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「やっぱりお茶は甘くないと」
「それはもうお茶というより砂糖水よ」
喜色を顔いっぱいに湛え、甘い茶の香りを嗜むユディトにネヘミヤは秘かに嘆息を零した。
いつからこんな味覚になってしまったのだろう。
「でもトビトの淹れる茶が一番美味い」
「まあ、あなたの好みを一番把握しているのはトビトよね。私には、大量の砂糖とかミルクとかを平気で入れるあの神経が理解できないけど」
ユディト好みの茶を完璧に作ることができるのはトビトだけだ。頭のねじがいくつか外れているあの男が持つ数少ない特技の一つだと思われる。
「そういえばトビトは?」
普段は片時も離れることなく自分に張り付いている大男の姿が見えないことにユディトは気づいた。
「トビトなら、エステルさんの手伝いをしているわ」
エステルに取られたとでも思ったのだろうか。ユディトは複雑そうな顔をした後、恨めしそうに唸った。
「俺のティータイムを忘れるとは鳥頭め」