバーナイトは、村の入り口に作られたバリケードを造作もなく破壊し悠々と村の中へと侵入した。


 村の中へと侵入したシルバーナイトは自分を囲み、その包囲をじりじりと狭めてくる魔族兵たちに鎧の中から憤怒の視線でにらみつけた。


「シルバーナイト!ここを貴様の墓場にしてくれる!」


 魔族兵隊長がシルバーナイトに向けて勢い込んだ。


「やってみろ!」


 シルバーナイトは、健斗は魔族兵隊長をにらみつけながら吠え、勢いよく飛び掛かった。


「おおおおおおおおおおお!」

「「「おおおおおおおおお!」」」


 これは始まりだ。銀の騎士が紡ぐ新たなるナイトの英雄譚。地に落ちた一人の男の織り成す再起の物語。





 シルバーナイト ビギンズ 

 終わり








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