ギャルゲームの攻略対象(♀)に転生した私(♂)はフラグイベントを叩き折る
初めまして、私は雨宮 翔子と言うものです。
唐突ですが私、転生者でして、加えてギャルゲームの攻略対象だったりします。
別に電波系ではありませんし、これを読んでいるということは、その辺りへの知識もあろうかと思います。
実のところ私、前世では男でした。
ええ、それはもう思春期真っ只中の男子高校生でした。
ですのでギャルゲームなんていうジャンルにも手を出しましたし、実際この世界の大本となっているゲームにはそこそこお世話になりました。
そのゲームの攻略対象、いわゆる美少女キャラである「雨宮 翔子」の立場は、簡単に言うと「ライバルキャラのお側付き」です。
このギャルゲームは、主人公の晴山 幸助くんが、叔父である学園長の薦めでお金持ちの名門校である「青空学園高等学校」に編入して、その学校に在籍している美少女たちとキャッキャウフフするというありきたり設定なのだが、面白いことにこのゲーム、ライバルキャラがいるのだ。
その名は「嵐野 総一郎」、まあいわゆる俺様系DQNである。
そんな横暴で悪辣極まりない彼は、これまたありきたりだが、世界的にもとても強い力を持っている旧家の御曹司なのだ。
そんな彼の家に、戦国時代から将軍と家臣という関係で支えてきたのが、我が雨宮家なのだ。
そこの一人娘である翔子は、暴君総一郎さまの言いなりで、ときには暴力さえふるわれるという不憫ちゃんなのだった。
そんな彼女に転生した「俺」が真っ先に考えたのが、主人公くんとのいちゃラブの件だった。
別にホモではないし期待しているわけではない。
逆である。
そう、このまま物語通りに暴君総一郎さまが育ってしまうと、主人公くんと翔子のルート確定イベントが発生してしまう可能性が!? と考えたのだ。
攻略対象雨宮 翔子のルート確定イベントは、「暴行がエスカレートし、翔子が無理矢理行為を迫れそうになった瞬間、主人公くんが助けに入る」というもの。
そんなわけで、幼き時分から私は動き出した。
だって、男とのボーイミーツボーイとか誰トクホモトクなのだ。
そんなのは見た目美少女でもごめんである。
そして始まった「総一郎さまを七三分け瓶底眼鏡にしよう大作戦」。
途中から作戦名に入っている七三分けと瓶底眼鏡は忘れ去られていたけれど、総一郎さまは作中とはうってちがって、ちょっと不遜な態度はあるもののまだツンデレで許容できる範囲まで更正できたのだ。
だがそれだけでは終わらなくて…………。
なんか他の攻略対象の子達に「お姉さまー!!」なんて感じで慕われるのは、嬉しいのでよしとしよう。
だが主人公くん、なぜ総一郎さまに怒鳴られて頬を染めている!?
なぜ総一郎さまを遠くからうっとりと見つめている!?
そして極めつけは。
「えと………雨宮さん、その、ぼっ僕、嵐野くんのことが………!」
私に言うなああァァァァァァッ!!!
そういう腐った展開はいらんのです。
そんな心身ともに疲れきった私は、なんと信愛する総一郎さまにトドメを刺されたのだった。
「翔子。俺、お前が好きだ」
ボーイミーツボーイを全力回避するはずが、こんなの聞いてないですよ!
ーーーーーそ、それに……… 総一郎さまの告白に、少しドキッとした自分が………
ってぇ、なにを言ってるんだ私はああああああーーーッ!!?